28 救出!
巨大-
バックヤードが下敷き
バックヤードは仲間だ
仲間は助ける
急がないと!!
都市の道路だ。通行量の少ない時間でも、車両は少なくない。車と車、自転車と歩行者の間に、スキマをみつけては着地するを繰りかえす。迷惑を省みないデンジャラスな飛び石渡りで、信号機、歩道橋、シュパっと跳び越えて、低めのビル屋上も伝っていく。
無茶な疾走を続け、
「はぁ、はぁ、ひ、ひかり。オレのことも、すこしは、考えろ」
だが、先を急ぐ
現在はスタバ、かつてはステーキハウスだった交差点を、ひとまたぎに越えた。
その
「せいのー」
「おぃっしょお!」
「もいっかい、せいのぉ!」
「うっしゃああ!!」
研究員、バックヤード、それにフリートたちは、鎮座する110個めの隕石を1ミリでも動かそうと、歯を食いしばっていた。
2機のクレーン仕様バックホウはあるが、稼働してない。吊るにはパワー不足、掘るには力が強すぎて隕石を傾けてしまう危険があった。彼ら彼女たちは、金テコで隕石を動かす班と、その下の土を掘り出す班にわかれ汗を流すが、成果はかんばしくない。
「……」
「目をあけろ! 意識を失うな!」
警察が、誰も入らないよう出入り口を塞いでる。ちょうど取材にきていたマスコミ数社だけは、運よく状況報道を認められた。そのひとり平川豊が、カメラに向かって苦渋の表情を浮かべる。
「テレビを御覧のみなさま。もしも言葉選びを間違っていなならお許しください。みなさまは、私どものこの中継を偶然居合わせた僥倖とお考えになられるかもしれません。ですが、もしかしたら、私たち取材班が、下敷きとなった可能性も十分にあるのです。あそこで苦しむ彼らは、ついさきほどまで、笑顔で取材に応じてくれた方達なのですから。一秒でも早い救出を、心から、心から、願わずにはいられ……」
心痛な表情と声が、徐々に悲痛な涙声へと変わったそのとき、突然、地面がゆれて砂埃がおこった。カメラがとらえる映像は撒きあがる砂埃だけ。平川が落としたマイクが、驚いた反応を拾う。
「うあっ 地震か? なんだ!」
「
「生物っぽい。
どれも違う。高さ3メートルの軽量金属壁に囲まれた
「ガーディウスじゃねーか!?」
巨大-
誰か下敷き
香暁沙也加と、2人
持ち上げれば助かる
人が多くてじゃま
突然に現れた巨大人に、人間は慌てふためいてる。手を貸したいが、手が出せない。
素早く事態を飲み込んだのが4人、そのうちの射妻がダッシュ、卯川が続いた。
「危険だわ! みんなさがって!」
射妻エリカは叫ぶと、仲間たちをかばうように隕石の前に立つ。ホルスターから抜いた熱線レーザー銃を
「サブチー! 撃つなッ」
出張り腹の卯川が、トリガーに指をかかった銃を押し下げた。発射されたレーザーは
「どうして!?
困惑する射妻の手から、卯川は銃を奪い地面に投げつけた。
「仲間を撃つ奴があるかよ」
「仲間って誰が」
「アイツにきまってる。2度も助けにきてくれた味方だぞ」
「偶然にきまってるでしょう。それを仲間? 笑わせてくれるわ」
「敵を倒したアイツぁ、惚れ惚れする颯爽ぶり誰も傷つけんで帰ってった。そのどこが偶然ってんだよ」
「現実とファンタジーの区別もできないの?」
卯川の眼鏡面に、射妻は指をつきつけ。
「ご都合種に浸るの、ヲタの悪いクセだわよ」
「るっせー、俺は誇りあるヲタだ。この紙ヲタがっ」
「紀元前からメディアの宝だった紙が廃れていくのが見過ごせないだけ。萌に目尻をさげてるあなたと一緒にしないで」
助けたい
「そこから離れろ二人とも」
チーフ相崎は、ぐいっと割ってはいると、二人の腕をとった。のそっと立つガーディウスの前からどかそうと引っ張る。卯川は素直に動いたが、射妻は抵抗した。相崎の腕を振りほどくと、買ってと駄々をこねる子供みたいに、しゃがみ込んだ。
「らしくないぞ。エリカだって早く救けだいしたいだろ。あいつを困らせるな」
「あいつ?
「分かるんだよ」
相崎は声をはりあげた。
「みんな離れてさがれ! バックヤードたちも。全員だ」
「救助をやめて逃げろっていうんですか?」
「チーフ! 見殺しにする気なの」
「いや。救助はするし逃げもしない。いまは俺の言葉を信じろ」
しぶしぶ、全員が救出作業をやめ、隕石を遠巻きに取り囲むように後ろに下がった。
伊妻は、落とした熱線銃を拾おうと動いたが、相崎はそうさせない。
「銃をよこして。ひとりでもユーテネスを倒す」
相崎は無言。嫌がるクールビューティを腕力にまかせて立ち上がらせた。大人しく見下ろす
巨人はうなずく。身体を折って
「言葉を理解している、とでもいうの」
伊妻は、なにがなんだかわからなくなった。
北大研究員たちは、巨大な人型生物の挙動を、暢気に分析していく。
「身体の大きさを変えられるのか。いや、なんで変えたんだ」
「バフメテオ、重いからだろな」
「あー。誰だって膝まである庭石は持てないってことか」
「つーことは、サイズによって力を変えられるってこと?」
「その理論いただき!」
腕で抱えるのがやっとだったバフメテオが、掌の中にすっぽりと収まる。
「……ガチで助けた……だよな」
「いまだ! 3人を助けだせ」
「そうだ。急がないと命にかかわる、ぞ……ぬわっ??」
「握りつぶす気よ! 助けだして」
「離してチーフ」
「あいつにまかせろと言ってる!」
3人を青白い光りの球が包み込んだ。青白はカラーイメージなら冷たさを感じさせる寒色。だが暖かな光の効果は真逆だった。
「みていろ」
「何を見ろって言うの」
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