第5話 娘のプレゼント


一平はプレゼントを間違えていたのです。

かれこれ半年前…… 。

一平が酔っ払って帰って来たときの事。


「 ママ〜 お水ちょうだぁい!! 」


その日は忘年会もあり、相当酔ってしまっていました。

そこに愛菜ちゃんが来ました。


「 パパ?? わたし、わたしね。

ぐ〜たらファミリーのぬいぐるみほしいの!

一番欲しいのは、ネコのジェイミー!

おねがい、おねがぁ〜〜 いっ!! 」


愛菜ちゃんが頼み込むと一平は酔いながらも、娘の為にと良い顔をする。


「 良いとも、愛菜ちゃんの誕生日に買ってあげようじゃないか!

楽しみにしときなさい。 」


そう言うと愛菜ちゃんは大喜びで部屋へ。

一平も気分が良くなってしまう。


「 パパ…… ぐ〜たらファミリーは凄い人気なのよ?

買うの大変なんだからね?

当日になってなかったら、絶対愛菜は許してくれないんだからね?? 」


奥さんが気にしてくれると、一平はニヤニヤと笑いました。


「 これだから君たちは甘いのだよ。

人気なんだったら、今から予約したらどうだい?

まだ半年もあるんだよ?

何でも早め、早めに行動すればミスがない。

さすがだとは思わないかい? 」


奥さんは納得しつつも少し不安に感じました。


「 ならせめてメモ帳に書いといて?

ぐ〜たらファミリーのぬいぐるみを予約する。

って! そうすれば忘れないから。 」


不安そうに見守ってるいる。

一平は酔いながらもメモ帳に書きました。


「 はいはい! ぐ〜たらファミリーのネコのジェイミーを予約する!

っほいっとな! あっはっはっ!! 」


その後直ぐに眠ってしまいました。

次の日になると何事もなかったように生活をしていました。


そして今!

その事を思い出していました。

恐る恐るメモ帳を見ました。


( 夢だ…… そんな事あるはず。

メモ帳に書いてれば気づかないはず……

気づかないは…… ず。 )


メモ帳を一枚、一枚めくりました。

でも何処にも書いていませんでした。


( 良かった…… 書いてないなら夢だったんだ。

予約してなくても仕方が…… んぅっ!? )


めくっていると一枚、紙と紙がくっついてるページが存在しました。

ゆっくり…… ゆっくりて剥がしてみる。

そこには大きく…… 。


「 ぐ〜たらファミリーのネコのジェイミーを

予約する。 」


( 終わった…… 俺は嘘つきパパの烙印らくいんを押されてしまう。

いや。 それ所ではない!

愛菜を傷付けてしまうに違いない。

そして悲しむだろうなぁ…… 。 はっ!!!? )


その時気付いてしまいました。

負の連鎖に…… 。

離婚されない条件。

1つは誕生日会には絶対参加。

2つ目は愛菜を悲しませない事…… 。


一平の頭はゆっくりと真っ白になっていく…… 。

約束を守れない=愛菜を悲しませてしまう。

そうすると悲しい誕生日に。

そうなってくると約束を破ってしまう事になってしまう。

その後はこれからどうすれば良いか?

と考えるので頭がいっぱいになりながら、一平は仕事へ行きました。


会社に着くなり椅子に座りため息をつく。


「 係長。 また嫌な事でもあったんですか? 」


林さんが優しく声をかけました。

一平は少し反応してまたため息をつく。


「 俺さぁ…… そろそろ離婚されちゃうかもしれないんだぁ。

だからこれからどうしようかと考えてて。 」


そう言い死人のような顔をするのでした。

林さんもビックリした表情をして、気に掛けてくれました。

あんなに愛妻家の一平が、まさか離婚されるなんて信じられませんでした。


「 係長! 私で良ければ力になります。

何でも言って下さい。

いつも助けて貰ってばかりいるので、力になりたいんです。 」


そう言うとゆっくりと一平は、事の経緯を話しました。

自分が誕生日プレゼントの商品を間違えて買っていた事も…… 。

林さんは少し考えました。


「 やっぱり…… 正直に話すしかないですよ。

絶対分かってくれますよ。

係長の奥さんだって絶対愛してるんですから。 」


必死にフォローしました。

すると一平は閃きました。


「 まだ3日もある…… 。

俺は早退する。 部長には宜しく言っといてくれ!」


そう言い一平は帰ろうとする。

林さんが直ぐに後を追いました。


「 係長! 全然当てがないんですよね?

