第7話 初夏の或る日

夏がはじまりそうな風の気持ちの良い朝、麗奈は、玲司に

「今日、郷里の仙台の友達が遊びにくるの。久しぶりに夕飯一緒にということになったんだけど、行ってもいい?」

「それは良かったね。ゆっくりしておいで。夕飯は、適当に食べるから大丈夫。」

「ごめんね。ありがとう。」

(本当に紳士的。玲司さんと結婚してよかったなぁ。)

そんなふうに思えるようになってきていた。

玲司が出かけた後、潤也が

「友達、どこに泊まるの?」

と聞いてくる。

「なんで?」

「いや、知り合いがホテルの優待券くれたんだ。」

と差し出すが、

「こんな一流ホテルの優待券、持ってる知り合いなんかいるんだ。でも、もう泊まるとこ決めてきてると思うよ。」

「ーじゃあ、ラウンジで一杯とかやるのに使えば。」

「わかった。とりあえず持っていってみる。

ありがとう。」

いつも麗奈のやることに無関心な潤也なのだが。

(珍しい。ちょっとは、感謝してるのかな?)


渋谷駅、待ち合わせ。

「久しぶり〜麗奈。結婚式出れなくてごめんね。」

「仕方ないよ。叔母さんが入院してそれどころじゃなかったでしょ。もういいの?」

「もうすっかり。心配かけたね。」

「ううん。」

「それより、私、今日泊まるとこ探さなきゃならなくなっちゃって。」

「予約してたんじゃなかったの?」

「日にち間違えて明日で予約しちゃったんだよね。今、ホテルに行ってわかったんだけど、今日は、もう満室だって。」

「麻美らしい。あっ、そういえば優待券もらった。」

潤也にもらった優待券を見せる。

「こんな凄いホテル泊まれないよぉー。あれ、でもこの金額?ホント?逆にラッキーなんだけど。」

「うん、うん。予約取れるか電話してみよ。」

「もしもし、、、、、」

「麗奈、信じられない。予約とれちゃったよー」

「良かったね。じゃあ、今日はぜいたくにそこでご飯しちゃう。」

「散財しちゃうか。」

「行こ、行こ!」


ホテルに着いた2人。

「なんか入るのもドキドキするね。では、いざ!」

「いざ!」

麻美がホテル予約してる間、麗奈は、興味深々でキョロキョロ。

(あれ?客室用エレベーターの前で待ってる2人、玲司さんと潤也くんじゃん。)

「玲司さん。」

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