第53話 名を 呼ぶな!



「ぬ、ぬぅ......」


「......言いしぶる『理由』を、言いしぶってるのですね?」


「むぅ」


なるほど。これは、どうにも言いがたい『理由』らしい。

では、『攻める切り口ニーグさま』を変えるか。


「バスク動力長」


「お、おう」


「神殿コアを含む、この教会神殿の設備全てを設計されたのは、龍神ニーグさまと、バスク動力長と......

人族の『魔道技師マギ・マイスター』、シャイカ・K・ハーラーさんですね」


「あぁ、そうだ......シャイカの設計したモノは全て『美し』かった。

ドワーフのマイスター技術者達らとコンペしても『抜きん出て』いた」


「『森羅万象検索エブリシング・サーチ』、シャイカ・K・ハーラー」


ヴン


白髪・白髭のシワシワ御爺ちゃんの、胸像の立体ホログラムが映し出される。


多分『没年』の姿だよね。


「タイ教会神殿設計を開始時......いや、神殿コアを設計時の年齢で、映してくれ」


ジワーっと、白髪・白髭が茶色に変わり、シワも広がって行き......

四十歳位の黒縁・瓶底メガネを掛けた男性に変わる。


「......メガネを、外してくれ」


パッチとしたクリクリ二重で、タレ目で茶眼で、優しげな愛嬌ある微笑みを浮かべている。


「......ふむ。シャイカさんの系譜は......ほお。さすがですね。

王宮ロイヤル魔道技師マギ・マイスター長官ですか。

ケンダー・K・ハーラーさんですね」


「はい。王立魔道学園の理事長先生でも、あられます。

代々の魔道具特許もそうですが、御自身で発明された魔道具特許も、沢山お持ちで......

私も、弟子の一人です......まぁ......『質問の悪魔』で『イタズラ小僧』ですね......」


メルダさんは、『光が消えた目』をしながら、発言してくる。

......かなり、嫌そうだ。


......ケンダーさん、何をしてきたんですか?


「だろうな......ハーラーの家系は、一族郎党が好奇心旺盛でな、

『試して見たい』欲が、かなり旺盛なんだ......

また、物事を『徹底的に突き詰める』ヤツでなぁ......

に入りさいる『質問攻め』に、やられたヤツも多い......」


「......そうであったな......」


「さて。ニーグさまが『言い難い』ならば、当事者の一人のシャイカさんに、直接お尋ねしましょう」


「「「「はい?」」」」


「タケシよ、何を言い出すのだ?」


「私は、ヴォーグ様の依代よりしろを、寄進したのですよ」


「「「「「あ!」」」」」


「「ちょっと待った!」」


「どうしました?」


「早まるでない!物事が進まなくなるぞ!」

「そうだ!一言で済む事を、ヤツが納得するまで『定義』出来ないと、次の工程に行けないんだ!

呼び出すのは、止めとけ!悪い事は言わん!」


「......すみません。実は私も『確実な定義』を突き詰めたい方向性の人間なので......

でも、そう言う人物向けの対策方法は、あります」


「なんじゃと!?」

「へぇ」


「現在、見習い勇者諸君の研修を、仮想現実バーチャル・リアリティで、進行中です。

......その仮想現実バーチャル・リアリティでは、一睡が『数年経過した如く』に、体感時間を『クロック・ダウン遅く』出来ます。

見習い勇者諸君は既に、もう数ヶ月分の修行を、経験しています」


バスクが猛を呼び出してから、一刻も経過していない。

で、既に数ヶ月分の修行とは......


「なんと!」

「なるほど......シャイカのヤツが、目覚めたとしても」


「はい。仮想現実バーチャル・リアリティに移行して頂き、情報の精霊と共に、好きなだけ考察して頂けます」


「......それならば......何とかなる......か?」バスクは、首をひねる。


「おまかせを。......で、ニーグさま。言い難い『理由』を、私が突き止めてしまって、宜しいですか?」


「......われが話すのでは無いのならば、『致し方ない』......であろう」


猛は、一つうなずく。


「シャイカさん、こんにちは」


呼びかけられたホログラム映像のシャイカさんの、まぶたがパチパチ動き出す。


『......ぬぉ?......ココ......は?』





○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○





『んで。何を聞きたいの?』


案外、甲高い声だな。


なんだか『かる』そうな人物像ヤツ......




