第6話 転売ヤー


フリマアプリを見ると、普通に買うより高い値段で大量に取引されていました。

通常価格の約3倍 …… 。

一平は驚愕してしまう。

むしろ安く買えてしまうと思い、甘く見ていました。


「 どうなってんだよ??

何で新品同様の商品がこんなにあるんだ?

…… はっ!?」


その時急に思い出しました。

妻との他愛ない会話を…… 。


「 あなた? これみてよ。 」


「 んん? なんだい? 」


一平はスマホの画面を見せられると、そこには妻の大好きな化粧品がズラリと画面に映っていました。


「 これがどったの? 」


「 分からない?? これね。

本当はこの半分の値段で買える商品なのよ!

腹立つと思わない?

人気の商品を欲しい人より多く買って、高値で売り付ける…… 私嫌いだなぁ。

こう言うやり方する人達!! 」


その時奥さんは怒っていました。


「 なら沢山作るしかないだろ?

いずれは生産量について来れなくなる。

だから気長に待ちなさい。

広い心を持つのだよ? がっはっはっ!! 」


他人事だと思い、適当な返答をしていました。


「 そうかもしれないけど…… 。

そんな適当に考えてると、いざと言うとき痛い目見るんだからね?

その時は遅いんだから! 」


奥さんは怒りしながら言いました。

一平は寝っ転がりながら。


「 そんな時来ませんよ。

もし来たら俺が転売マンやっつけてやる!!

あっはっはっはぁーー!! 」


そして現在…… 。

缶コーヒー片手に怒りが缶に伝わり、へこみ始めました。


「 うるぁーーっ!! 」


カン! カン! カンッ!!


飲み終わった缶を地面に叩きつけました。

息を荒くしながら缶を見つめる。


「 過去の俺をぶん殴りてぇーーーーっ! 」


転売を甘く見ていた自分に腹が立ちました。

やっと理解しました。

現在のジェイミー人形は人気で、クリスマスだからないのだと思っていました。


それだけではなかったのです。

それ+α転売ヤーの増殖により、現在のような状況が作られてしまったのです。

おもちゃ業者やフリマが、対策をしているのかもしれません。

まだまだ減少せず、むしろ増加していたのでした。


一平は静かに投げた缶を拾いに行き、近くのゴミ箱に捨てました。

少し気が楽になり、冷静さを取り戻しました。


( そうだ…… そうだよ。

転売さん達も、やりたくてやってる人ばかりではないのかも。

仕事に着けなくて仕方なくだったり、何故か沢山持ってたので売るだけなのかもしれない!

本当物事を外見でしか理解しないで語る。

中身が大切なんだ!

俺の悪い癖だね…… ごめんね転売さん。 )


一平はそう思うと少し気が軽くなる思いに。

そこへ男女三人組みが大量の荷物を、カートに乗せて車まで運んでいる。


「 クリスマス前は本当稼ぎ時だぜ! 」


「 だな。 世のお父さんは涙目で、俺らから商品買わないといけないなんてな!

お父さん達は良いお得意様だな。

儲かった分で焼き肉食おうぜ?? 」


男二人は笑いながら車まで運んで行く。

そして一つ箱が落ちる。

一平の目は直ぐにその箱へ。


「 ふざけんじゃねぇーーっ!! 」


一平はまた怒りだす。

大きな声を上げて、バイヤーらしき人達の元へ歩いて行く。

二人の若い男はいきなり向かってくる一平に、さすがにびっくりしてしまう。


「 お前らには血も涙もないのか?

これはネコのジェイミー人形じゃないか!

こんなに買い込んで…… 。 」


ざっと見積もっても40個以上もありました。

一平のバイヤーへの気持ちはまた、嫌悪感の塊に変わってしまう。

あまりにも早い気持ちの早変わり!!

逆恨みかもしれないが食いついてしまう。


「 おっさん…… もしかして予約してなかったの?

ハハハハハッ! これは傑作だわ。

ネットで無駄に俺たちに文句言ってくる、低脳の代表みたいなおっさんじゃん! 」


男たちは一平を指差して笑いました。

一人だけ居る若い女はガムを噛みながら、面倒くさそうにこちらを見ている。


当然一平も黙っていません。

怒りは頂点まで高まり、今は何をしでかすか分からないくらいに!


