第10話 村田丸の本気!?


次のおもちゃ屋へ向かう途中、それぞれはどうにか売ってるかも知れない場所をしらみ潰しに探しました。

ネットや地図や雑誌を駆使しても、何処にも売っていません。

普通なら諦めてしまいます。

一平には人生がかかっている。

諦めるなんて口が裂けても出来ません。


「 先輩…… 全然ダメです。」


と村田丸は愚痴を垂れてしまう。

一平はそんな愚痴に負けずに探しました。

そしてまた次のおもちゃ屋へ。

小さなおもちゃ屋さんだったので、一平一人で店内へ。


( はぁ〜 。 本当疲れる。

離婚されちゃうの嫌ならバイヤーから買えって感じだよな。

林さんの連絡先なかったら絶対に手伝ってなんかいないもんな。)


村田丸は他人事なので色々とうんざりしていました。

仕方ない事…… 。


ぶぅ〜んっ!! ぶぅ〜んっ!


一平のスマホが助手席で振動している。

画面に映ってる内容によると着信のようです。

着信主をさりげなく見てみる。

送り主は林さんでした。

直ぐに慌てて電話に出ました。


「 もしもし、只今田中一平は席を外しております。」


「 あれ? 村田君??

係長のスマホに何で村田君が? 」


林さんはいきなり出た村田丸に少し動揺していましたが、理由を村田丸が話しました。

交換条件は当然内緒です。


「 そうだったんだぁ…… 。

村田君優しいんだね。

いつも係長に色々お説教されてるから、むしろ恨みとかあったりするのかと思ってた。 」


何故か嬉しそうに話す林さんに、村田丸は心地良い気持ちに。


「 そんな訳ないじゃないっすか。

俺は先輩にいつもお世話になってて、いつかお礼をしたいなぁ? って常々思っていまして。

まさに絶好のタイミング!

俺と先輩は心の友なんですから。 」


白々しくも少しでも評価上げの為、村田丸は一平を助けるために一生懸命だと伝えました。

林さんは嬉しそうに相づちしてくれて、村田丸も気分良くなっていく。


「 村田君が居れば安心だね。

係長は仕事は真面目に頑張ってるけど、プライベートはいつも慌ててほっとけなくて。

奥さんとの約束の為にも村田君が助けてあげて? 」


村田丸は歯を食い縛り、心から喜びました。

林さんにこんなに頼りにされた事がなく、期待されていて答えない訳にはいけません。


「 はい! 命にかけても任務遂行致します! 」


「 うふふっ、またまた大袈裟なんだから。 」


と楽しく会話を楽しんで、林さんから穴場であろうお店を聞き、電話を切りました。

村田丸はスマホを耳からゆっくり離す。

そして目をつぶり、ゆっくりと余韻よいんを噛み締めている。


( 林さん…… この任務が終わったら、食事に誘っても不自然じゃないよな?? )


村田丸は急に妄想を膨らませる。


「 村田君っ! やっぱり村田君頼りになるじゃない。

私見直しちゃったなぁ。 」


妄想の林さんは村田丸にうっとり。


「 全然朝飯前ですよ。

そんな事より俺と良ければお食事しませんか?

後悔させませんよ? 」


妄想の村田丸は三割増しのイケメンに!

頬を赤らめて恥ずかしそうに林さんは。


「 うん…… 喜んで! 」


そうして二人は恋愛に発展していく…… 。


と我に返り、現実に戻ってきました。

その村田丸の目はまるで侍…… 。

こんな真剣な顔は仕事で見せた事はありません。

仕事の時も見せて欲しいものです。


そこから何分か過ぎ、一平が帰ってきました。

帰って来る表情一つで、なかったのが直ぐに分かる。


「 なかったわ…… 穴場だと思ったんだけどな。

次は何処に行くかぁ。 」


一平がスマホで調べ始める。


「 先輩…… ここからは俺の本気見せますよ。

見てて下さいよ…… 。 」


一平はその村田丸の表情を見て、こいつはいつもとは違う…… 。

なんにも分からないけど何かが違う。

男の良く分からない本能が語りかけてくる。


「 おっ…… おう。

期待してるぞ。 」


正直自信に満ち溢れた村田丸を見たのは初めて。

いつもてんてこ舞いになったり、慌ててばかりのあのあいつが…… 。

一平の期待は高まるばかり。


「 まずはここら辺一体はもう多分ダメでしょう。

バイヤー達や世のお父さん達もバカではありません。

ならどうすれば良いのか?

