クライアント『黒の枢機卿』

俺は改造された左腕の義手を慣らす為に精霊蛙のエルと共にダンジョンに潜っていた。今は中層の30層にやって来たばかりだ。低層ではほとんど俺の出番は無かった、何故なら全てエルが仕留めてしまったからである。エルは口から吐く鉄砲水の様な水魔法や泡状の水魔法で次々と敵を倒して行った。また、身体の色を変える事で擬態して敵に居場所を察知させないので敵は相手が何処にいるのか気付かぬままに倒された。お陰で低層の魔物の魔石は全部エルが舌を伸ばしてパクっと食べてしまった……リックに持ち帰る魔石が少なくなっちまったぜ。


「おいおい、エルさんや……コレじゃあ俺の義手の練習にならねえから少しは自重しろ」


『ケロケロ!!』


「まあそう言うな……あくまでも今日来たのは俺の練習の為だ。理解して欲しいんだがね、精霊蛙殿」


『……ケロロ』


「ありがとな。さてと……そろそろお出ましかな……」


とまあこんな感じで半日程ダンジョンの中層で義手に慣れる為の練習を重ねて行った。

感触も大体掴めて来たしソコソコの動きは出来るようになった。調整は少し必要だがコレなら即実戦でも大丈夫だろう。


俺は早速リックの屋敷に向かい、リックに魔石を渡しながら今日の練習での感触などを話し、義手の調整を頼んだ。魔石の中身を確認しながらリックはこう切り出した。


「それにしても今日は魔石が中層の物ばかりだねぇ~」


「ああ……低層のはエルが全部倒して食っちまったからな」


『ケロケロ!』


「へぇ~、エルは魔石を食べるのかい?こりゃあ飛んだ商売敵が現れたね!アハハハ!」


『ケロロ!ケロ!』


「これでも自重したってさ」


「アハハハ!そうかそうか。これからも御手柔らかに頼むよ!」


そう言いながら俺の義手をはずしたリックは、錬金釜に義手を突っ込んで何やら呪文【スペル】を打ち込んでいった。そのリックの肩の上に乗ってエルはその作業を興味深そうに眺めていた。俺は奥の棚に置いてある酒を勝手に開けてグラスに注ぐ。そして一杯飲みながら煙管に火をつけて煙草を吹かした。

そしてリックが調整を終えた頃に屋敷に客がやって来た。こんな時間に珍しいな……などと思っていたら俺の客だった。


「おや?アンタは確か……」


「はい先日、枢機卿の執務室でお会い致しました……私はクレスと申します、以後お見知りおきを……」


「覚えておくよ。しかし教会の人間が直々に訪ねてくるなんて珍しいな。今回は傭兵ギルド経由じゃないのかい?」


「其方には後ほど此方から手配を掛けますが、時間が惜しいので直接伺いました」


「ほう……じゃあ早速行くとしようか」


「……何もお聞きにならないので?」


「あの方からの依頼なのだろう?断るつもりは無いしそれで充分だ」


「では、此方へ……」


「リック、また今度な。エル、行くぞ」


「ああ、また使い勝手を報告してくれよ。エル、またね」


『ケロロ!』


エルは俺の頭の上に飛び乗った。そして案内されるまま馬車に乗り込みドミューゲル中央聖教会へと走って行く。


「今回も聖女関連かい?」


「……いえ、それとは別件となります」


「ほう……アルザレス枢機卿から聖女関連以外の仕事とは珍しいな……となると、この間伺った時に随分と厳重に警備されてたがその件でか?」


「……流石はジャスティン殿ですな、察しが早くて助かります。詳しくは枢機卿からお聞き下さい」


「ああ、そうするとしよう」


やはりあの警備体制は尋常ではなかった……あの時は何も言われなかったのでこちらからも聞かずに居たが、恐らくあの時とは事情が変わったという事かな……。


『ケロロ……ケロケロ』


「ああ、そうだな……三人くらいか?」


「どうやら嗅ぎつけられてしまった様ですね……」


「どうする?俺達でやるか?それとも向こうに居る連中に任せるか?」


「!!……ご存知でしたか?」


「正直に言うと俺は何となくしか分かってなかったが、エルがその者達の気配を完全に捉えてたんだ。まあ、敵意も無いしギルドに報告した頃からだから教会の者達かも、とね……なら恐らく問題無いと判断してた」


