第14話 お茶会を終えて
お茶会はお開きになった。
来た時は私一人だったけど、帰りはロゼ様と一緒の馬車に乗ることとなった。ロゼ様と一緒に帰れるのは楽しみ。
護衛兼御者は古参の騎士カルディオ様がしてくれる。とても安心だ。
アンジェリーナ様が今回のお茶会参加者に一人ずつ挨拶をしている。挨拶を終えた参加者は馬車に乗って帰路に着く。
お茶会が終わってから、私にも挨拶をする参加者が何人かいた。
今回のお茶会に招待されたのは私を除く全員が下級貴族の出身だった。一応、伯爵の娘である私にも気をつかったのだと思う。アンジェリーナ様に挨拶をするのは当然のことだけどね。
最後は私たちの番だ。
アンジェリーナ様がロゼ様と私の元に来た。ちょっと緊張する。
「フレイヤ様、ロゼ様、改めまして本日はお茶会に参加していただき、感謝申し上げますわ。是非、これからも私と仲良くしてください」
「私なんかで良ければ……」
ロゼ様が元気のなさそうな声で言うと、アンジェリーナ様が手招きをして耳打ちをする。何を話してるんだろう?
アンジェリーナ様と内緒話ができるなんて羨ましいとか思ってない。
話が終わると、ロゼ様の表情がとても明るくなった。
「フレイヤ様、先に馬車で待ってますね」
と言って、先に馬車へ乗り込む。
「フレイヤ様、ロゼ様には先に馬車で待っていただきたいと私が言いましたの」
「そうだったんですね。てっきり放って置かれるのかと思いました」
私の冗談を聞くと、アンジェリーナ様は優しげに笑う。
すると、アンジェリーナ様は一気に真面目な表情に変わる。
「カロンから聞きましたわ。フレイヤ様は本当に未来が見えるのですか?」
「え? あ、カロン様に話したことですね」
急にその話を振られたので、慌ててしまう。大切なお話だ。ちゃんと答えないといけない。
一拍置いて、言葉を考えて発言する。
「…… 断片的にですが。いつも見えるというわけではありません」
私は前世で知り得たことを覚えているだけなので、本物の未来予知はできない。アンジェリーナ様に突っ込まれ続けると、直ぐにぼろが出ちゃいそう。
「では、どうしてカロンに私にまで教えても良いと許可したのかしら? フレイヤ様の力は信頼できる人にしか教えてはならないはずですよ」
アンジェリーナ様は探るような表情で私を見ている。怪しいのは当然だ。私は正直に答える。
「信頼できる人だと思ったからです」
「会ったこともないのに?」
「はい、会ったこともないのにです」
一瞬きょとんとすると、腹を抱えて笑い出した。
「アハッハハハ、面白いわ。フレイヤ様は変わってますわ」
どうしてか分からないけど、なぜかアンジェリーナ様が笑っている。
仮にいくら怪しまれたとしても、私は同じようにしか答えることができない。アンジェリーナ様を信じるのは当然のことだから。
アンジェリーナ様が笑い終わると、私もアンジェリーナ様に訊きたいことがあるので質問する。
「あの、アンジェリーナ様」
「何かしら?」
「私も一つ訊きたいことがあるですが、よろしいですか?」
「ええ、もちろんです」
「もしですが、上級貴族の爵位を次ぐ予定の者がアンジェリーナ様に仕えたいと言ってきたら、アンジェリーナ様はどうされますか?」
「それはどういう……」
私の真剣な表情を見て、アンジェリーナ様が途中で言葉を切る。
アンジェリーナ様の答え次第で私のこれからの方針を決めれると思う。
騎士になるとお父様に言った時、爵位の話もされたけど、私の中の明確な答えは言えなかった。騎士になりたいとしか言えていない。
アンジェリーナ様の言葉を聞いてから決めたいと思う。
アンジェリーナ様は一分ほど考えてから口を開く。
「私に有能であることを認めさせれば、私の家臣に致しましょう。もし、それで発生する弊害があるのならば、このアンジェリーナとエイルハイド公爵家の名において、その家臣の一族ごと保護致します。この答えでどうでしょうか?」
私の方針は決まった。後はどうお父様とお母様に言うかだけ。
真剣に答えを返してくれたアンジェリーナ様に感謝する。
「ありがとうございます」
「お役に立てて良かった。フレイヤ様、私はこれからあなたと仲良くしたいわ」
「え、はい」
嬉しいです。そんなことを言っていただけるなんて。
表情を緩めないように我慢する。
「私のことはアンジェと呼んでください。親しくなった友人にはそう呼んでもらいたいの」
「ですが」
「アンジェと呼んでください」
「分かりました。アンジェ様」
「分かれば良いのです。それと文通をしましょう。今日の感謝の言葉なんて不要よ。私から書くわ。フレイヤ様ともっと仲良くなりたいの。次、会うのは
「はい。とても楽しみにしています」
ドレスの裾を摘まんで挨拶して、私は馬車に乗った。
アンジェ様と別れるのは辛い。せっかく会えたのに。文通の約束をしたから、手紙を一杯書きたい。私のことを沢山知ってもらおう!
馬車が走り出すと、窓からアンジェ様のお姿が見えなくなるまで私は手を振り続けた。
私に釣られてロゼ様も小刻みに手を振っていたので、思わずクスッと笑ってしまった。
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