第3話 もしかして卑弥呼さん?




 で、さっきの話にもどると、やっぱり頂上からの見晴らしは最高だったよ。(*'▽')

 これだけ市街地を一望できるところ他にないんじゃないの? 知らんけど。(笑)


 ひときわ盛り上がっている森が諏訪神社だろうから、ぼくの家はあのあたりかな。

 さっき家出したばかりでもうそんなことを考えている自分が情けなかったけどね。


 ひとりでいる小学生を怪訝な目で見る大人もいたけど、その辺はうまくやったよ。

 そんなことより、せっかく来たんだからちゃんと見学して帰らなきゃと思ってさ。




      🌍🏫




 そうそう、言いそびれたけど、ぼく勉強のなかでも社会、とくに歴史が得意でね、その点に関してだけは、兄貴にも弟のやつにも負けない自信があるんだ。(^_-)-☆


 ん? あれ、いま気がついたけど、ぼくにも3兄弟で一番のものがあったんだね。いつもいつも負けてばかりだと凹んでいたけど、そんなことはなかったんだよね~。


「きみは物事を悲観的にとらえる傾向があるね」って、ぼくを理解してくれる担任の先生にも言われたけど、これからはポジティブシンキングでいこうと思うよ、うん。




      ⛅🦄




 とそのとき、晴れていた空が急に曇ったと思うと、谷から強風が吹き上げて来た。

 身体がふわっと持って行かれそうで、怖くなったぼくは身体を地面に伏せたんだ。


 同時に、すうっと意識が遠のいた。👻

 気づいたら、ぼくは古墳室にいた。👾


 古墳室なんてヘンな言い方だけど、そこは部屋としか呼びようがない場所だった。

 テレビで観たウクライナの製鉄所シェルター……あれのコンパクト版て感じかな。


 驚いたことに、そこには高松塚古墳の飛鳥美人にそっくりの女の人たちがいたの。

 そして、中央に座っているのはギョギョギョ、卑弥呼ひみこさん、まさにその人だった。


 弟以外に姿を見せたことがないと伝えられる卑弥呼さんだけど、ぼくは確信した。

 しかも、独身だったはずの卑弥呼さん、なんとかわいらしい赤ん坊を抱いている。


 目を疑ったけど、まぎれもない卑弥呼だと、ぼくの歴史脳(笑)がささやくんだ。

 卑弥呼の古墳は各地にあると言われているけど、へえ~、ここにもあったんだね。


 素直に納得したぼくは、遅ればせに卑弥呼さんに「こんにちは」とあいさつした。

 ヘン? なんて言えばよかったの? でも、卑弥呼さんはにっこりしてくれたよ。



 

      👘🐲



 

 卑弥呼さんは、話を聞いてほしかったらしくて、ぼくを大人扱いしてくれたんだ。

 本人が語る自分史は、歴史の教科書にのっているのとは、だいぶちがっていたよ。

 

 男の王が支配する邪馬台国は戦いに明け暮れていたが、卑弥呼の即位で鎮まった。

 大陸と積極的な交易を行い、内政は鬼道シャーマンで治め、安定した社会を継続させた。


 そこまでは正史と同じだけど、じつは、卑弥呼さんには愛した人がいたんだって。

 その男性との間に子どもができたことを知った弟が嫉妬して、毒薬を盛った……。


 けど、病死ということにされて、100人の奴婢ぬひと一緒に古墳山に葬られたんだ。

 その奴婢のうち大陸の医術に長けた人が卑弥呼さんを蘇生させ、出産させた……。


 竹の筒で空気穴を通し、みんなで土室を広げていき、地下壕の世界を完成させた。

 同時に卑弥呼と奴婢たちの運命を憐れんだ神さまが永遠の命を授けてくださった。


 ただ、代わりにその時点でぴたっと時が止められたので、卑弥呼さんと赤ちゃん、奴婢たちも歳を取らないという禍福の判定がビミョーな結果にはなったんだけどね。

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