「そうでしたか……申し訳御座いませんでした。ジャスティン殿は枢機卿より教会からの保護対象となりましたので警備を着けておりました」


「保護対象??俺が?」


「はい、ジャスティン殿はかの精霊竜の加護を受け、更に精霊蛙と契約までされたのですから」


「ん?精霊竜の加護??」


「精霊竜から認められたという事はそういう事で御座います」


『ケロロ!』


「そうなのか……知らなかったぜ……」


「しかし、隠形に長けた者達を付けておりましたが……精霊蛙殿に見破られたとは……いやはや感服致しました」


『ケロケロ!!』


「精霊蛙の目は誤魔化せないとさ」


「なるほど……では隠し立てしても仕方ありませんな。此方から正式に手配をして警備をお付けします」


「オイオイ……警備なんてやめてくれよ。俺は自由でいたいんだ」


「そういう訳にも行きませぬ……とりあえずその件は枢機卿の御判断を仰いでからに致しましょう。アレは此方で処理します」


何か面倒な事になったな……俺はしかめっ面をしながら馬車に乗っていると警備の者達が三人程の尾行者に向かって行った。俺たちの乗る馬車は止まらずにドミューゲル中央聖教会まで走って行った。その後は何も無く教会に到着し、そのままアルザレス枢機卿の執務室まで連れて行かれた。


「枢機卿、ジャスティン殿をお連れ致しました」


「うむ、入りたまえ」


クレスにより結界が解かれ、執務室の扉を開けると警備が4人おり、その奥の何やら沢山の資料が置かれた机で書類を見ていたアルザレス枢機卿がこちらを見る。


「やあ、ジャスティン。急に済まなかったね」


「いえ、枢機卿の御依頼なら断わる理由はありませんから。して、御要件は?」


「話が早くて助かる。実はちょっとしたトラブルでね……現在西方教会と揉めている。そこで君には西方教会に軟禁されているミリアと言う聖魔法師を助けてもらいたい」


西方教会とは中央聖教会と同じくアルザス聖教の教会であるが、かなり原理主義に傾倒した考えを持つ一派で『西教派』と呼ばれている連中の総本山だ。彼らはアルザス聖教こそが中心となり国を動かすべきと考えており、それに与する貴族も少数派ではあるが存在する。

そして聖魔法師とは聖女とは別の系統……つまり戦闘に特化した上級魔法の使い手であり、現在教会の聖魔法師は20名を下回る数のはずである。聖魔法師となるにはかなりの魔法力の資質と魔法を使いこなす研鑽が必要であり、聖魔法師と認められるのはかなりの難関であると聞き及んでいる。本来ならば『裏聖女』であるメルティーもココに分類される能力者なのだが、彼女が教会の魔女狩りの対象者であった【黒紫の悪魔】魔女ナミレーヌであったという特殊な事情とその負の魔力の為に聖魔法師としては登録出来ない(登録の際に祝福を受けるのだが魔女は祝福が受けられない)為に『裏聖女』として動かしているのだ。つまり軟禁されているミリアという聖魔法師はメルティー並の実力者であると言う事を意味していた。


「聖魔法師……それ程の実力者が軟禁されていると言うとかなり厄介な仕事ですね……」


「その通りだ。本来ならばメルティーを行かせて処理するべきなのだが……彼女の存在は西方教会の連中は関知していない。『裏聖女』の存在を知られるのは不味いから彼女を動かすことは出来ないんだ。かと言って他の聖魔法師を動かすとなると完全に西方教会と袂を分かつという事にもなりかねん。何せ聖魔法師の中にも『西教派』は居るのだからな。となると教会とは全く関わりの無い君に動いてもらうのが一番だと考えたのだ」


「なるほど……しかしそうなると軟禁されている状況から、相手方に聖魔法師が居ると考えられますね……しかも複数ですかね」


「うむ、その懸念はある。そこでだが君ともう一人動いてもらう者を呼び寄せている。その者と共闘して貰いたい」


「共闘……ですか?」


「そうだ。その者もかなりの実力者でね……そうそう、君も知っている者だよ」


すると扉がノックされ声が聞こえてきた。


「枢機卿、お連れ致しました……」


「どうやら来た様だね。入りたまえ」


扉が開いたその先に現れた男……確かに見覚えのある男だ……しかもかなり……いや、とんでもない実力者である。


「……ほう……妙な所でお会いしましたね。ジャスティン“ギミックウォーリアー”アークライト殿」


「……全くだな……“ヘルギロチン”ファラ=デレクトール」


相変わらず隙の無い動きで此方までやって来るファラ。暗殺ギルド屈指の暗殺者である『地獄の断頭台』“ヘルギロチン“ことファラ=デレクトール……彼とは前回『闇聖女』の仕事で出会っていた。あのメルティーの古代禁呪の【蝕魔法】である【カルバドス】から魔力を喰われながらも逃げ切った男だ。ファラは俺の頭の上に居るエルを凝視していた。エルはファラを見ていた様だがあまり興味は無さそうに感じた。