(そうそう!ケンダー師匠質問の悪魔と、同じキンキン声!)


メルダさんから、強く嫌がる魂の叫びが、情報制限フィルターを乗り越えて、伝わって来る。


苦々しい顔をしている。


そんなにケンダー怨師おんし?が、嫌だったのか......



それは、さておき......


「はい。このクリスタル製の部品たちは、なんでしょう?」


神殿コアの台座の内部に、どこにも接続されていない、

内側に制御回路?が張り付いている、プロパンガスのボンベ位の筒がある。


筒の内側には......形状だけを見ると、

クリスタルと部品で作った『脳と心臓』の様な、『人間の臓器を模倣もほうしたっポイ』モノ達がある......


まさかコレは......


シャイカさんは、ニーグさまを見る。


『答えて良いよね。キミのダンナさん?は、もう『突き止めてる』見たいだけど』


ニーグさまは『全面降伏』とばかりに、『バンザイ降参』と右腕と尻尾を左側にあげる。


キミ絶対強者を、そこまで追い詰められる『存在絶対強者』が、存在したとはねぇ〜♪』


どこか嬉しそうだ......


それを見ているメルダさんは......苦々しさが増している。


このドSっポイ『嫌味イヤミな言い回し』も、よっぽど 怨師おんしに似ているんだろう。



共通作戦状況図COP』上の、八個も神殿コアを消す。


『人間の臓器を模倣もほうしたっポイ』モノ達を、人間の臓器の正確な位置に、当てはめて、立位で表示する。



女性か......

体格は、セルガさんに近いのかな?



ミレニアム千年前のゴーレムの部品なのだろうけど、『時代にそぐわない技術製品オーパーツ』だよなぁ)

(我々の様な『渡り人』の知識かも知れませんし)

(だよなぁ。まぁそれより、何故『封印』したのかな?)

(探りましょう)



「......厳重な『封印』がされています。無理に突破する意味は見いだせませんので、

今後の方針も議論の続きを、御願い致します」隼『執事』が、進言してくる。


『へぇー。『アノ封印』を、突破出来るの?』


「はい」


『良い判断だよー。こじ開けちゃうと、神殿コアが自爆しちゃうからね〜

......あ、ニーグさまが『この件を喋る』でも、自爆するからね〜』


「やはり。まぁ、『起爆阻止きばくそし』は、完了致しましたが」


『は』

「え」


シャイカさんは、ポカンとして。


ニーグさまは、驚く。

慌てて、自分のステータスを立ち上げている。


「コレは......術式に、『潜り込んで』居るのか」


「はい。『術式』に、『勘違い』させています。

ですので『起爆』しません」


『へぇー......なるほど、『封印』はそのままだね。

夫さんの『演算処理能力』て、すごいのだね!』

シャイカさんは、ワクテカな表情となる。


「で、『彼女』なのですが」


「!......性別も、分かるのか......」


「はい。典型的な、女性骨格ですし......」


「......もしかして、医学も?」メルダさんが、鋭く問うて来る。


「はい。地球での、医師免許は取得しています」


『スゴいね〜。何でもアリなんだね〜』

シャイカの甲高い、呑気な声が響く。


「......」


メルダさんは何か言いたげだったが......シャイカさんとは、口を聞きたくないのだろう。


「名は......アリー・W・トレアドール?」

猛は、この『クリスタル臓器』で森羅万象検索エブリシング・サーチにかけて、上がってきた名を読み上げる。


「え!?御祖母様おばあさま?」

ワードマンさんは自分の祖母アリーの名に驚き、顔を上げる。


「え?トレアドールの系譜で、伝説の『神官長』のおひとり、アリー様ですか!?」


「あ!」

「名は 呼ぶな!」

『名前を呼ぶことが......『封印解除』なんだな〜』


ブーン


神殿コアの台座が微妙に光出し、振動し始める。




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