第42話 フリーマン



(平和の日々に戻って、『絶望を感じる』とは?どう言うことですの?)

ヒソヒソ

セルガは、疑問をワードマンに聞く。


(誰も負かしてくれない......人族としての『強さの限界』を、突破とっぱさせてくれない『絶望』であるな)

ヒソヒソ


(負かしてくれない『絶望』ですか?)

ヒソヒソ


セルガは、ピンと来ない様だ。致し方ないが。


ワードマンは同じ武人として、更には人族では『敵無し』に強くなってしまった経験があったので、

タケシ殿の『絶望』に、共感を覚える。

『この程度で、我が人族最強だと?』と戸惑った覚えがある。

世には、いくらでも絶対強者が存在するのに。


なので、先程のタケシ殿との模擬戦は、力と技の限り以上に存分ぞんぶんに戦えて......嬉しかった。楽しかった。

思わず『成仏』仕掛けた。

が、大好きなタケシ殿への『使役』に、ワクワクしている自分がいる。

こんなに面白そうな事が起こりそうなのに、成仏していられぬは!



○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



「そんな絶望を感じているところに、『本当の、変身勇者ヒーロー』にならないか?』デスよ(苦笑)。

人間の限界を超えたい私にとって、どれほど『心から欲していた』『魅了的な誘惑』だと思いますか?

分かりますか?」


模擬戦を行うと、『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』の、『異常な『気』の深い練度』に気が付いた。


解脱もしていないのに、この練度は?

アンプ増幅器の様に、電力を『シンプルに、増させた』ような?


聞けば、神経伝達の微弱電流を増幅させて、パワードスーツの動きと、完全同期させるとか。


なるほど。増幅アンプ・ナノマシンか!

人間の限界突破に、応用出来るかも。


猛は、珍しく興奮していた。それ程『魂を売り渡しても良い』ほど、欲していた誘惑だったのだ。



○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



その日の内に、『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』の自宅と言う『研究室』に付いて行く。


人造超人マンメイド・スーパーマン製造計画』論文の原本を読む。

メモ書き、走り書き、アイディ・ノートを全て読む。


モルモット実験経過も、読む。


『スーパー素子・ナノマシン』摂取後の、経過観察カルテも全て読む。


そして『スーパー素子・ナノマシン』入りカプセルを、風邪薬でも飲むように、経口摂取けいこうせっしゅする。


ワクチン接種後の様な副反応が、数日続くとの事で、道場は暇してる親や、内弟子に任せて休んだ。


猛は、『スーパー素子・ナノマシン』の論文を呼んで、気功法の『内功』が、ナノマシンの体内拡散に向いていると理解りかいした。

気とナノマシンの親和性に、注目したのだ。


なので、『悪の錬金術師マッド・サイエンティストの身体に副反応が出た』とされる期間、ずっと『内功』をした。


確かにナノマシンが増えてゆくと、『異物感』が強い。

なのでナノマシンが体内のどこに存在するか、分かる。

腸からナノマシンが入り込んで来る時は、下腹部の『違和感』で、『重く』感じた。


早速『内功』を、始める。


小周天しょうしゅうてんから始まり、大周天だいしゅうてんを行う。


なるほど、気を巡らせた先に、ナノマシンは追随ついずいしてく。

そして、全身の細胞内に入り込んで行く。


すると巡り終わって、ナノマシンが身体に馴染なじむまで、一度も副反応らしき不快感は出なかった。


それを『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』に伝えると、『早く言え』とボヤいていた。


『出会う前で、どう伝えろと?』と反論すると、『それもそうか』と、苦笑していた。


悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』は、直ぐに気功法を習い始める。




○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



「そこから、『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』と二人三脚で、人造超人マンメイド・スーパーマンを育てて来ました」


【すっかり開祖とやらを、『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』と呼ぶのを気に入ったようじゃの】


「ははは。思い返せば彼は、『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』が、ピッタリなざまでしたから」


【......今は?彼は、存命ぞんめいなのか?】


「えーと。実は次の実験の『人体実験』を、自らしてまして。えーと、ワードマンさんの様な存在に?」


【ふむ?『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』が、天使にでも昇格したかの?】


「いいえ!天使だなんて、とんでもない! 『悪の錬金術師マッド・サイエンティスト』のままです。

まぁ......地球とコンタクト出来ましたら、呼びますよ」

(色々と、意見も聞きたいし......)



【なるほどの......現在の絶対強者になるまで、『紆余曲折うよきょくせつ』が、あったのじゃな】


「はい。まぁそれも、おいおい話しましょう......まるでヴォーグ神様に個人的に『懺悔ざんげ』させて頂いた様ですね。

心持ちがスッキリ致しました。ありがとうございます」


猛はヴォーグ神に、ほがらかに礼を言う。

注意された様に、頭は下げないが。


(タケシ様!ヴォーグ神様には、頭を下げて差し上げてくださいませ)

ヒソヒソ

セルガが慌てて、訂正してくる。


【かまわん】


「え?」


【タケシは、われの前でもだれの前でも『自由人フリーマン』でいよ。全て許す】


カラーン コローン


どこからか鐘?が鳴り、猛に『何か』が降りる。


「ありがとうございます」


スっとヴォーグ神に近寄ると、ヴォーグ神を優しく抱きしめる。


【!?○×▽うわ!】


猛はスっと離れ、深々とこうべを下げる。


「ありがとうございます」


【うん? あー! えー! ......かまわん!!

......ええい!してやられたは!

上手いこと我の『祝福』と言質げんちを取りおったタケシフリーマンには、かなわん!】


ヴォーグ神は、地団駄じだんだみながら、苦笑する。


わははははははは


皆で、大笑いが始まる。


【こんな、きかくが〜いな人族あるじは、はじめて】

【うれしー♪ あるじすきー♪】


すっかり目覚めたふたりは、猛が座っていたチェアで、寝起きの伸びをする。




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