「しばらく会わなかった内に魔物をテイムなさってたのですか?」


『ケロ!!ケロケロ!!』


「……そこら辺の魔物風情と一緒にするなとさ」


すると会話を遮るようにアルザレス枢機卿が話し出す。


「良く来た、ファラ=デレクトール。今回は急な呼び出しに応えてくれて感謝するよ」


「お久しぶりです枢機卿……我々はアルザレス枢機卿の御依頼とあれば何時でも駆けつけますよ」


「うむ、報告書は読んでくれたかな?」


「ええ、全て枢機卿の仰る通りに動きますのでご安心を」


「では、ジャスティンと共に聖魔法師ミリアの救出に向かって欲しい。立ちはだかる者は全て 排除して構わない。ジャスティンも良いな?」


「了解しました」


「ジャスティンはこの資料は道すがら読んで確認をしてくれ。まあ、君らに言うのも何だが……くれぐれも気を付けてくれ」


「かしこまりました……では行くとしようか?ジャスティン殿」


「ああ、案内は頼むとするかな」


「お任せを……ではこれ似て失礼します枢機卿」


「では、行って来ます」


俺とファラは執務室を出るとクレスに案内され馬車の方まで連れて行かれた。すると『裏聖女』との仕事で使う馬車が置いてあった。って事は……。


『ヒヒーン!!』


「おう、やっぱりお前か!元気そうだな!」


前の仕事で宛てがわれた軍馬だった。コイツは本当に頭の良い奴で馬力も有るからな。俺が鼻先を撫でていると俺の頭の上から軍馬の頭の上にエルが飛び乗った。軍馬は特に気にする事も無く乗せ続けている。


「そう言えばその蛙……魔物にしては妙な魔力をしていますね」


「そうか?まあ、変わり者だからな。名前はエルだ」


『ケロケロ!!』


エルは奴が魔物と言った事と俺が変わり者と言った事に抗議してたが放っておく。先程枢機卿がファラとの話を遮ったのは精霊蛙である事を伏せたかったのだと理解したからだ。行先はファラが分かってる様なので馬車の運転は任せる。俺は資料を読みながらファラに色々と質問をした。

行先は西方教会であるプロメテウス西方教会でここの地下に聖魔法師ミリアが捕らえられている。その地下に行く隠し通路がいくつか有るらしく、その隠し通路を通って地下に潜入してミリアを助け出すと言う依頼である。それと『西教派』に属する聖魔法師三名の資料が添付されていた。

一人目は聖魔法師ガルム……光属性の結界魔法を得意とする聖魔法師で、この男がミリアの自由を奪っている可能性が高い。

二人目は聖魔法師リステーグ……光属性の攻撃魔法を得意とするバリバリの武闘派で、『魔女狩り』において名の知れた魔女を何人も殺して来たというかなりの実力者らしい。

三人目は聖魔法師アンノーン……光属性の治癒魔法を得意とする聖魔法師で、リステーグとコンビを組んで戦闘を補助している。彼女自身の光魔法による再生能力が高い。防御しながらリステーグにハブを掛け続け、ダメージを負えば回復する。攻撃専門であるリステーグの命綱である。

ここまでで分かる通り『西教派』の聖魔法師は全員が光属性である。アルザス聖教内の光属性の者は自分を神の下僕と考える者が多く、原理主義である『西教派』に属されやすいのだという。聖魔法師の中にも他の属性は勿論居るのだが、光属性であるこの三名は自分が別格であるという振る舞いをしているらしく他の聖魔法師からは毛嫌いされているらしい。中でもミリアは闇属性と火属性の“ダブル”なのだが、闇属性という事で何かにつけてミリアを貶める態度を取っていたのだという。


「……ったく……ガキかコイツら……」


「その意見には賛同します。全く聖魔法師ともあろう者が呆れますよ」


「まあ、かなり面倒な相手だが……」


「……まあ、私とジャスティン殿が居れば何とかなるのでは?」


「買いかぶり過ぎだ……アンノーンとリステーグのコンビはかなり凶悪だぞ。流石に二人同時に相手をしたら勝てるとは思えない」


「フフフ……という事は“二人同時”じゃ無ければどうにかなりますね?」


「……まあそうだな……だが簡単じゃ無さそうだ」


「確かに……さて、どうしたものですかねぇ……」


「うむ、それは俺が何とかするとして……ガルムの結界魔法がかなり厄介だろうからな……そっちをどうしたものかな……」


『ケロケロ!!ケロロ!』


「はぁ?お前が?」


「……??」


『ケロ!』


「……もしかして……その蛙と話してませんか?テイムすると魔物と話せるなんて聞いた事が有りませんが……」


『ケロケロ!!』


「コイツは特別でな……どうやらエルがガルムの結界魔法は何とかするとさ」


「……どうするのですか?」


「……それがな……見てのお楽しみだとさ……」


「……」


『ケロケロ!!』


エルは任せておけとばかりに胸を張ったが……大丈夫なのだろうか?まあ最悪、俺にも秘策も有るから何とかなるとは思うのだが……。


「しかしこの馬車は快適ですね。まるで下からの突き上げを感じ無い……不思議です」


「ああ、コレは俺の知り合いの錬金術士が作ってる特別製だからな。アンタも知ってるあの“聖女”との仕事で良く使ってる。この軍馬もかなり優秀で力も有るしな」


「確かに良い軍馬ですね。かなりスピードも出るしタフそうだ……馬車も含めてウチに欲しいくらいですよ」


褒められてるのを知ってか知らずか軍馬は気分良さげに走っている。

出発してから2週間ほどかけて西方教会の近くにある村までたどり着いた。その間裏道をひたすら走っていた為なのか西方教会からの襲撃なども特に無く、たまに現れる魔物を倒すだけであった。

