野菜エンジン

@ramia294

  野菜エンジン

 今日は、彼女と初デート。

 山が、色づく綺麗な景色。

 ふたりで、ウキウキ、ドライブデート。


 僕の可愛い優しい彼女。

 ナンバーワンのお気に入り。

 お気に入りのナンバーツーは、僕の愛車のオンボロ車。

 もひとつ、おまけにナンバースリー。

 おうちの庭の家庭菜園。

 いつも野菜を作りすぎ。


 僕の相棒、オンボロ車。

 山の上りは、たいへんそう。

 苦しむエンジン。

 青息吐息。

 それでも、僕のお気に入り。

 僕のクルマは、頑張ります。

 その日に、とうとう限界が。

 山の頂上到着直後、プスンとエンジン、 止まります。


 それでも彼女は、気にせずに。

 ふたりで、クルマを押しました。

 僕の愛車のオンボロ車。

 彼女は、とても気に入って。

 次も、ふたりでドライブしよう。

 もちろん、このオンボロ車で、出掛けましょう。

 ふたりと一台、遊びに行こう。


 翌日、修理の依頼の電話。

 何とか助けてもらえませんか?

 ディーラーには断られ、修理屋さんにも断られ、僕は途方にくれました。

 どうやら、オンボロ過ぎるかな?

 僕は、自分でエンジンを作る事に決めました。


 ところで、ところが、実は、僕。

 みんなに自慢の機械おんち。

 機械の事は、さっぱりです。

 とにかく、中を覗いてみましょう。

 ボンネット。

 はね上げました。


 エンジンルームは、油がたくさん。

 あちこち、跳んで汚れています。

 これは、僕と、オンボロ車。 

 お肉の食べ過ぎ、油の取りすぎ。

 身体に、あまりよくありません。


 僕の可愛いオンボロ車。

 若く見えても、お年寄り。

 脂肪が多いお食事は、身体にあまり良くありません。

 僕と可愛いオンボロ車。

 お食事、常にバランスを。

 お野菜たくさん食べましょう。

 

 そこで、僕は考えました。


 野菜で、動くオンボロ車。


 僕の造った野菜エンジン。

 クルマの寿命を伸ばします。

 あなたの愛するクルマの寿命。

 野菜の力で、伸ばしましょう。


 寒い冬には、白菜を。

 燃料タンクに取り込んで。

 冬のデートはスキー場。

 スキー場までひと走り。

 燃費に自信。

 白菜エンジン。

 スキーツアーの往復は、白菜ひとつでお釣りが来ます。


 陽射し優しい春の日は、キャベツが出番を待っています。

 季節とご一緒、僕たちデート。

 桜前線、追いかけます。

 燃費に、自信のキャベツエンジン。

 僕のクルマは、得意気です。


 眩しい、眩しい夏の日は、トマトが真っ赤に染まります。

 海の恋しい僕たちは、ビーチをたくさん巡ります。


 真夏は、きらめく海でのデート。

 眩しい太陽。

 眩しい波。

 眩しい水着。

 僕の彼女は、人魚姫?

 僕のクルマも元気いっぱい。

 真夏の海岸、光る風。

 スピード違反にご注意を。

 フェラーリだって、置き去りに。

 ポルシェだって、置き去りに。

 スピード自慢のトマトエンジン。


 秋は大人の季節です。

 大根なんて、いかがです?

 煮ても焼いてもおろしても、とってもおいしい大根を、燃料タンクに入れたなら、大人のドライブどうですか?

 山の恥じらうこの季節。

 紅葉狩りへと出かけましょう。

 彼女の頬も色づいて。

 重なるふたりの影法師。


 後部座席の大根二本。

 紅葉を観ながら、日本縦断。


 僕の造った野菜エンジン。

 とっても評判、良いようです。

 大きな、大きなクルマの会社。

 我が社に、欲しいと頼みに来ました。

 僕の造った野菜エンジン。

 どなたもどうぞお使いください。

 とっても優しい野菜エンジン。 

 環境問題、解決です。

 エネルギー問題、解決です。


 みなさん、いちどお試しください。

 僕の造った野菜エンジン


 

 持続可能な、エネルギー。

 持続可能な僕の恋。


 オンボロ車の、隣のシート。

 ニコニコ笑顔の僕の彼女。

 僕の可愛いオンボロ車。

 今日からふたりのオンボロ車。


 次のデートは、ふたりの未来。

 時間旅行に出発しよう。


         終わり


 


   

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