第2話

「リンシャさん」


近くにある男がリンシャに話しかけてきた。


「地球にいるニンゲンと似た生物ですね。どこの生物でしょう。エスカンに最近生まれた新種でしょうか?」 


「エスカンに…。そうかもしれません。とてもニンゲンに似ていますが、そこまでの知能はないようです」


地球にいるニンゲン?

やはりここは地球じゃないらしい。

エスカンという星があるのか、それとも違う宇宙の話なのか、それともよくいう異世界というやつなのか。

俺は目を伏せながら会話を聞いていた。


「この奴隷に名前は付けたんですか?時折元々名前を持っている個体もありますが」


「どうでしょう…少し喋れるようなので持っているかもしれません。聞いてみましょうか」


男とリンシャが顔を見合わせると、俺を見た。

リンシャが口を開けた。


「あなた、お名前は?」


「…ヤマ、ト」


大和やまと。これが俺の名前だ。

本名で名乗っても良かったのだろうか。


「ヤマト。言葉が理解できるのですね。リンシャさん、当たりかもしれませんね」


男が笑みを含めた声でリンシャに言った。

リンシャがも笑みを含めて声を返す。


「サクルスさん、ありがとうございます。頑張って勝ち抜きたいと思います」


「ははは。楽しみだ。僕の奴隷も当たりだと思いますよ」


サクルスの奴隷に目を向ける。

巨大な蛇のような生物だ。地球の蛇と違うのは、手が生えているところと、毛が生えているところだ。

こんなものと闘うのか…


「お名前はどうするんですか?」


リンシャが聞くとサクルスは嬉しそうに答えた。


「グクスと名づけました」


「いい名前ですね」


リンシャもにこやかに応える。


グクス…どうやってあんな化け物と闘うんだ。

俺が当たり?ただの社交辞令じゃなければどう言う意味なんだ。

確かに話せるほどの知能がある生物は地球には人間しかいない。

闘いにおいて知能があると言うのはプラスだろう。


リンシャやサクルスは人間じゃない。

リンシャは人間に近いように見えるが、サクルスはよく見ると指の本数が多い気がする。


そこはかとない恐怖で息が荒くなってくる。

本当にここはどこなんだ。


「怯えているようですね。サクルスさん、今日はここら辺で」


リンシャが申し訳なさそうに言うと、サクルスはにこやかに答えた。


「ええ。ここら辺で。また今度2人でどこかいきませんか?」


「はい、機会があれば」


リンシャもにこやかに応えると、サクルスは去っていった。


「ふぅ…」


リンシャは小さく息をつくと、次は大きく息を吸い込んだ。


「ヤマト。これから武器を用意してもらいましょう。手の大きさや体の大きさを測って、1番いいものを探してもらいます」


俺は目を瞬かせてリンシャを見た。


武器…正直ないと勝てる気がしない。


「つ、よい、の」


リンシャが笑う気配がした。


「ええ!もちろん!強いのを持ってきますね」

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