その小さな村ロナーに到着したのは日が暮れようとする夕方であった。この2週間というもの馬車での寝泊まりだったので最後くらいは宿に泊まろうと立ち寄ったのだが、その宿屋に併設された食堂兼飲み屋の様な場所で食事を取ろうと入ると、奥の方に教会の神父らしき人物がいた。


『ケロケロ……』


俺の頭の上に擬態して乗っていたエルはその男がかなりの魔力の持ち主で闇属性であると教えてくれた。闇属性という事は『西教派』では無い……となるとひとつの可能性を秘めている。ソイツも俺たち……と言うよりファラの事に気がついた様だ。


「お前達は冒険者か?」


「……ああ、そうだが……何か?」


「ちょっと稼いで行かないか?」


「稼ぐ?……何をすりゃあ良いんだ?」


「俺を隣の街に連れて行くだけだ……仲間としてな」


「はあ?どういう……」


するとファラが会話をさえぎった。


「まて……詳しくは話さなくて良いですよ。報酬次第で承りましょう」


「おいおい……」


「それは有難い、報酬はコレでどうだ?」


その男が小さな袋を出した……俺は中を調べると金貨が2枚入っている。かなり高額である。


「それは半金、街に入れたら更に半金渡す」


「 話は決まりですね。乾杯でもしましょうか」


「……まあ、悪くねぇな……おい、コッチに酒だ!」


何か妙な展開になったがコレも悪くないかも知れないな。それから少し話をしてその男に着替えてもらい馬車の従者として街に入れる事にした。男と別れ宿の俺の部屋でファラと話す。


「これで良し……周囲には声は違う話しに聞こえる」


「ほう……変わった魔導具ですね……」


「馬車の錬金術士が作ったヤツさ。それであの男の事だが……」


「ええ、お気付きかと思いますが、あの者は間違いなく聖魔法師ですね」


「属性は闇属性だとエルは言ったから『西教派』では無いだろう」


『ケロケロ!』


「ほう……この蛙はかなり優秀ですね。闇属性は私も……同じ属性なので向こうもわかったと思います」


「ああ、なるほど。“同属共鳴”か……それで声をかけて来たのか。で、聖魔法師が来たという事は俺たちと同じ事をしようとやって来たと考えるのが自然だよなあ」


「ええ、恐らくはミリアを助けに来たのでしょうね。中々面白い展開になったじゃないですか」


「……奴に引っ掻き回して貰うって考えてるのか?それもかなりの博打だぞ?」


「どちらにせよ味方が多い事は悪い事ではありません。派手に暴れて貰いましょう。我々はその隙にミリアを救出すれば問題無しですから」


「最悪、野郎には囮で死んでもらっても良いってか?お主も悪よのう……」


「……ご存知の通り、私、暗殺ギルドなので……」


『ケロロ……』


「……今何と?」


「……遊んでないでちゃんと策を練ろとさ」


「クックック……中々真面目な蛙殿ですね。策と言っても彼に暴れてもらってる内に侵入するしかないですよ」


「出来ればリステーグとアンノーンの二人を引き付けて貰いたいぜ」


「そうですね……良い事を思い付きました……ゴニョニョ……」


「……ふむ、なるほど……それで良いだろう。上手く行くと良いがな」


そして翌朝、約束通り男を従者として馬車に乗せて隣街まで行く。


「何て乗り心地の良い馬車なんだ……」


「とある錬金術士謹製の馬車でね。貴族にも納めてるらしい。コレは依頼人からの借り物さ」


「なるほど……」


「所で貴方は教会の人間ですよね?例の噂知ってますか?」


「例の噂?」


「……ご存知ないので?……それで西方教会に行くんだとばかり……それなら構わないのですが……」


「……因みにそれってどんな噂ですか?」


「ああ、ギルドで小耳に挟んだんですが……何でも西方教会に高位の神父だかが幽閉されているらしいとか……それが処刑されるだとか……」


その瞬間その男の筋肉が膠着したのを俺は見逃さなかった。俺はファラに話しかける。


「ああ、あの与太話か?どうせあの野郎のいつものホラだろ」


「うむ……しかし彼は教会の依頼をかなり請けてますからね。光属性ですから西方教会も使いやすいのでしょう」


「まあ、そうだな……アイツ酒が入るとお喋りだからな!ハハハ!」


「そ、それで処刑とは??」


「……ああ、確か明日か明後日だよな?俺たち聞いたのが2週間チョイ前だし……」


「そうですね、確か二十日後に……とか言ってましたから。お綺麗な女性だそうですよ……お気の毒に……」


このダメ押しはかなり効いた様だ……手網を握った手が震えてるのが見える……チョロ過ぎないか?コイツ……。


そのまま俺たちは馬車で街に入った。冒険者として街に入ったのでやはり冒険者ギルドには顔を出した方が自然だろう……という事で俺たちは冒険者ギルドに向かう事にしたが、神父はそのまま俺たちと別れて行動する事にした様だ。


