第114話 夢?

泣き疲れ目の周りを腫らしている子供達の目に冷やしたゲル状のプチウォーターを被せる。


俺の村は父さん達が若い世代の親達を守ってくれたから、当時の子供達がこんなふうに泣くことはなかった……


俺は何度か思い出して、泣いてしまうことがあるけど……


泣いてしまうのはわかる……


なぜ、もっと早く結界の魔法具の強化など、俺の村や今回の村のような悲劇が起きないよう対策を考えなかったんだっ俺はっ……


元凶はグリフォン?

グリフォンの異常は自然的なのか?人為的なのか?

原因はなんなんだ?

そのグリフォンは今何処にいるんだ?


この子達はどうなる?

この子達に何ができる?


朝まで色んな感情、思考がぐるぐると頭の中を渦巻き続けた。




「ふぅ。」

「うおわっ!」


驚き跳び跳ねて振り返るとエリザお嬢様がいた。


「え、エリザお嬢様っ?!」

「しー。おはよう、ラハートフ。」


エリザお嬢様は口の前に人差し指を立てて、小声で言った。

子供達を見て起きていないことにほっとし、同じく小声で言う。


「お、おはようございます、エリザお嬢様。な、何したんですか?」

「ラハートフが珍しく気がつかなかったのと元気がなさそうだったから、耳に息を吹きかけたわ。カシュエさんがこうすると元気になると言っていたから。」

「っ!」


エリザお嬢様がやったことを想像して顔が、耳が熱くなる。


「元気になった?」

「は、はい。なりました……」

「……嘘ね。」

「え?」

「ラハートフ、もしかして村のことを考えているの?」

「っ……」

「村のことをあなたが重荷に持つことはないわよ。逆にあなたが村に行きたいと言わなければ、助けられなかった可能性があるわ。あなたは彼ら彼女らを救い助けたのよ。」

「……」


エリザお嬢様の言葉は有り難いが、さっきまで渦巻いていた思考が過り、俯いてしまう。

するとエリザお嬢様が俺の頬を両手で添え、顔を上げられる。

エリザお嬢様が悲しそうな表情を浮かべていた。


「!」

「一人で抱え込まないで。頼りないかもしれないけど私がいるわ。」

「そんなっ!エリザお嬢様が頼りないなんてことないです!」

「ふふ、そう思ってもらえているなら嬉しいわ。それにお兄様もシーラやリヨンだっているわ。」

「はい……」

「教会の地下牢を地下避難場所に作り替える指示を出したお父様もいるわ。一人じゃなく皆で考えましょう。」

「は、い。」


頬に触れているエリザお嬢様の手からも言葉からも暖かいものが伝わってくる。

視界がぼやける。


すぐに視界が真っ暗になった。

しかし、怖くはなかった。

暖かく心地良く優しい暗闇に身を委ねた。






知らない男性、女性、老人、少年、少女達に頭を下げられた。

一人一人に抱き締められ、抱きつかれ「ありがとう。」「ありがとう。」と言われた。


知らない人達、でも、なんとなく誰かとはわかる。

村々の英雄達だと。

その英雄達からの言葉だからこそ、心が軽くなった。


一人が消えると二人、三人と次々消えていく。

全員が消えて、いなくなった。

最後に空からもう一度「「「ありがとう。」」」と聞こえた。


頬に涙が伝う……






「うおわっ!」


目を開けて、目の前に数人の顔があったら、誰であろうと声を出して驚いてしまうものだろう?


「「「わあっ!」」」

「おおきいこえ、びっくりした。」

「げんきだね。」

「おとうさん、おきた。」


聞き覚えの声を聞き、落ち着きを取り戻す。

助けた子供達が顔を見ていたようだ。


起きたということは少し眠っていたってことか。


しかしなぜ見ているかはわからない……


「お、おはよう。」

「「「おはよう!」」」


目の前にいる子供達だけではなく、部屋にいる子供達から元気な声で挨拶を返された。


身体を起こそうとしたら、額に手を置かれ行動を阻止された。


後頭部に伝わる柔らかい感触……

そして、手を置いた本人を見て、察してしまった……


「朝食ができるまでこのままよ。」


エリザお嬢様のひ、膝枕、だとっ?

ここは、天国か?


朝からの幸せを堪能しようと目を瞑る。

感覚が高まり、触覚ではエリザお嬢様の太ももの柔らかさと肌の温かさが、嗅覚では好きと感じる良い匂いが伝わってくる。


聴覚では子供達の声が聞こえる。


「にどねはだめだよ。」

「おとうさんもよくおかあさんにおこられてたよ。」

「でもおとうさんがいってたよ。」

「なーに?なにをいってたの?」

「『あいしているおかあさんのひざまくらはさいこうだな。』って。」

「じゃあラハートフおとうさんはエアルリーザおかあさんのひざまくらがさいこうだから、ねちゃったんだね。」

「でもにどねはだめだよ。エアルリーザおかあさんにおこられるよ。」

「ん?んっ?今、なんて言った?」

「にどねはだめだよ。」

「違う。」

「おとうさんもよくおかあさんにおこられてたよ。」

「それも違う。」

「でもおとうさんがいってたよ。」

「違う違う。」

「なにをいってたの?」

「それも違う。」

「『あいしているおかあさんのひざまくらはさいこうだな。』って。」

「うん、膝枕は最高だけど、違う。」

「じゃあラハートフおとうさんはエアルリーザおかあさん「そう!それ!」エアルリーザおかあさん?」

「ラハートフお父さんとエアルリーザお母さんってどういうこと?」

「「「おとうさん(おかあさん)(おじいちゃん)がラハートフおとうさんとエアルリーザおかあさんの子供になりなさいっていってたの。」」」

「え、エリザお嬢様、ど、どういうことでしょうか?」


エリザお嬢様も俺と同じく困惑した表情を浮かべていた。


「夢でお父様達に会ったそうよ。そこで今の言葉を言われたみたいなのよ。」

「夢、で……」

「?」

「俺も夢を見ました。知らない人達、たぶんこの子達の親達に『ありがとう』と言われる夢を見ました。」

「それで、「カンカンカン」!」

「!?」


鐘が連続で何度も繰り返し鳴った。

忘れるわけがない。

連続の鐘は魔物の襲来を知らすものだ。


ーーーーー

あとがき

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