第21話 王意下知(おういげち)
はぁ
「カールは相変わらずじゃの。
『
もう少しは
龍神ニーグはため息を一つ付き、タイ公爵の尊大な態度を諌める。
「……」
しかしタイ公爵は、無言。
「ふん。で、ハナマサ。全国の
返事もしないタイ公爵を
「こちらを、王宮より預かりました」
ハナマサは懐から、片手で持てる位の『巻物?』を取り出す。
「御待ち下さい! まだ、容疑者のはず!」
『巻物?』を見たディグリーは、強く反応する。
ワードマンとセルガも、顔を引きつらせる。
(ワードマンさん。あの『巻物』っぽいのは、どう言う意味合いが?)
やや後ろに立っているワードマンに、念話を送る。
(…… はい……
王意は『
今回は、神官長セルガを『捕縛』する場合として、出ました。
一般人では、実力的に『
『王意下知』の巻物自体が『
常人のハナマサでも、発動させればセルガを、拘束出来ます)
うわー。魔法てワードが出たよ。魔法かぁ。俺にも使えるのかな?
それより。
(ワードマンさん。拘束されたセルガさんは、以後どんな扱いに?)
(…… 最悪は『
(あれ? 裁判とかは?)
(…… 『王意下知』が下りた時点で、罪が確定です)
そうか。
それでタイ公爵が、セルガさんを『全身舐め回す様に』見ているのか。
礼拝堂の損害額うんぬんも、セルガさんの奴隷所有権を主張する気だな。
逆にディグリーさんは、下知されてしまう前に、
(どこの世でも、
(ほう? タケシ殿の世でも?)
(えぇ。必要も無いのに『百パーセント
南アでは、初の全国民総選挙で選任された正当政府との協議中に、
飛び込んで来た武装集団もいたなぁ。
(ほほぅ。その武装集団は、どうなりました?)
(『
(しかり、ですな)
(どうしましょう。彼らにも同じ『臭い』が、します。特にタイ公爵からは、
先程の巨大魔人に勝るとも劣らない
(残念ですが、まだ、魔族では無いのです。
人族の心には誰しも『善悪』を持っています。
確かにタイ公爵は、『悪意』の割合が多いですが……
ギリギリ許容範囲なのです)
(ぬぬぬ、残念)
なーらーばー
『ハナマサ勇者省長殿。よろしいか』
猛は
その腹に響く声に、全員がギョっと驚き、彼に注目する。
「な…… 何でしょう。勇者様」
ハナマサ勇者省長は、猛の『腹に響く声』で指名され、少しビビリながら返答する。
また勇者管理省長に、猛の存在を公的に『勇者』と、この異世界で認められた瞬間だった。
『礼拝堂の破壊に関しては、私にも責任がありましょう……
私なりの手法で、損害を清算したいが、よろしいか?』
「…… ほう。それは興味深い。
自分側の懐が痛まない話と気付き、悪知恵の回りそうな笑顔で答える。
『感謝する。では、早速』
何気無く右手を上げる。
『探知。目標、飛び散った神殿建材』
『半径二キロメートル以内ニ、全ての建材を確認』
『収集』
『収集を開始しまス』
ズザザザザザザザザザザザザ
右『手の
まるで時間が巻き戻って行くように、飛び散った天井や屋根の部材が、
神殿の大屋根に開いた大穴に向かい、飛んで集まり出す。
見上げれば無数の部材が、青空の見える大屋根の上空に浮かんでいる。
『修復』
ザザザザザザザザザザザザ
これまた、時間を巻き戻す様に、部材が集まり出す。
シュン
空気が引き締まる様に集結すると、全員が見上げて居た青空は見えなくなり、
天井は爆発前と寸分に変わらず…… 修復されて居た……
この手の修復は
バタリ
ドタリ
ヘナヘナヘナ
「あああああ」
「ひいいいい」
「たっ、太陽だ! 太陽が落ちて来たぁ!」
少しでも魔力に素養のあるものは、『余りにも強すぎる
その身が腰砕けになり軽い
「「あぁぁ」」
よろけるセルガさんを龍神ニーグが右手だけで支え、よろけるディグリーはタキタルが支える。
魔力に
どうやら勇者管理省長なのに、ハナマサには魔力の素養は無い様だ。
某然と、竜が舞う天井画を見上げるタイ公爵や、猛を鋭い視線で
『タイ公爵殿』
タイ公爵を名指しする。
「な、何か?」
彼は、
『これで損害は、無かった事にして頂けますかな?』
「……ぬ!」
彼は猛の言葉に、『奴隷陥ちしたセルガ』の所有権の主張根拠が、
消え去った事に気が付き、猛を
『
猛は平然と、更に問う。
チッ「……宜しかろう」
タイ公爵は小さく舌打ちし、渋々返答する。
『感謝いたす』
ワザとらしく頭を下げる。
「と……
『ヤーディン
キューン
ハナマサが右手に掲げる巻物が、青白く発光し始める。
キューン
まだ、朦朧として居るセルガさんの一メートル手前で、『何か』が急速に『集束』され始める。
キューン
現れたのは『首輪』だ。
「拘束!」
ハナマサはニヤリと、サディスト風にいやらしく口角を上げ、
ガッ、シャーン!
広大な礼拝堂内に、巨大なガラスが砕け散る様な音が、響き渡る。
ブォン!
猛達の方向から、『何か』が急速に『拡散』して行く様な突風が、全員の周りを吹き抜ける。
ボッ
「うわっ!
ハナマサが右手に掲げていた『王意下知』の巻物が燃え上がり、彼は慌てて
ボボボボボ
ハナマサの足元で、巻物は燃え盛る。
「ああっ!」
ハナマサは慌てる。
どう言う理由であれ、『王意』を投げ捨ててしまったからだ。
フシュ~
巻物は、跡形もなく、燃え尽きる。
セルガの前には『聖光剣』を抜き放ち、残心する猛が居た。
「……な、何と言う事を! 『 王意下知』を、切り捨てるなんて!」
一瞬で事態を把握したハナマサは、自分の失態を
タキタルは武人の目で、猛の見事な『
(((おぉ~)))
後方からも、
衛兵隊の
下から上に切る、鋭い『
……チョッとまて。
タキタルは、
『王意下知』の巻物は、王都守護天使長の『
それを、あっさり切り捨てた!?
つまり、『聖光剣の勇者』様の『
(((まさか!)))
ザワザワ
ザワザワ
その事実に気が付いた衛兵隊員達も、ざわめき出す。
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