「これは残りの半金だ。確認してくれ」


俺は金を数えると神父に返事をした。


「確かに受け取った。俺たちはしばらくこの街に居る。アンタは金払いがいいからまた何かあれば言ってくれ。俺の名は『ドラン』だ」


「……そうだな、そういう時が来たらまた頼むとしようか……私の名はイズモだ」


「じゃあイズモ、コイツを渡しておこう……コレはあの馬車を造った錬金術士が製作してる『連絡札』だ。コイツを空に投げてくれればイズモの居る場所に向かう事が出来る。但し、この街に居る期間だけの限定品だ、街を出たら発動しなくなるから注意してくれよ」


「……良いのか?頼まないかもしれんのに……」


「ハハハ!こりゃあ冒険者としての勘ってヤツさ。アンタにはまた会いそうな気がするからよ!」


「そうか……なら遠慮なく。では……」


そのまま『イズモ』は街中に消えていった。


「宜しかったので?あの様な高価なものを与えても」


「ああ、折角囮になってくれるんだ。あの位は問題無いさ」


俺たちはイズモに一芝居打って襲撃を急かしたのである。

その後冒険者ギルドに入り、依頼を探すフリをしながら冒険者達の噂話や酔ってる冒険者に酒を奢り情報を集めて行く。

冒険者達の話をまとめると……現在プロメテウス西方教会は厳重な警備下に置かれており、アリの子一匹入る隙もない状態らしい。

ファラと教会の側まで行ったがかなり警備の人数が多く、しかも強固な結界が張られている様子である。


「あの結界はかなり厄介ですね……中から解かないと直ぐに警備の者達に気付かれますね」


『ケロケロ!』


「オレがやるってさ」


「大丈夫なのですか?」


「まあ、俺もコイツもこう言うの得意だからな。夜にまた来よう。エル、頼んだぞ」


『ケロロ!』


そう鳴くとエルは姿をスっと消して教会に向かって行った。恐らく精霊魔法で何とかするのだろう。


「しかし優秀な魔物をテイムしましたね?」


「ああ、ホントに偶然何だがな……頭も良いからかなり助かる。それじゃあ夜……零時にまた来るとしよう」


「分かりました。では私は行く所が有りますので……」


「ああ、じゃあな」


ファラはそのまま何処かに行ってしまった。恐らくだがこの街の暗殺者ギルドに向かったのだと思う。俺はジタバタしても仕方無いので軍馬と馬車を置いてある冒険者ギルドの方に向かう。途中にあった小さい食堂で食事を済ませると市場で買い物をしてから馬車に向かうと軍馬が遅いとばかりに嘶いた。

俺は軍馬の身体をブラッシングしてやり市場で買ったフルーツやらを軍馬に与えた。


「コレでも食べて機嫌を直せよ。しばらくはここで待機だからな」


フルーツを貰ってご機嫌が直った軍馬は分かったとばかりに嘶いた。俺は馬車の横で煙管を取り出して煙草を吹かした。紫色の煙を吐きながら色々と考える。

あの教会の結界さえ解いてしまえばイズモも入りやすいだろう。その後は思い切り暴れてもらいその隙に救出すれば任務達成だ。まあ、本来ならイズモがどうなろうと関係ないのだが……ミリアはそうはいかないだろうな……そうなった場合の事も考えに入れておく。

俺は馬車の中に入って仮眠をとる事にした。


仮眠後、食事を作りながら過ごしているとイズモに渡した『連絡札』が西方教会に向かって動き出したのを確認する……思っていたよりも早い時間だ。まあ、あの結界を簡単には破れないだろうから飯を食ってからゆっくりと向かう事にする。


そして零時……あの場所に向かうと既にファラが待っていた。


「随分と早いな」


「イズモが動き出した様なので早目に来ていました」


「なるほど……じゃあそろそろ開けてもらおうか」


俺はエルにしか聴こえない犬笛……ならぬ蛙笛で合図を出した。すると結界の一部に穴が空いて人が入れる様になっている。警備の連中は全く気付居ていない様だ。


「ほう……見事な腕前ですね」


「とりあえずこれを被ってくれ」


俺は姿を消すマントをファラに渡してそのまま西方教会に潜入する。

少し遅れてイズモがその穴を抜けて西方教会に入り込んだ。これで準備万端である。


「良くやったな、エル」


『ケロケロ!』


こんな事は朝飯前と言わんばかりである。俺は市場で買った干し芋をエルに差し出すとパクッと食いついて満足そうに食べていた。エルは甘い物好きなのだ。


「……蛙って干し芋を食べるんですね……知りませんでした」


「エルは甘い物全般が好物だからな」


そんな話をしていると教会の裏口付近で騒ぎが起こった。どうやらイズモが裏口をぶっ壊したらしい……見事な囮っぷりである。


「アイツやるねぇ……」


「優秀な囮ですね……」


『ケロロ!!』


俺たちはこの隙にエルが舌で鍵穴を開けて警備が居なくなった正面横の勝手口からまんまと中に潜入した。

中の案内はファラにお任せだ。俺も頭の中に入れてるがファラは罠を見破るのが上手いので着いていけば問題無しなのだ。


「どうやらここから結界が張られています……かなり強固な結界ですね……」


『ケロケロ!!ケロ!』


するとエルは身体を虹色にすると、その頑強な結界の中にすんなりと入り込んでしまった……今のは精霊魔法の一種なのか??するとそのままその結界を内側から破壊してしまう。


