第36話 ごちゃごちゃで、複雑怪奇で、面倒くさい。



【ほうほう、これが『オーマのマグロ』の、トロのにぎりか!】


これまた知識ちしきとしては知ってはいた。

が、少しのワサビとうま醤油しょうゆで食せば、トロのあまく感じる旨みにホロリとほどける酢飯すめしが、口の中でおどる。

たまらなく、美味うまい。


コトリ


白い磁器じきの小ぶりなボウルに、淡い緑のかゆが出される。


「次は、こちらをどうぞ」


【これは......オリーブかゆかの?】


「はい。森羅万象エブリシング検索より、オリーブの名産地めいさんち御生おうまれと知りました。

お口直しにひと皿だけ、御生誕地ごせいたんちの料理を御用意させて頂きました」


【ありがたい。頂こう】


ひとさじかゆをすくい、口に入れる。

良い塩梅あんばいのチーズの塩味えんみに、エクストラ・バージンオイルのオリーブの旨みが口に広がる。


【ほーう。良いな、なつかしき味覚みかくじゃ】


エンマ♪ たんとお食べ♪


ふと母様かかさまの、優しい声が、よみがえる。

何世紀も昔の事なのだが。


かかしゃまー♪


われ雪花せっかほどの頃、乳離れの時に母様かかさまの手にするさじで、かゆを食べさせて頂いた......


母様かかさま笑顔えがおともに、初めてのかゆは、うまかった。


ほろり


ヴォーグの目から、ひとすじなみだがこぼれる。


【......タケシ。感謝かんしゃする】


「はい」


かか慈悲じひあいうすれておったは......我は、初心しょしんもどらねばならぬの】


おそります」


たけしは深く、こうべを下げる。


ふっ


ヴォーグは、鼻で笑う。


【そんな威風堂々いふうどうどうな『おそり』は、初めてじゃ】


猛は『にやり』と、笑い返す。


「申し訳ありません」


胸を張る。


【もういわ!】


わははははははは


からりと皆で、笑い合う。


【さて、そろそろセルガと話を進めい。後はハヤブサと勝手にやるで、我らは放置ほうちせ......】

「ありがとうございます」


気味ぎみで、れいを言う。


ヴォーグは、苦笑う。


【だから、少しは恐れ要らぬ......】

「セルガさん。こちらにどうぞ〜」

「ヴォーグ様。コチラをどうぞ」

はやぶさは、たけしのヴォーグ神への『おちょくり』にかぶせて、メロン・クリームソーダを出す。


メロンのみどりと、丸く盛られたバニラアイスの白が、グラスにばえる。


【こ、これは! あの『めろんそうだ』か!】


猛然もうぜんとストローでい、さじでアイスを頬張ほおばる。


【んんんー♪ シュワシュワが、たまらぬ!】


絶妙ぜつみょうなタイミングで出されて、ヴォーグのボヤきはふうじられる。


「はぁ......」


セルガはたけし美食びしょくに、完全に『胃袋いぶくろつかまれた』ヴォーグ神に苦笑しながら猛にしたがい、オーバル型ハウスの中に入って行く。


【あはは】


天照大神は隣で一緒に、メロン・クリームソーダを味わいながら、ヴォーグ神のチョロさに苦笑いしている



はやぶさ、そろそろ小雨が来そうだろ?皆様を中に御案内してくれ。

出入口は解放しておいて、チェピー精霊達が自由に出来るように」



「アイサ」





○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



【ほほーう。次元拡張空間じげんかくちょうくうかんか!コレなら何人でも入れるのだな!】


ヴォーグ神は外観より、ずっと広い室内をキョロキョロ見渡す。


「さて、や〜っと、実務者協議じつむしゃきょうぎに入れますね」


「あはは」セルガは苦笑いするしか無い。


【タケシ。何か言っ......】


コトリ


はやぶさは、無言むごんで次の皿を出す。


【!......コレは......『もんぶらん』か!?】


すっ


新たなさじわたす。


【......うむ......『キャスターニャ』の風味が、絶妙ぜつみょうであるな】


グルメヴォーグ神め。

その内『宝石箱ほうせきばこや〜』とか、言い出しそう。


【ぶほっ】


ゴホッ!ゴボッホ!......グエッホ!......ガハッ!......ブォッホ!......


