第110話 慌ただしい本邸と異常事態
嵐の前の静かさみたいな感じで、テリスディスが大人しく、しかし目つきはなんかを狙っているような、虎視眈々とチャンスをうかがっているように見えたけど、あれから「帝国に来い。」など言ってこなくて、近づいてこなくて、彼が転入する前と同じ平和な学園生活を送っていた。
視線を感じて、鬱陶しいけど……
休日前の最後の授業が終わり、テリスディスを除くクラスメイト達全員を連れて、ゲートを使ってオルヴェルド公爵本邸にやってきた。
テリスディスとの戦い……
戦いって言っていいのかな?
お遊び?遊戯?
テリスディスとの対戦を見て、俺が強くなった要素の一つ、領兵達との訓練や修練を見学したい、体験したいとクラスメイトの誰かが言った。
そしたら、他のクラスメイト達が「「「私も(俺も)(僕も)」」」と賛同してきた。
オルヴェルド公爵閣下に相談したら「ご両親の了承を得たら、連れてきても構わない。」と言われて、皆にそう報告した。
結果、テリスディスを除くクラスメイト達全員がオルヴェルド公爵本邸に来たということだ。
そういう理由で本邸にやってきたのだが、いつもと雰囲気が違った。
皆が慌ただしく行動している。
何かあったのか?
「何かあったのかしら?」
「皆には休んでもらって、俺達は父上のところに行こう。」
今日クラスメイト達が来ることは知らされていたから、使用人さんにクラスメイト達を案内してもらって、俺達は公爵閣下がいるであろう執務室に向かった。
聞こえてくる会話では、領境で何かあったらしい。
エンダース様が執務室をノックした。
「エンダースです。エリザとラハートフもいます。」
「……」
返事がない……
エンダース様が扉を開けようとしたが、がちゃがちゃと鍵がかかっているようだ。
ただの留守のようだ……
「エンダース様、エアルリーザ様、ラハートフ様、ここにいっしゃいましたか。」
領兵が駆け寄ってきて、頭を下げる。
俺は軽く頭を下げる。
「俺達を探してたのか?父上にこの状況の話を聞きに来たんだが。」
「はい。皆様が帰宅したと報告を受けましたので、公爵閣下は会議室にいらっしゃると、それと公爵閣下がお呼びですと伝えるため探していました。」
「会議室か。では、行こう。」
「はっ!」
先導する領兵の後をついていった。
会議室でオルヴェルド公爵閣下達に話を聞いた。
領境で魔物の大襲撃が起こっているという。
隣の領地から大量の魔物がオルヴェルド公爵領に流れてきて領内の村、街が襲撃されている。
ラット、ウルフ、ボア、ベアなどの多くの獣の魔物が確認されている。
上位種の魔物が数多くいるそうだ。
壊滅してしまった村もあることも魔物の数が多いことも問題だが、その集団の最後尾にいるものが一番の問題らしい。
最後尾にいるものは、グリフォン。
古聖獣のグリフォンが最後尾にいたらしい。
学園の生物学で言っていた。
聖獣は創造神が創造した生物です。
魔物は邪神が創造した生物です。
創造神に創造された私達、人と魔物と同じように聖獣と魔物も相容れぬ関係です。
それが聖獣と魔物が共にいることがおかしい。
「異常だ。」とオルヴェルド公爵閣下が言っていた。
そして、そのグリフォンの瞳の色もおかしいそうだ。
グリフォンの瞳は明るい緑系統の色らしいが、そのグリフォンの瞳は黒い瞳だそうだ。
「父上!俺も行きます!」
エンダース様が公爵閣下に言った。
領境に行くメンバーにエンダース様は入っていなかった。
俺は領境に行くメンバーに入っている。
「すまないが、ラハートフ、一緒に行ってくれないか?」
「もちろんです。行きます。」
だって、エヴィンカル様にもしものことがあったら、エリザお嬢様が悲しみますから。
「私も行きますわ。」
「いや、「行きますわ。」……」
「エリザお「行きますわ。」……」
俺とエヴィンカル様が断ろうとしたが、エリザお嬢様が俺達の発言に被せて言ってきた。
「……ラハートフ、すまない。」
「……いえ、こうなったエリザお嬢様は止められません。来てほしくありませんが。」
「お父様、私も行きますわ。」
「わかった。許可する。」
と、こんなやりとりがあり、エリザお嬢様も一緒に行くことになった。
本当は、来てほしくないんだが……と公爵閣下とラハートフは思う半分、エリザ(エリザお嬢様)が自分の意思を伝えてくるようになって嬉しいと思う気持ちもあった。
「エンダース、それは許可できない。」
「強くなりました!役に立ちます!」
「そうだな。お前は以前より強くなった。」
「なら!」
「しかし、今回は強さは関係ないんだ。」
「……」
「様々な魔物が統率のとれた動きをしているのはおかしい。そして、」
「グリフォン……」
「そうだ。古聖獣のグリフォンの件が異常だ。」
「一人でも多く戦力があった方が」
「当主と次期当主に何かあった場合どうする?」
「次期、当主?」
「卒業するまでは伝えるつもりはなかったが、異常事態だから今ここで伝える。次期当主はエンダースだ。」
「俺が、私が、次期当主?」
「私も家臣達も納得している。」
次期当主の話し合いに俺も参加していたから、別に俺は驚かない。
プライドだけが高かったクソ生意気なクソガキが皆から次期当主に認められる男になるなんてなー。
エンダース様の母親も泣いていたもんな……
あ、俺も今のエンダース様なら納得しているぞ。
「私に万が一の出来事が起こった場合、エンダースが当主になるよう話はついている。」
「そんなことはっ」
「ないとは言えない。だから、お前にはここに残ってもらうんだ。」
エンダース様が悲痛な表情を浮かべる。
「っ。わかりました……」
「夕食後、一人で執務室に来るように。」
「……わかりました。」
こうして俺とエリザお嬢様は公爵閣下と共に領境へ行くことに、エンダース様はここに残ることになった。
ーーーーー
あとがき
公爵閣下とエンダースの会話を執筆している時に作業BGMでガン○ム種の挿入歌 暁○車が流れてきて、涙が溢れてきちゃいました……
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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