私が遠隔で指示します。

一緒に探しましょう? 」


一平は大きく頭を下げてエレベーターで降りて行きました。

林さんは直ぐにパソコンで近くのおもちゃ屋を、片っ端に調べ上げる。

そしてリストにして一平に、一つずつ候補を伝える。

林さんもやる気満々の様子。


( その日から俺の、地獄の3日間が始まる。

まだ俺は心の奥底で、たかがおもちゃだろ?

少し時間掛ければ大人にかかれば余裕だぜ!

なぁ〜んて甘い気持ちが残っていたのかもしれない。

俺はその後目に沁みるのであった…… 。 )


まずは近くの電化製品を扱うお店へ。

商品が沢山立ち並び、何でも売っていそう。

直ぐにレジに行き、店員さんに在庫を聞く事に。


「 すみません、ぐ〜たらファミリーのネコのジェイミーのぬいぐるみ売ってますか? 」


店員さんは調べる事なく直ぐに返答してきました。


「 申し訳御座いません…… 。

只今在庫が品切れとなっています。 」


当然の返答でした。

帰ろうとすると。


「 ぐ〜たらファミリーのぬいぐるみでしたら、パパのナマケモノが残って居ますよ。

良ければどうでしょうか? 」


( なにぃ〜!? ナマケモノパパだと?

いらないに決まってるだろ!! )


一平はイライラしていました。

離婚されるかどうかの瀬戸際!


「 わざわざありがとうございます。

ジェイミーが必要なので…… 。 」


そう言い帰ろうとしながら、パパのナマケモノを見る。

その顔は何処か自分に似ている気がしました。


( ナマケモノ…… お前には恨みはない。

だが絶対に何があっても買わん。

悪く思うなよ?? )


そう思いながら急いで次の場所へ。

次の場所を林さんから伝えられる。


( 林さんは何て優しいんだ…… 。

多分いずれは俺なんかと正反対な、最高な男の人結婚出来るであろう。

そのとき俺は、誰よりも大きな声でお祝いさせて頂くよ。)


実は現在の日にちは、12月20日…… 。

クリスマス直前の誕生日。

世の中のお父さんも前もって予約をしたり、同じようにお店からお店へ駆け回る。


次のお店へ着きレジへ。


「 あの…… ネコのジェイミーはありますか? 」


「 すみません…… あっ!

パパのナマケモノなら残ってますよ? 」


一平は一瞬イラッ! としました。


「 ありがとうございます。

またの機会に…… 。 」


そう言い駆け足で出ていく。

また次の場所へ…… 。


「 次はおもちゃのライオンボーイへ!

そこから約、1.5キロです。

頑張って下さい!! 」


励まされながら次の場所へ。

一平は駆け足で向かう。


店に着くと息が荒れていました。

スーツ姿で走れば当然。

中々の距離なので仕方がありません。


「 おじさん…… ぜぇぜぇ。

ジェイミー…… ジェイミーは!? 」


段々と聞き方も悪くなってきました。

脳に酸素が回っておらず、思考回路がストップ寸前。


「 すまんね…… 今、最後の一個売れてしまったよ。

でもまだ…… おぉいっ!! 」


その店長の話を聞かなくても分かっていました。

どうせパパのナマケモノはあるのだと…… 。


そこからまた違う店へ、違う店へと淡々と回りました。

有給を使い休んで探しましたが、時刻は15:00になっていました。

お店を訪れた件数は何と25件…… 。


( こんなにないもんなのか…… 。

おかしい…… そうだ!!

何で思いつかなかったんだ。 )


一平は良いアイディアを思いつきました。

それはフリマアプリを使い、安く売って貰おうと考えたのです。

直ぐにアプリを開いてジェイミーを探す。

そして驚愕する事に…… 。


「 なんじゃこりゃーーっ!? 」


ベンチに一人で座っていた一平は、大きな声を出して立ち上がってしまう。

どうなっていたのでしょうか?

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