あ、いかん。最高神天照大神様とつながったままだった。

威厳いげん崩壊ほうかいしかねない、イケない咳込せきこみをしてる。

栗のムースが、鼻に入ったかな?


【ブホップ!】


じろり


最高神さまがツボりわらぎて、いた笑顔のままで、うらめしそうににらんで来る。


知らんがな!


「......始めましょう。現在の国内の情勢は、如何いかがでしょうか?」


「はい。魔獣や魔族による直接の被害は、日々増えています。

特に日が落ちてから明け方までは『魔獣まじゅう時刻じこく』とも呼ばれています。

大の大人でも出先で魔獣まじゅう時刻じこくに入ってしまえば、 帰宅きたくできずにまりを余儀無よぎなくされます」


はぁ


「この『行動制限こうどうせいげん』に、庶民しょみん経済活動けいざいかつどう大打撃だいだげきです」


セルガは一つ、ため息をつく。


「しかし王侯貴族おうこうきぞくを始めとした為政者達いせいしゃたちは、自分達の勢力争せいりょくあらそいを優先ゆうせんします......

庶民しょみんはその争いを巻き込まれ、はかない命をすりつぶされて行きます」


「...... 成る程...... では、現在王侯貴族の中で、主導権しゅどうけんにぎって居るのは誰でしょう?


「えーと...... 」

ちらりとワードマンさんをうかがう。


「これセルガ。実務じつむからはなれてひさしい私の持つ情報じょうほうは、かなりふるいぞ」


次に、龍神ニーグをうかがう。


「...... 我もじゃ。人族の役職にしばられるのは、御免ごめんじゃしの」


「...... つまり、ここには現状況を把握はあくしておられる方は、いない、と」


「そっ、そう言う件は副司祭ふくしさいメルダが得意とくいナノです。

情報じょうほうきんです!』と...... 独自の情報網じょうほうもうさえも、にぎってる様......ですは」


「...... ふむ...... メルダさんは、秘密ひみつを守れる方ですか?」


「はい! 教会で私の右腕です。勇者様召喚計画ゆうしゃしょうかんけいかくも、率先そっせんして手助けしてくれました」


「わかりました。では連絡を取りましょう...... 彼女への連絡方法は?」


「はい。魔法が使える神官位しんかいんい同士の間で使用出来る、魔法通信マギコールが御座います」


セルガさんが左手の甲を、自分の双丘たゆんにのせる。


たゆん


......あぁ、アームレストにもなるんだ......


「メルダへ、魔法通信マギコール起動」


彼女の手の平の上に、青白く細い光線で描かれた小さな魔法陣サークルが立ち上がり、歯車はぐるまの様に動き出す。


コロ~ン


小さなベルが鳴った様な、優しい音色の呼び出し音が、魔法陣から流れ出す。


『セルガ様! 良かった♪ 御無事ごぶじですか!』


可愛らしいコロコロとした印象の声が、慌てた様に返答して来る。


「ありがとう。無事です。周囲に誰か居りますか?」


『ちょうど自室に入る所です。人払ひとばらいをしますので、今少しお御待ちを』


魔法陣は、しばし無音となる。



○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○



コロ~ン



御待ち堂様おまちどうさまです。私一人になりました』


「ありがとう、メルダ。それでね、新たにおいでになった勇者様が、現在のヤーディンの情勢情報じょうせいじょうじょう御所望ごしょもうなのですは」


『うぇ?!......うけたまわりりました。


そうですね......


軍事力ぐんじりょく資金力しきんりょく権限けんげん好戦的こうせんてき専守防衛せんしゅぼうえいか・裏仕事うらしごとに強いか......