「コレは!?……まさかこんなに簡単にこの結界を破るとは……」


「さあ行くぞ、鬼の居ぬ間にミリアを助け出す」


そのまま先の部屋に進むと扉がある部屋に到着する。そしてその扉もエルは簡単に開けてしまった。

するとその部屋の中には座禅を組み空中に浮いている男がおり、その奥に倒れている女性が居る……アレがミリアなのか?


「……この部屋まで侵入して来るとは……一体何者です?」


「まあ名乗らんがその女を貰い受けに来たとだけ言っておくよ」


すると座禅の男……恐らくガルムであろうその者が笑いながら閉じていた目を開いた。


「中々面白い事を言いますね……この聖魔法師ガルムからその女を奪い取ると?やれるものなら試してみるが良い!」


するとエルはまたあの虹色に輝きそのまますんなりとミリアの所に行ってしまった。エルはミリアに回復魔法を施している。それに驚いたのはガルムだ。


「なっ!?ば、馬鹿な!!」


驚くガルムにファラは長刀で斬りつけた!しかしガルムの防御結界に阻まれる。


「ふん、その程度の攻撃で私に傷一つ負わせられぬわ!」


「ほう……流石は聖魔法師……ならば本気を出さざるおえませんね……『解呪……逆刃』」


ファラは長刀を左手の人差し指と中指二本でなぞる様にするとその先から刃の黒色が紅に染まり、刃の向きが逆になって行く。そして全ての刃が逆になるとその刀を長い鞘の先端に取り付けた……まるで大きな鎌の様に……そしてその紅鎌は途轍も無い魔力を発し始める。


「さて……首を狩るとしましょうか……この『紅の悪夢(ディープレッドナイトメア)』でね……」


「馬鹿め……いくら魔力を上げようともこの結界は簡単に壊せぬわ!!」


座禅を組んだまま浮き上がったガルムの周り更に頑強な結界が張られる。


「之こそ『極聖陣』この攻防一体の結界を破ってみよ!」


『ケロロ!ケロ!』


エルの見立てではどうやらあの結界は攻撃を反射させる力がある様だ。


「あの結界攻撃を反射させるらしいぜ」


「ほう……それは厄介ですね……」


すると俺のセリフにガルムが驚いている。


「な……何故そのような事が解るのだ??」


「そりゃぁ……ウチのエルがそう言ってるからだよ」


その台詞と同時にジャンプしたエルはガルムの結界の真上に乗って光を発する。すると結界がまるで氷を溶かすように無くなって行く。


「こ、これは??ば、馬鹿な……き、極聖陣が……」


その瞬間を見逃さずファラの紅鎌がガルムの首を刎ねる……そして結界が完全に消え失せた。

俺はミリアと思しき女の元に向かった。


「お前はミリアか?」


「え……ええ……あなた方は……?」


「黒の枢機卿に依頼された者だ、と言えば分かるか?」


「ア、アルザレス様の……助かりました……しかしまだあの二人が……」


「それなら多分イズモとか言う奴が相手してると思うぜ」


「イ、イズモ??何故彼が??」


「さあな……アンタを助けに来たんじゃないか?」


「イズモと言えとあの二人相手は危険です……イズモを助けに……くっ……」


「その身体じゃ無理だ。諦めろ」


「そ、そう言う訳には……イズモを死なせる訳には行かないのです」


『ケロロ!ケロケロ!』


エルは俺の頭の上で俺に抗議している。どうやらエルはミリアの味方の様だ。


「俺達の仕事はミリアを助ける事だ。イズモを助けるのは仕事には入っていない」


「な、ならば……私が依頼致します。イズモを助けて下さい!」


俺はファラを見る。すると驚いた事にファラは了解の意を示したのだ……コイツ何を考えてんだ??


