第17話 やりすぎたかな?





「はぁ。何とか成ったかな?」



たけしは、連続したアドリブ戦闘に気力きりょくらされて、へたり込みそうになる。

さすがに、初見続きのでの連戦れんせんは、精神的気力が......疲れた。


ブラスター破壊光線は、龍神?のブレスの計測数値けいそくすうちが、参考になった。


( 異世界には、未知の戦闘方式せんとうほうしきが多いのかな?

いろいろ、もろもろな方式をコピーして行ければ......)


異世界の有益な戦闘や理論や未知の概念がいねんを、

なるべく収取しようと脳内リマインダーにメモる。



(次元の裂け目ヲ、完全圧縮!……

裂け目の修復完了……で、マスター)


(うん?)


(次元の裂け目跡ハ、しばらく不完全な様子でス。

また、デモンズ・ゲート開くヤも知れません。

何か…… 『裂け目跡を補強し、馴染なじませる』構造物が必要かト)


(賛成! 何が有る?)


(結構高い場所にありますのデ、フォトン・タワー光子の塔なんかは如何いかがですカ)


脳内に、タワー形状の3D立体イメージが、浮かんでくる。



『侍』は宇宙の起源ビッグ・バンと関連するであろう、ユグドラシル光子・エナジーを手にした事により、

強力なエナジーで、次元空間の突破が、可能になった。


光子にミニビッグバンを起爆させる、光子爆弾。

次元亜空間を作り、インベントリ無限収納を構成。

A点とB点を繋げる、どこでもドア的次元ゲート。


『侍』科学技術班では、あらゆる次元空間の可能性を探っている。


また、その高出力ユグドラシルエネルギーで、あらゆる物質を『分解〜データ蓄積と転送〜再物質化』が可能になる。


ありと、あらゆるもの森羅万象』のデータさえあれば、いくらでも再レプリケーションが、可能となる。



今回の状況では、デモンズ・ゲートは強いマイナス邪気なエナジーだ。

そこにプラス光子エナジーを当てる事により、プラス・マイナス0に出来る。

ノイズ・キャンセリングの様に。


(イイね。とりあえず設置しとこう。

もう、デモンズ・ゲート魔界の門なんて、イヤだ)


「ワードマンさん。次元のゆがみを修復するタワーを、

この湖の中空に建てて良いですか?」


「......じげんのゆがみ?修復する、タワー?......とは?」


「さきほどの『デモンズ・ゲート』でしたか。開いた場所が、次元的に不安定なんです。

再度、『デモンズ・ゲート』が開きやすい様子です。

修復するタワーを建てておけば、自動的に修復します」


ワードマンさんとセルガさんは、納得の表情となる。


「そんな事まで可能とは......お手数ですが、宜しいのですか?」

セルガさんは、恐縮な表情をする。


「はい。またゲートが出てきたら、いやですし」


たしかにー、と二人はうなづく。


「では、私から教会に連絡しておきますよ」

ワードマンが、うけおう。


「宜しく。では、建てちゃいますね」



ヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ



細かな振動と共に、湖の水上から次元の裂け目跡まで届く、

青白く輝く高さ百メートルほどの塔が、3Dプリンターの様に、下から上に見る見る出現する。


水面から五十メートルほど、浮いている。



◯ ◯ ◯



ディグリーと副司祭メルダは、聖湖に突然生えて来た『聖なる光に優しく輝くタワー』に、再々度驚く。


メルダの前にひとつ、魔法陣が立ち上がる。

一読すれば、


「...... なんと言うことでしょう...... あの塔は、新参勇者様が、御建て下さったそうです。

デモンズ・ゲート魔界の門後の『空間の歪みを修復』して行く働きが、あるそうです......

ふたたびゲートが開かぬように......と。

第一守護天使ワードマン様から御一報が」


副司祭メルダは、滅亡の危機が去った安堵と

『痒いところに手が届く』新参勇者様の行いに、

恐れ多いやら申し訳ないやら、ないまぜな表情をする。


「あら♪ セルガは、ワードマン様と、合流できたのね......

しかし、 至れり尽くせりの勇者様ではありませんか......

頭が下がります。

そんな勇者様に、不実な懸念ハニー・トラップを抱いてしまった事を、懺悔ざんげさせていただかないと......」

ディグリーも申し訳無さに、少しうな垂れる。


ディグリーと副司祭メルダは深く反省し、新参勇者様を心から御迎えする事を誓う。



◯ ◯ ◯



ぱくぱく


パクパク


セルガさんとワードマンさんは突然に湖に現れた、優しく青白く輝く塔を、茫然自失ぼうぜんじしつに見つめる。


想像以上に大きく荘厳なタワーに驚き、言葉も失い。

ただ、ぱくぱくと口を開け閉めする。


公都民こうとみん達も聖湖の真上に、ニョキニョキ生えて来た『タワー』を、目撃する。

『たて続けの驚異と奇跡』に、頭で理解するのに追い付かなくて固まり、

みな口をパクパクさせて居る。


しかし聖なる優しい輝きに、


(......あの光......やっぱり新たな勇者さま、だよな)

(......うん。だと思う)

(......すごい爽やかな、大空おおぞらになってる......)


皆、安堵あんどする。



…… やり過ぎたかな?


ユグドラシル・エナジーは、宇宙空間に広がる、無限大なエナジーだ。

エナジー切れを起こすことは、まずありえない。


そう言えば地球でも、採算度外視で

復興支援の建物とか設備などを、ポンポン作って来ちゃってたか。


たけしは、チロりと小さく舌を出す。



ガウウ~ン



みずうみ側の城壁方面から、龍神の弱った唸り声が聞こえて来る。


「あ! いけない! ニーグ龍神様!」


セルガは、その龍神の唸り声に我に返る。


「行きましょう」


有無を言わさず、素早くセルガを『お姫様抱っこ』する。


飛翔ひしょう


セルガを抱えたまま、三メートル程かぶ。


「きゃぁ!」


セルガは、猛にしがみつく。


(たゆん♪)


…… 至福しふく♪ ……


いやいや、後だ。


横を見るとワードマンさんは、苦笑いしながら浮かんでいた。


きましょう」


彼に『ポーカーフェイス』でうなずき、

ゆったりとしたスピードで、飛ぶ。






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