と言う様に、王侯貴族それぞれの『ステータス』が異なって居りまして、発生した案件に寄り『主導権しゅどうけん』がうつろいます......そして......』


おっと。すごい勢いで、無作為むさくいに情報がたれれ流しになりそうだ。要点をしぼるコントロールしないと。


「メルダさん、初めまして。えーと...... ニーグ様のすすめで、こちらでは『聖光剣ホーリー・ソードの勇者』と名乗ることになりました、本名を猛 円鐘たけし えんしょうと申します」


『...... 』


「...... あれ? メルダさん?」


実はこの時メルダの腰は、初めて聞くたけしの声にち、こしけていた。


(...... この声、や......ヤバい......(汗)


『...... あ、その、失礼致しました! 勇者様に突然のお声掛け頂いて......恐縮きょうしゅくです』

メルダは、なんとか誤魔化ごまかす。


「これは失礼しました。大丈夫ですか?」


『だ、大丈夫です』


「良かった。早速ですが、メルダさんに御願いがあります」


『喜んで』


「...... 御願いの内容を、確認しないのですか?」


『は?...... はぁ。拝命はいめいするだけですが?』


そうか。こっちは封建社会だっけ。上位の者に抗弁こうべんすれば断罪だんざいされかねないのだね。


「えとですね。セルガさんとの魔法通信マギコールに、私の方式の通信サウザン・ハンズませても良いですか?」


『どうぞどうぞ! 遠慮えんりょ無くどうぞ!』


「では...... 」


ヴォン


座る四人のセルガとたけしの間に、茶髪ちゃぱつ灰眼グレーの、神官服を着た可愛らしい美少女が現れる。

セルガさんと同年代くらいかな?

中肉中背ちゅうにくちゅうぜい女子高生JKにも見えるか。


ザザッ


立体映像りったいえいぞうは、少しれる。


現れた少女の灰眼グレーの目は驚愕きょうがく見開みひらかれ、視線は四方八方しほうはっぽうにせわしなくさまよい、口はパクパクと無意識むいしきな動きをり返す。


左隣に座るセルガに気が付いたのか、『ギギギギ』と油切あぶらきれたロボットの様な動きで、セルガの方を向く。


セルガと視線しせんを合わせるが、相変わらずメルダの口はパクパクと動くだけだった。


「め......メルダ。大丈夫ですの?」


『せ......セルガ様こそ!大丈夫ですか?こんなに濃厚のうこうな『聖魔素ホーリー・マナ』の中に居られて』


「え? そんなにいかしら?」


『濃いだけでは有りません! やはりこちらの勇者様の魔法式は、これまでにも見たことが無い程、複雑で緻密ちみつです!

やはり演算処理速度えんざんしょりそくども、凄まじく早いです!』


実は『テクノロジー格差かくさ』には、気が付いて居る。

最高神さまが、言う通りなのだろう。


ので本当はメルダの立体映像りったいえいぞうも実体同様に再現出来るのだが、

メルダとの通信情報量は『メルダ側の魔法式が破綻パンクしない最小限量』に制限して有る。


だからメルダの立体映像も、少し不安定だ。


「メルダさん」


『は、はいっ!』


「顔合わせは初めてに成りますね。色々と御指導下さい。私の質問に、ゆっくりお答えください」


お・も・て・な・し、をするホテルマンのような、優しい声音こわねで微笑む。


メルダの顔は、ボン! と真っ赤に上気する。


『ひゃい。滅相めっそうも無い! ごしどうにゃんちぇ...... 』

メルダの両手は、不審な動きを始める。


「では...... 先ずはこちらの政治形態せいじけいたいと言いますか、ヤーディン大国の『政治様式せいじようしき』を教えて下さい」


あえてメルダの羞恥しゅうちを無視して、質問を始める。

副司祭と言う立場なら、普段から職業倫理しょくぎょうりんりで自分の感情をコントロールして居るはず。


何より常にセルガさん上司の、天然行動のフォローに回って居るのだろうから。


『はっ!』


思った通り、メルダの表情は引き締まる。


『え〜......とぉ......』


が、彼女はしばし考えこんでしまう。


『...... 当国へ御新参ごしんざんの方には申し訳無いのですが......

千年ミレニアムの歴史を持つ当国の実情じつじょうはかなり複雑怪奇ふくざつかいき様相ようそうと言いますかー』


メルダが改めて考えると、約千年の歴史のなかでゴチャゴチャにこんがらがった『足の引っ張り合い』な政治形態を、どこからどう説明を始めて良いやら悩ましい。


助言を求めて、ちろりと守護天使ワードマン様や上司セルガや龍神ニーグ様に、順番に視線を向けるが、それぞれにスルリと視線をおゆがせ、視線を合わせ様としない。


(まったく!)