「オイオイマジかよ……」


「フフフ……噂に名高い聖魔法師最強の二人を倒す絶好のチャンスですからね。やらない手は有りませんね」


『ケロケロ!!』


「どうやら蛙殿も賛同されてる様ですよ」


「ったく……この戦闘狂共が……仕方ねぇな二対一じゃやるしかねぇか……」


「ありがとうございます!」


俺達はイズモの居る場所に向かう事になった。





「フハハハ!!最強たる我ら二人に貴様一人で勝てる訳があるまい!」


「う、五月蝿い……必ず倒してミリアを救ってみせる……」


「ウフフ……まるで姫を助けに来た主人公みたいねぇ~。ワタシも救って欲しいわぁ~」


アンノーンはイズモに妖しく微笑みながらそう話した。イズモは満身創痍であるが闘志は消えておらずまだ戦闘をし続ける構えだ。リステーグはアンノーンの言葉を聞いてやれやれと首を振りながら話しかける。


「それじゃあオレが悪の権化みたいじゃないか?」


「あら?焼いてるのかしら?可愛いわねぇ~ウフフ」


「誰が焼くか馬鹿者め……良いだろう悪の権化としてコイツを殺してやろう」


リステーグは持っていた光輝く大剣を振り上げた。


「終わりだイズモ……『聖光波』!!」


満身創痍のイズモにその暴力的な攻撃が届こうかというその瞬間、イズモの前にマントの男が立ちはだかりその攻撃を防いだ。イズモは驚いた様にその男を見る。


「おいイズモ、何かあったら俺を呼べと言ってただろう?」


「な……何故ドラン殿が此処に……」


「そりゃあ依頼を請けたからさ……ミリアからな」


「なっ、ミリアだって?」


するとファラに抱えられたミリアがこちらまでやって来た。それを見て驚くリステーグとアンノーン。


「ミリア!!」


「よ、良かった……イズモ……」


イズモはミリアの元に向かった。そしてファラはミリアをイズモに託して俺の方にやって来る。


「……ミリアをどうやって……ガルムが居たはずですが?」


「ああ……ガルムという方はこの方ですかねぇ?」


ファラは持っていたガルムの首をリステーグの方に投げつける。リステーグとアンノーンは驚いていたが、その後直ぐに怒りの表情をしながらこう言った。


「……貴様ら……よくもガルムを……」


「この暴挙、万死に値するわね……必ず神の裁きを受けさせてあげるわ」


「何が神の裁きだ……お前らが神のみもとで裁きを受けろよ。いや……お前らが行くのは地獄か?それでは神には会えぬな」


リステーグは俺に攻撃をしようと一気に間合いを詰めて来たが、そのリステーグにファラが紅鎌で襲いかかった。リステーグは慌てて大剣で紅鎌を弾き返す。


「貴方の御相手は私ですよ。さあ、貴方の力を見せて下さい」


「くっ、貴様……闇属性だな?低俗な闇属性風情が我に力を見せろだのと……本気など出さずとも殺してくれるわ!」


二人は物凄い速度で斬り合いを始める。まるで竜巻同士がバチバチとやり合ってる様だ。

そして俺はアンノーンの相手をする。コイツを倒さないとリステーグを倒す事は不可能だからだ。


「あら、貴方が相手なの?どうやら無魔力の様だけど……」


「ああ、気にしないでくれ。アンタの相手ぐらいなら俺で充分だからな」


「フン、無魔力で私の相手などと……私が支援魔法だけだと思ったら大間違いよ!」


そう言うとアンノーンはライトバレットを俺に撃って来たが、俺はアンノーンのライトバレットを黒刀で吸い込んでしまう。


「へぇ~、それが貴方の武器って訳ね?でもその程度では……」


「ファイヤーカノン!!」


俺の左腕の義手から魔法が火を吹いた。アンノーンに直撃したが、アンノーンの傷は直ぐに超再生していく。


「……驚いたわね……まさかそんな魔法を使えるなんて……油断したわ。でも、その程度の魔法では私を倒す事は出来ないわよ」


俺は黒刀を口に咥え、左肘を曲げて薬莢を取り出し腰のリボルバーに装填し、新しい薬莢を左腕に装填した。そして黒刀を右手に持ち直してからこう言った。


「ああ、知ってる」


今のファイヤーカノンはアンノーンの超再生が生物的なスキルなのか、それとも魔法なのかを念の為に計ったのだ。


『ケロケロ!!』


エルはアンノーンが魔法を使って超再生しているのを確認した。……そう、コレならあの取って置きが使えるのだ。俺は左腕をアンノーンに向けた。アンノーンはま魔法を撃ってくると勘違いして何も防御姿勢を取らなかった。俺がフェイクの為に薬莢を装填したからである。俺はそのまま左手の指を全て飛ばしてアンノーンに攻撃を開始する。アンノーンは俺の五本の爪が次々と襲い掛かり血飛沫を上げているが傷は瞬く間に治っている様だ。


「くっ、何度もしつこいわね!」


だが俺はそのまま『飛掌術』で左手を切り離しそのまま攻撃をさせ、それにアンノーンが気を取られてる隙にアンノーンの近くまで一気に接近した。


「なっ!?」


驚くアンノーン。

だがもうその時は俺の左腕からアンノーンの背中にとあるアーティファクトが突き立てられていた。


「ぐあああぁ!!!」


その単槍のアーティファクトは半径1メーター以内の魔力を完全に消滅させるアーティファクトである。そしてそれはアンノーンの背中に突き立てられ彼女の魔力を消滅させたのだ。アンノーンは痛みのあまり立つ事も出来ずに倒れ込む。魔力のある物はこのアーティファクトを使えないが、無魔力の俺は全く問題ない。実はこのアーティファクトは『裏聖女』のメルティーを封じる為の切り札なのだが……無尽蔵とも言える魔力を誇るアンノーンにも勿論効果的であるのだ。俺はアンノーンの心臓に黒刀を突き刺した。

