第35話 天界を統べる最高神


シャリーン


神楽鈴かぐらすずの、すずが響く。



猛は、その天女てんにょさんとは初めて出会ったハズなのに、何故なぜか、とてもなつかしい感覚に包まれる。


ふと、彼女の名が、深い意識の中から、浮かんでくる。


天界てんかいべ、八百万やおよろずかみ頂点ちょうてんの、最高神さいこうしん......


天照大御神あまてらすおおみかみさま?」


シャリーン


【初めまして。久しぶりね】


うん。真逆まぎゃくの言葉がぶつかって、意味が分からない。


今世こんせでは、初めましてなの。輪廻転生リ・インカネーションの合間に、貴方とは何度も巡り会っているは】


「あぁ......なるほど」


【今世でも、貴方のお役目は『地球』にとって、大事なの。

なのに......突然とつぜん強制召喚きょうせいしょうかんだなんて。

愛し子シルバー・コード霊子線が、地球圏からきゅうに消えておどろいたは】


じろり


ヴォーグ神を、冷たい目で見下ろす。


【こんな、遠い所まで『りパクはダメよ!』と、クギを刺しに来なくてはならないなんて】


【う】


厚顔不遜こうがんふそんであったヴォーグ神は、思わず背筋を伸ばす。

天界の最高神とでは、霊格れいかくに『の中のかわず』のごとく、圧倒的あっとうてき格差かくさが存在する。


【あなたは、この惑星を、第二の地球にしたいの?】


【いえ。そこまでは......】


【『』が居れば、出来るわよ】


【......そうですね】


【でも、管理し切れないでしょ】


【......はい】


手数てかずやしなさい。


八百万の神やおよろずのかみ』の構成システムの、模倣コピーつとめなさい。


安定した管理には、ちゃんと八百万の神々やおよろずのかみがみが、必要なのよ。


有望な『ソウル』を、どんどん『位』を上げさせて、神上かみあがりさせなさい。


模倣コピーして管理に慣れたら、『オリジナルな運営』が、出来る様に成るは。


守破離しゅはり、なさい。


このままでは、今回『』の働きで混乱こんらんが整理されたとしても、


』が去れば管理し切れずまた混乱し......結局この惑星は崩壊します 】


【はい......】


ちろりと、セルガさんを見る。

にこり、と微笑ほほえむ。


【 よい子ね♪ アナタの愛し子セルガの『本気ほんき』にめんじて、当面の混乱が治まるまでは、『』を貸すは 】


【......有り難き】


ヴォーグ神が、深く頭を下げる。


【と言う訳で......神様へのコンサルタントを、宜しくね】


「やれやれ......地球でも、散々さんざんおこなって来た交渉人ですね。うけたまわりました」


【あ、後ね、『地球』とのコンタクトは、今少し待ってね】


「はぁ。隼?」

解析かいせき七割方ななわりがたんでおります」


【どうぞ、そのまま解析かいせきは続けて。ただ、接続コンタクトを、今少し待機して欲しいの。

『地球』と『こちら』の、諸々もろもろのリソースの格差かくさが大き過ぎて、ちょっと調整ちょうせいしなくてはならないの】


「わかりました。早めにお願いしますね」


【ええ。愛し子よ、今少し待っててね。調整終われば直ぐにつたえるは♪】


あ、そうだ!


「こちらで、美食文化のチートくらいはいですか?」


【......いは。多少はつむりましょう♪】


天照大御神最高神様も、しばし御時間が御座いましたら、

今から、お試し美食などは如何です?」


すこし、微笑む。


「お・も・て・な・し、させて下さいませ」


【......】


ヴォーグ神の隣に、ニコニコ笑顔で座る。

ヴォーグ神の顔は、引き攣り出したが。


【ヴォーグ♪】


【は、ひゃい!】


【期待して、良いわよ♪ 『』がつくる美食は、この惑星の文化を豊かにする、ピースのひとつです】


両肘をテーブルに乗せて、両手にアゴを乗せた天照大御神最高神は、可愛かわい微笑ほほえむ。


「御二方、リクエストはございますか? メニューはコチラです」


シルバー・コードを通じて、召喚されるまでの地球上全てのメニューのイメージを送る。


【あら♪ 嬉しい悲鳴をあげてしまうは♪】


【な!こんなに?......星の数に近いではないか......】


ヴォーグ神は、やはり、めていた。


これまでの、召喚しょうかんされて来た勇者達ゆうしゃたちから、和洋中わようちゅう食文化しょくぶんかのイメージは把握はあくしていた。

いや、つもりだった。

猛の送ってきたイメージは、地球上の古今東西ここんとうざいの、星の数ほど多彩たさいなメニューだ。


印度インドカリーと、カリーライスは違うのか?!

カリーひとつ取っても、こんなに種類があるとは......


なに?勇者オオタニが愛してやまなかったナポリータンは、日ノ本ノ国ひのもとのくに独自どくじのパスタだと?


......たしかに、勇者タケシが居れば、美食をじくに文明は段違いに発展する。

美味うまい!』を求めて、人々は東奔西走とうほんせいそうするものだ。

美味うまい!』に引きずられて、諸々もろもろの文化・文明は発達はったつ発展はってんするだろう。


【......】


「ヴォーグ神さま?」


【 おおぅ......そうじゃなぁ...... 『おまかせ』は、可能か? 】


「可能です。おまかせください」


にこりと、微笑ほほえむ。



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