とりあえず、ザックリ解説しよう。


『あ〜 え〜 国勢大まかな情勢を述べますれば、ヤーディン大国軍と、国境を接する五国連合ごこくれんごう軍の戦力せんりょく拮抗きっこうしておりましてー』


「ほう、国土の広さの差では無いのですね。その五国連合にも、注意するべきと」


『え〜 はい...... それだけでは無くてー』


「え?」


『歴代の勇者様方々や、勇者様御子孫ごしそん系譜けいふの方々やらや、それぞれに手を結ぶ六ヶ国それぞれの王侯貴族の内の『有力者の方々』の『思惑おもわく』が、ごちゃごちゃにからってましてね〜』


「え? 歴代れきだい子孫しそん系譜けいふ?...... 『勇者』って、そんなに沢山たくさん居られるんですか?」


『はあ...... はい。ヤーディン大国の諸侯しょこうそれぞれの領地の首都しゅとや、五国それぞれの首都に在るヴォーク教・教会神殿は、それぞれに『勇者召喚ゆうしゃしょうかん魔法陣まほうじん』を有して居り、それぞれに召喚出来ちゃいまして〜


現在『勇者権限ゆうしゃけんげん』を有する方々は〜 五十七名様が居られまして〜


あぁ、『勇者権限ゆうしゃけんげん』とは、その勇者さまの御判断ごはんだんで、指揮下しきか一軍いちぐんを指揮する権限ですが......』


「はい!? ...... 五十七名それぞれに『指揮権しきけん』が?!


そんなに同位指揮権限どういしきけんげんが存在すれば、戦術・戦略せんじゅつ・せんりゃくの意見がぶつかり合いませんか?


...... 肝心の魔族勢力てきたいせいりょく全体に対する、勇者同士の『連係れんけい』は?」


たけし以外が、苦虫にがむしんだ様な、しぶい表情になる


流石さすがは異世界の軍属ぐんぞくじゃの。


どこが問題点か、理解が早い。


その通りじゃ。


更には五十七名それぞれに地域の有力聖職者や王侯貴族がパトロンに付き、それぞれが『その地域の自己都合じこつごう』で、それぞれの地域で魔族退治して居るのじゃ」


「...... 六ヶ国全土に及ぶ魔族勢力に対して、それぞれが『地域紛争』に終始しているのですか?

...... 不味いですね。今日みたいな巨大魔人や魔王軍の様な『巨大勢力』が侵攻して来たら、勇者同士が連携れんけいを取って戦わないと」


「...... 正しくタケシ様のおっしゃる通りなのです。実は四代前様の王家主導で『勇者管理省ゆうしゃかんりしょう』を制定され、勇者並びに勇者権限を一元整理いちげんせいり管理かんりし、勇者同士の連携強化れんけいきょうかを図ろうとしたのですが......


水面下すいめんかでの有力貴族の暗躍で『骨抜ほねぬき』にされ、『勇者同士の意見の取りまとめた意見』と言う(勇者パトロンの各地域の有力貴族の意見)を、王家に進言する、ぬるいと成り果ててしまいまして......」


「あぁ。それでアキヨシ・ハナマサ勇者管理省長は、タイ公爵と同等に(偉そうに)振舞っていたのですね」


「はい。現在の勇者管理省ゆうしゃかんりしょうからむとラチが明かないので、王家寄り御意見の勇者様方々や、タキタル隊長を始めとする歴戦の戦士様方せんしさまがたや、各方面のヴォーグ教上級司祭様方じょいきゅうしさいさまがたは、勢力拡大しつつある魔族勢力へ対抗するための『勇者連合軍ゆうしゃれんごうぐん』を提案ていあんされているのですが......」


セルガさんは感情の消えたガラスの様な目で、疲れ切った口調でつぶやく。


「発案される全ての魔王軍対策案に、必ず各地域勇者様の誰かから『横槍』が入るのです。もう『あちらを立てればこちらが立たず』な状況におちいり、どこから話をまとめて良いのやら...... そうモタモタしているの間にも、庶民の命はすり減って行くのです」


