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 午後五時四十八分。

 コテージをあとにすると、その人物は少し寄り道をしてから中央棟の裏手に向かった。ちょうどその場所はフロントの裏手であり、夕食の振舞われる二階レストランの勝手口にもなっている。すでに調理は済んだようで開け放たれた勝手口からは香ばしい香りが漂っていた。その勝手口から中に入ると二階に運ばれる料理のワゴンがずらりと並んでいるのを確認した。

 厨房には誰もいない。皆スタッフに呼ばれ、二階で最終確認を行っているはずだ。

 全ては計画通りであった。

 ワゴンの一つに近づくと、その上に載ったひときわ大きなクロッシュに手を伸ばした。中には何やら肉料理が入っている。その皿を取り出すと、手に持った袋から「作品」を取り出し、最も効果的な配置をしばらく思案した。納得がいくと再びクロッシュをかぶせてその人物は勝手口を後にした。

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