こうしてアンノーンは完全に沈黙した。


「アンノーン!!」


ファラと斬り合いをしていたリステーグがアンノーンからの支援魔法が切れた事でアンノーンが倒された事に気がついた。ファラはかなりの数の傷を負わされていたが、紙一重で避けており致命傷になる様な傷は全く無かった。


「やれやれ……やっと本気を出せますね。『シャドウウォーク』」


ファラは影に隠れて一気に間合いを詰めリステーグに襲いかかる。リステーグは傷を負い見る見る内に動きにキレが無くなっていく……アンノーンの支援魔法が無いので傷も癒えず、掛けられていた身体機能上昇の魔法も切れていたからである。


「くっ……こんな馬鹿な……」


「貴方は勘違いをしています。貴方の強さはアンノーンが居てこそ……単体での貴方は私よりも遥かに格下ですよ」


「だ、黙れ!!貴様ら下賎の者が我に勝てる訳が無い!!」


そう言うとリステーグは自らの魔力を限界まで高め、大剣に込めて撃とうとした。


「遅い」


ファラはそう言うと自分の影に紅鎌を突き刺した。するとリステーグの影から紅鎌の先が飛び出してリステーグの胸元に深く突き刺さった。


「ぐふぉぉぉ……こ、こんな……馬鹿な……」


そしてファラは自分の影に素早く入り、リステーグの影から飛び出して悠々とリステーグの首を紅鎌で刎ねたのである。


「……終わったな。しかしリステーグの奴をいとも簡単に……やはりアンタは強いな」


「フッ、そう言う貴方もあの不死身のアンノーンを簡単に倒していたでは有りませんか?」


エルに治療を受けていたイズモがミリアと共に此方にやってきた。


「まさか……この二人を倒すとは……信じられん……」


「流石はアルザレス様の手の者……と言うべきなのでしょうね。本当に助かりました」


「礼は良いさ。君は依頼人だからね」


「依頼人??」


「イズモ、君を助ける為にミリアは依頼人として俺達に仕事を頼んだのさ」


「なっ、何故そんな事を……」


「貴方こそどうして助けに来たのかしら?」


「それは……」


「二人とも……何か盛り上がって所を悪いがそろそろ逃げるぞ。他の奴らが来ると厄介だ」


『ケロロ!』


「ん?蛙殿は何と?」


「痴話喧嘩は戻ってからやれとさ。さぁ行くぞ」


すると二人は顔を真っ赤にしながらバツの悪そうな顔で返事をした。

そして俺達は西方教会から逃げ出して、教会本部のアルザレス枢機卿の元へと戻ったのである。





四人と一匹が居なくなったその後直ぐ……


死んでいるアンノーンの胸に突如として赤い魔方陣が輝いて全ての傷が超再生して行く……そしてアンノーンは再び息を吹き返した。


「はぁはぁ……し、死ぬかと……お、思ったじゃないの……」


こうして蘇ったアンノーン。彼女は保険として心停止した後で発動する時限魔法を掛けていたのだ。

彼女は周りを見回していると、そこには首の無いリステーグの屍が残されていた。


「あ……危なかったわね……流石の私も首を切られていたら復活出来なかったわ……」


そしてリステーグの亡骸を見ながら話し出す。


「……リステーグ……この役立たずめ……」


アンノーンは立ち上がりリステーグの亡骸まで行くとその亡骸を蹴り始める。


「私が!……どれだけ!……お前に!……支援したと!……」


何度も蹴りまくり気が済んだのか亡骸を蹴るのをやめたアンノーンは暫く考えるとそのまま急ぎその場を立ち去る。

と言うのもガルムとリステーグの二人とこの西方教会でやりたい放題やっていたので一人で残るのは悪手と考えたのだ。


「とにかくここを離れて別の場所へ……血を流し過ぎたわ……」


そしてアンノーンは西方教会より立ち去り、別の居場所を探しに向かう。


「……確か、奴らはアルザレス枢機卿の名前を出していたわ……という事は聖魔法師としてはもう復帰出来そうに無いわね。ならば教会とは縁を切って何処か他国に向かおうかしら?それにしてもあの二人……出来ればもう二度と会いたくないわね。あんな化け物が二人も来るなんて……どれだけ命があっても足りないわよ!」


と吐き捨てる様に言うアンノーン 。


「他国に行くとしてもその前に何か傀儡を探さないと……はぁ……リステーグやガルム程の傀儡は中々見つからないわよね……あ~全く……ブツブツ……」


そう言いながらアンノーンは闇へと消えて行ったのである。

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ギミックウォーリアー!隻腕の傭兵は魔改造の義手で敵を駆逐する。 鬼戸アキラ @yamihoppy0305

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