セルガさんはそのまま焦点の合わ無い目をして、途方にくれる。


「なるほど。六ヶ国それぞれの、有力聖職者や王侯貴族の『主導権』争いですか。......もう『戦後の利権せんごのりけん』争いも、始まって居るのでしょうね」


苦笑しながら、ズバリと指摘する。


「わかるかの」


「先ほど、武勲ぶくんを立てた者は望みのものを一つ頂けると聞きましたからね。

皆様武勲の大小にも、ビンカンにでしょう。

得てしてそう言う方々は『捕らぬ狸の皮算用』をするものです。

...... しかし何でこんなに多くの勇者と言い、『こんがらがった』状況に?」


「はい。『こんがらがった』そもそもの話から始めさせていただきます。

えと、先ずヴォーグ教の始祖には、教義秘伝きょうぎひでんを許された、五人の直弟子じきでしが居りました」


セルガさんが、ガラスの様な死んだ眼差しのまま、話し出す。


「ほう」


「五人の弟子が、ヴォーグ教布教の為に始祖しそから離れ、それぞれに三百日旅した場所にヴォーグ教神殿を、開きました」


「ふむ」


「それぞれにの神殿の元に人々は集まり......時を経て、それぞれの神殿が『神の名の下に王を指名』し、五国連合それぞれの首都となったのです」


「うわ......あー。だから、六ヶ国それぞれが『勇者召喚の秘技』が使えるのですね」


「...... はい」


『......更にですね、ヤーディン大国や五国の教会の歴史が進めば、それぞれに始祖様に匹敵する才能の神官も生まれて来ます。才能と実力があれば、『オラがヴォーグ教のトップに』と言う野望も生まれますよね......』


メルダさんもJKの様に若いのに、疲弊ひへいした年配女性ねんぱいじょせいの様な表情に成る。


「むぅ...... 各地域有力聖職者ゆうりょくせいしょくしゃ×有力貴族ゆうりょくきぞくが、その地域で『勇者と言う戦力せんるりょく』を、手前勝手に召喚しちゃったよ、と」


『はい...... ですが一回の召喚に必要な魔素マナ量は、ヤーディン大国や五国連合を流れる龍脈りゅうみゃくの魔素の数年分すうねんぶんを一気に吸い上げ、消費してしまいます』


「...... なるほど。どこかの神殿の召喚陣で一回召喚式を行えば、数年は他の神殿の召喚陣は使えなく成ると」


「はい。『早い者勝ちはやいものがち』なのです。

ですので、召喚陣を有する地域ごとの『召喚式への牽制』や、地域ごとの勇者様同士の『足の引っ張り合い』は凄まじいものが有ります......

ですので、地域によっては魔獣討伐まじゅうとうばつなどは片手間かたてまです......」


「...... 魔王軍に立ち向かうはずの勇者同士が、地域ごとの有力聖職者や貴族の都合で、いがみ合ってきたと。

あぁ、『奴隷首輪どれいくびわ』も有りましたね」


「はい。『奴隷首輪』魔法が使える地方聖職者も居ります。

『奴隷首輪』に逆らえなかった勇者様も居られます。

そうした勇者様同士の影の戦いで、大事な穀倉地域が広大に吹き飛んだ事例も......

私が『王意叛意者』とされ、王位魔法キングダム・マジカル『奴隷首輪』を差し向けられたのも、勇者管理省の許可を得ずにタケヨシ様を召喚したからですは」


「俺たちに無許可の召喚は許さねー、と...... ふむ、面白い」


意地悪い笑顔を浮かべる。


「...... まぁ御主はハナマサ省長の目の前で、最上級王位魔法キングダム・マジカルの『奴隷首輪』を、一太刀で破り居ったからの......

セルガの件は『無かったこと』にされるやもな」


龍神ニーグも、ニヤリと意地悪い笑顔を浮かべる。

全員がニーグの意見にうなづく。


「王家が虚勢を張るためには、それしかないでしょうねー」


猛は、乾いた微笑みで答える。


「なんじゃタケシ。見てきた様なモノ言いじゃの?」


「私の世界でも......地域紛争での『格部族の長』たちの調停を、さんざん行いましたからね。

王家でござい!とがなる政府やからほど、こちらとの武力差を示せば、コロリと態度を変えるモノです」


メルダさんを見る。


「では次に、要注意人物や勢力は?」


『えーとー』


メルダさんは、右手人差し指を右コメカミに当て、しばし考えこむ。





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