第3話

その後、リンシャとともに控室に向かった。

その道中も、控室も、どこもかしこもとても綺麗で洗練されたところだった。

窓の外から見える巨大なビルは地球では見たこともないような形をしている。

どうやって支えているのだろうか。


どうやら知能を持った生物が召喚された場合は特例で闘技場内の案内をすることが許されるらしいが、リンシャは俺がニンゲンだということを隠したいらしい。


案内人にそのことを仄めかされていたが、リンシャは辞退していた。


「リン、シャ様」


2人きりになってから話しかけると、リンシャは仮面を外し、小声で言った。


「ヤマト。ここでもだめよ」


息を呑むほど綺麗な人だった。

アーモンド型のつぶらな瞳は淡いブルーで、ブルネットの髪が一層美しさを際立たせていた。

チェリーのような小さな唇は弧を描いていて、まるで一枚の絵画のようにできあがった姿だ。


こんな人の奴隷にならなってもよかった。

いや、もっと別のシチュエーションでならだけど。


時を忘れて見惚れていると、リンシャは得意そうに咳払いをした。


「あそこでは形式的に仮面をつけなければいけないの。ルールなのよ」


得意そうにニヤニヤしているリンシャは可愛らしい。


ほんとに綺麗ですね、とか言いたかったが、場違いな気がしてやめておいた。


「いい?ここは控室。あなたは1時間後には闘技場に出なければなりません。わかりましたか?」

「武器はすぐに買ってきてもらうから少しここで待っていましょう。ここは上層部の方々も見ている場所なので不敬な発言はよすこと」


「は、い」


リンシャはキリッとした顔で言った。

そして頷くと、大きな透明のドアに少し手を触れて開けた。


「武器を用意してほしいのですが」


外に向けて呼びかけるとまた新しい男が出てきてリンシャと小声で打ち合わせのようなことをしていた。

魚類のような目が5つもある。

と、俺の方を見て


「知能があるんでしたっけ?レディー」


とリンシャに尋ねた。


「ええ、言葉を理解できます」


「ほお。それでは手を出してみなさい」


男が何か丸っこい空洞のあるものを差し出して、その中に手を入れるよう指示をしてきた。

俺は言われるままに手を入れると、男は少し嬉しそうな顔をして少し待っていてください、といった。


男が小走りで出ていくと、リンシャはチラリとこちらを見た。


「きっと次は全身の測定ね。これで体格に合った武器を用意してもらえるわ」


しばらく無言で待っていると男がさっきと同じような、でもとても大きなものを持ってきたので、そこの中に入った。


「はい、確かにおとなしくて知能があるようですね。今回は面白くなりそうだ」


目の端にニヤリと笑いを含めて全ての目を瞬かせた。


「言語理解能力を全ての生物が得られるとはいえ、ここまで的確に理解できるのは珍しい。勝ち上がるかもしれませんね。レディー。楽しみにしています」


リンシャは頷くと、にこやかにありがとう、と答えた。






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奴隷になった俺と主人が世界を救うまでのお話。 そる @sra55634482247

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