元々おもちゃの生産されて売られる場所は計り知れない…… 。

なのになくなってしまう。

それはあいつらの情報網がこちらを越えているからです。 」


さっきまでのやる気のない村田丸は居ない!

今目の前に居るのは、恋愛に飢えた野獣。

村田市丸でした。

正直、やる気に満ちた表情は険しく。

一平も引くくらいの真剣さ。


「 相手の行動力や情報に勝つには、それ以上のデータや口コミを手に入れる。

それだけの事なのです。 」


なんとも凄い自信。

謎の偉そうな物言い…… 。

期待から不安に変わってしまいそうなくらい、口では簡単でも出来るのだろうか?


「 村田丸先生? でもそれが出来ればみんなしていると思うのですが…… ? 」


何故か敬語なり聞きました。

直ぐに鼻で笑う村田丸。


「 これだから情報弱者はバカにされるんですよ。

俺様にかかれば簡単だ。 」


遂に調子に乗りまくり、タメ口になっていく。


「 先輩…… カレーライス男爵。

その名前に聞き覚えありますか? 」


「 カレーライス男爵…… ?

あっ! あの動画とかでカレーライスの食べ歩きや、凄いゲームのオタクのあの!?

確か凄い有名で、誰も素顔を見たことがない。

いつもカレー色のマスクでサングラス。

有名で俺でも知ってるぞ。 」


動画主でもあり、Twitterなどで幅広く活躍するインフルエンサー。

それが今のこの事態と何が関係するのでしょうか?


「 先輩…… そこのダッシュボード開けて貰えますか? 」


そう言われて一平は直ぐに車のダッシュボードを開ける。

するとそこにあったのは…… 。


「 村田丸…… いや! これは…… 。

カレーライス男爵なのか!? 」


ダッシュボードにはカレー色のマスク。

ダサい派手派手なサングラス。

カレーライス男爵の着けている物でした。


「 そうです…… 黙っておりましたが、俺が正真正銘のあの…… カレーライス男爵なのです。 」


一瞬面食らってしまいましたが、今それが何と関係があるのか?


「 村田丸がカレーライス男爵…… 。

何故今それを?? 」


そう聞くとカレーライス男爵はスマホの画面を見せてきました。


「 今俺のフォロワーやファンに頼んで、ズルいかもしれませんがしらみ潰しに情報を集めます。

そうすれば何かしらの人形の手掛かりが分かるかも。

情報には情報を…… ってね。 」


一平はやっと手掛かりが掴めそうで、嬉しくて笑ってしまう。


「 ありがとう…… 。

村田丸…… いや! カレーライス男爵。

二人でジェイミーを手に入れよう。 」


そう言い熱い握手を交わす。

そして村田丸は一斉に情報提供の協力を要請する。

あっという間に日本中に広がりました。

車の中で少し待ってみる。


「 ん? キタキタキタ。

来ましたよぉーーっ! 」


自分達の周りの珍しいおもちゃ屋や、穴場のお店の情報がどんどん送られてきました。


「 うっひょーーっ! すげぇ…… 。

村田丸様のお力はここまでとは。 」


ただただ、目を丸くするばかり。

そして直ぐに人があまり来ないと噂のおもちゃ屋へ。

凄いスピードは出ないおんぼろカーに乗り、今目的のお店へ走らせるのでした。


その頃、我が家では奥さんと愛菜ちゃんがお絵描きしていました。


「 ママぁ? パパいつ帰ってくるぅ? 」


「 そうだなぁ…… 愛菜が良い子にしてたら直ぐに帰って来るから。

寂しくなんかないからね。 」


そう言うと愛菜ちゃんは笑ってお絵描きしました。

そこには一平が一生懸命仕事をしている絵でした。

愛菜ちゃんはパパに早く会いたくて仕方がない。

奥さんも同じ気持ちでした。


( にしても…… パパ大丈夫かなぁ?

凄い張り切ってたし。

早く帰って来ないかなぁ…… 。 )


一平の旅の理由も知らず、二人は家で遊んでいるのでした。

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