「 お前らーーっ!! 」


飛び掛かろうとしたとき、相手の男の一人がジェイミーの箱を差し出す。


「 土下座すんなら売ってやってもいいよ?

どっする? プライドか? それとも子供への愛か?

どっちなのかな?? 」


一平は立ち止まりました。

最低最悪の奴らですが、ジェイミーの前では頭が上がらない。


「 あんたらいい加減にしなよ。

無駄な事してないで次行くよ。

そんなおっさん何の価値もないんだから。 」


そう言い女は車に乗り、男たちも渋々車に乗り込む。

一平は立ち止まり動けずに居ました。


( クソぉ…… クソガキ共が。

俺が…… 俺が何で土下座なんて。 )


一平はプライドに負けてしまった…… 。

もしも頭を下げてしまったら、男としてどうなんだろう? と言う葛藤に負けてしまったのです。

それと同じくらいあの時、頭を下げておけば良かったのかなぁ?

と後悔しかありませんでした。

一平はその後少しだけそこから動かずに、静かに遠くを見ているのでした。


その後も何十件も回りましたが、やっぱり在庫が残っていません。

予約も出来なかった人が居るくらい、ジェイミーは転売ヤーさんの標的だったのでした。

また疲れて座っていると?

一人の男性が電話しながら慌てている。


( 何処のお父さんもジェイミー探しかな?

全然売ってないんだよ。

みんな離婚されちゃうんだ…… 。 )


と諦めていた時!!


「 うんうん…… 本当か?

数は少ないけど本当に在庫入ったんだな?

間違いなくジェイミー人形か?? 」


( なにぃ!? ジェイミー!!? )


電話している男性の会話から、ジェイミーの名前が出てきました。

しかも在庫が入ったお店の情報まで!


( ん…… ふっふっふ…… 。

俺もまだまだ捨てたもんじゃないぜ。

絶対離婚なんてしない! 愛菜を泣かせはしない!

待ってろよ、お前達…… お父さん、お父さんは戦いに行ってくるよ。 )


初めて見えた希望の光。

一平の本当の戦いが今、始まろうとしている。


その頃、愛菜ちゃんと奥さんはと言うと。


「 ジェイミー、ジェイミー!

ママぁ? ジェイミー人形の為に、おうち作ったんだよ?

可愛いでしょ?? 」


奥さんは娘の健気な所を見て、嬉しくて優しくうなずきました。


「 そうだねぇ。 パパが絶対買うって言ってたもん。

愛菜は楽しみにしててね。

にしてもパパ…… 良く予約出来たなぁ。

予約も大変だったろうに、不満の一つも言ってなかったなぁ…… 。

ちょっと不安な気もする…… 。 」


奥さんの予感的中していました。


ブゥ〜〜ンっ!!

スマホの通知のバイブが鳴る。


「 パパからだぁ! 何々??

んっ…… ? 何だこれ?? 」


一平からの一通のメールでした。

内容はと言うと?


( ママ! いつもお疲れ様。

家族の為に一生懸命戦って来ます。

頑張って来ますぅーーっ! パパ。 )


奥さんはポカーンっとなってしまう。


「 たかが仕事じゃない。

慣れてるのに今更…… 戦うってなに? 」


と一平のメールの意味が分からず困惑するのでした。


その頃、一平はと言うと?

目的地の大型おもちゃ屋さん。

ハローライオンに来ていました。


( 遂にたどり着いたぞ…… 。

周りの人の話によると、夕方の17:00。

一斉に販売するらしい。

世の親の為に、わざわざ遅くに発売する。

何て優しいお店なんだろうか? )


残り時間は10分。

販売個数は50個のようです。

取り寄せ出来た事に驚きでした。

そこに集まった人数は、約200人以上…… 。

ほとんどが若い女性から年輩の女性ばかり。


( 勝った…… 俺は男だからな。

男の力魅せてやるぜ。

悪いけど娘の為だ…… 。

おもいっきり暴れてやるぜ。 )


時刻は17:00に!

お店の扉が開き、今販売開始!!

一平の命を燃やす戦いが、今始まろとしていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る