第108話 テリスディスと魔法戦 決着

なぜ三連星にしなかったんだ?

妨害もしないし、遅いから簡単に避けられるぞ。


それなのに勝ち誇った表情を浮かべるテリスディスを見て、俺は呆れる。


火の巨大玉でテリスディスの視界が途切れた瞬間、被害がありそうな範囲の外まで身体強化をして後方に下がった。


火の巨大玉が地面に衝突すると大火柱が立ち、爆風が吹き荒れる。

それを見て、テリスディスが大声で笑い出す。


「はっはっは!これでエリザとアリナは俺の物だ!本当に馬鹿な奴だな!素直に従っていれば死ぬこともなかったのにな!ふふふ、はっはっは!」


俺を殺したくらいで、なんでエリザお嬢様達がお前のものになるんだよ。

人を物扱いにするこいつはやっぱりエリザお嬢様に相応しくないな……


プチアースで土の手を作り、テリスディスの足を掴む。


「のわあっ!なんだっこれはっ!」


プチウィンドでテリスディスの右の耳元に声を届ける。


「エリザお嬢様とアリナ嬢はお前の物ではないー。」

「うわあっ!」


テリスディスが反射的に左へ飛び跳ねるが足を土の手で掴まれる為、バランスを崩し地面にべたんと倒れる。


「こ、この声は、死んだはずじゃ、」


今度は左の耳元に声を届ける。


「死んだからお前に憑いたんだー。」

「うわあああ!」


テリスディスが腹這いになって、忙しく手と足で動かし逃げようとする。


「離せ離せ離せえええ!」


テリスディスががしがしと土の手を蹴る。


慌てっぷりが面白い。


「エリザお嬢様とアリナ嬢はお前の物ではないー。」

「お、お前より強い次期皇帝の俺に嫁がれることを祝福しろよモブ野郎っ!」

「人を物扱いして、格好悪いお前なんか認めないぞー。」


格好悪いという言葉にテリスディスが「はっ!」とエリザお嬢様達の方を見る。

あの人何やってるの?みたいな目で見られているのに気がつく。


テリスディスは咳払いし、土を払い立ち上がる。

エリザお嬢様の方を見て言う。


「んんっ!俺は勝った!帝国に来てもらうぞ!」


今更取り繕っても、遅い。

こっそりと静かに近づいて、テリスディスの後ろに立つ。


「終わっていないのに背を向けるべきじゃないと思いますよ。」

「現実を受け入れられないのか……」

「あなた、何を言っていますの?」

「あいつは死んだ。現実を受け入れろ。」

「ラハートフならあなたの後ろにいるじゃありませんか。」

「エリザには死んだあいつの霊が見えるのか?」

「……何を言っていますの?」

「あいつに言ってくれ。あなたより強い俺に嫁ぐことは光栄で嬉しいから天から見守っていてくれって。」

「……何かしたのね。ラハートフ、真面目にやりなさい。」

「だから「はい。」のわあっ!」


テリスディスの後ろでエリザお嬢様に返事をするとまたテリスディスが反射的に前へ飛び跳ねて足を土の手で掴まれているがためにバランスを崩し、また地面にべたんと倒れる。


テリスディスが振り返り、震えながら俺を指差す。


「お、お、お前は死んだはずじゃ、」

「あんな鈍い魔法が当たるわけないじゃないか。まぁ、当たっても結界で防げていたけどな。」

「い、いや、おかしいっ!」

「何が?」

「当たる寸前までお前は動いていなかったじゃないかっ!あそこから避けるのは無理だっ!」

「鈍い魔法だから、身体強化して範囲外に逃げれたぞ。」

「魔法で勝負しろっ!」

「はあ?身体強化だって魔法だろ?回避に使っていいだろ。」

「攻撃魔法を使え!」

「面倒くさ……はいはい。わかりました。」

「足のやつ解除しろ!」

「はいよ。」


そんな硬く作ってなかったんけどな……

エリザお嬢様なら一瞬で壊すぞ。

足止めにもならないぞ……


「攻撃魔法だぞ。」

「わかった。」

「今度こそ燃え死ね!『メテオ』」

「『ファイアボール』」


ファイアボールに魔込魔法を使った。

テリスディスと同じくらいの大きさのファイアボールが俺の頭上に現れる。

テリスディスが目が飛び出そうなくらい見開いて驚いている。


「なっ!なんで適性無しのお前が同じ魔法を使えるっ!」

「お前もファイアボールだったのか。」

「は?ファイアボール、だと?」

「え?違うのか?」

「……」

「……」

「お前がメテオを使えるわけないよな!」

「メテオって魔法なのか。」

「なんだ……張りぼてのメテオか、はっはっは。」

「そうかもしれない。」


ただ魔力を込めただけだからな……


「今度こそ燃え死ね!」

「嫌だね。」


ゆっくり向かってくるメテオにファイアボールをぶつける。


「やはり張りぼてだったな!はっはっは!」


ファイアボールが霧散した。

こうなるかもしれないと想定していたから慌てることはない。


今度は魔縮魔法も使い、魔込魔法しまくり魔力増し増しのメテオと同じ大きさに無理矢理したファイアボールを作り出してゆっくりと放つ。


「同じことをやっても無駄だぞ。」

「それはどうかな?」

「同じ結果だっ!」


ぶつかると今度は霧散しなかった。


「なっ!」


そして、ビリヤードのように俺のファイアボールがテリスディスのメテオを弾き、テリスディスにゆっくりと向かっていく。


「な、何をしたっ!」

「喚いている暇があるのか?」

「あ!消えろ!」


テリスディスが自身の魔法を解除し、メテオを消した。


「お前が燃え死ね。」

「あ、あ、あ、」


テリスディスがゆっくりと迫りくるファイアボールを見て尻餅をつく。


「あ、あ、あ……」


テリスディスがぱたんと後ろに倒れた。

ファイアボールが当たる前に止める。


諦めるなよ……

逃げろよ、抗えよ。


諦めてしまう男なんて、無理だろ……

こいつ、脅威に陥ったら、絶対誰かを囮にして自分だけ逃げるタイプだな。


やはり、エリザお嬢様に相応しくない。


皇帝にも相応しくないな……

ま、皇帝に関しては俺にはどうこうできないけど……


ーーーーー

あとがき

いたずら魔法に、真似した魔法しか使っていない……

これは……魔法戦、なのかな?と執筆しながら思いました。

もっとびゅんびゅん魔法が飛び交う魔法戦を期待していた方がいましたら、申し訳ないです。

今度、いつか、そういう魔法戦を執筆します。


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