第106話 確定
「避けなかったから、教えてくれよ。」
「何なんだっ?お前はっ!ごほっ!」
間近だと唾を飛ばしてくるから、剣を上へ弾きテリスディスの腹を軽く蹴って、距離を離した。
「最近エリザお嬢様のこ、こ、婚約者になりましたエリザお嬢様の専属従者兼護衛のラハートフ・フェン・マジルドです。」
綺麗なお辞儀をする。
エリザお嬢様に恥をかかせないよう、最近礼儀作法にも力をいれているんだけど、まぁまぁ綺麗なお辞儀ができたと思う。
意識して言ったら、やっぱりちょっと婚約者という言葉が恥ずかしくて、さっきの堂々と言ったときと違い、どもってしまったけど……
「そんなことを聞いたんじゃないっ!」
ごんっ!
酷いものだ……
聞いた相手がお辞儀をしてちゃんと自己紹介したのに、無防備な後頭部に剣を振り下ろすなんて……
いや、俺も戦い中に無防備にお辞儀をするのも悪いのか。
「あ、今も避けなかったから、早くモブが何なのか教えてくれよ。」
「なんで無傷なんだよっ!」
「お前が弱いから。」
「俺は次期皇帝だぞっ!」
「何度も聞いたな。」
「英才教育を受けてきて、魔物を多く討伐してレベル上げもしてきたんだぞっ!」
「努力をしてきたんだな。」
まぁ俺も努力をしている。
エリザお嬢様を守るため、救うため、幸せにするために……
エリザお嬢様も一緒にやるもんだから、守るべき、幸せにするべき彼女に追い越されないようにさらに必死で色々やり続けているからな……
『ゲート』で実家の森の奥に行って大きな群れを定期的に殲滅したり、もっと奥の魔物を討伐したりとかな。
「モブの存在にハイスペックな皇族の俺が負けるわけがない!」
「だからモブって何だよ。いい加減教えろよ。」
モブとハイスペックという言葉、エリザお嬢様とアリナ嬢を知っていることから、テリスディスは乙女ゲームをプレイしたことがある転生者だと思っている。
エリザお嬢様を嫁発言は救おうとしているからだろうか?
だが、目付きが下心ありありの破落戸と同じなんだよな……
思考しながらテリスディスの攻撃を剣や盾で受け流す。
うむ……
やはり受け流しはエリザお嬢様には敵わないな。
エリザお嬢様の受け流しは敵の攻撃の軌道が元々受け流した軌道だったかのように流れるんだよな。
って、違う。
テリスディスのことを考えていたのに、エリザお嬢様のことを考えてしまった。
「モブって平民の子とか村の子って意味か?」
「違うっ!小説やアニメ、ゲームで出てくる名前がないやつらのことだっ!」
アニメにゲームって、テリスディスは転生者確定だな。
皆が首を傾げている中、アリナ嬢が見開いて驚いている。
やっぱりアリナ嬢も転生者なのかな。
乙女ゲームはプレイしてなさそうだけど……
「小説はわかるがアニメやゲームってなんだ?あと俺にはラハートフって名前があるけど?」
「自分で調べろカス!ラハートフなんて名前は出てこなかったから、お前はモブだっ!くっそ!なんで当たらねぇ!」
テリスディスが唾を飛ばしながら怒鳴る。
どんどん単調な攻撃になってくる。
こんなやつではエリザお嬢様を任せられないな。
弱すぎるし、エリザお嬢様を大切にしなさそうだ、いや大切にしないな。
拳を交えると色々わかると言うが、本当だな。
こいつは駄目だ。
終わらせよう。
避けずに食らったのに教えてくれなかったから、お返しにテリスディスの肩に剣を振り下ろす。
テリスディスは反応できず肩に攻撃を受け、剣を離し落とし、肩を押さえ俺を睨む。
睨む顔にシールドバッシュを放つ。
吹き飛んで、地面を転がり、仰向けで止まる。
鼻が折れて、鼻血を出して倒れている。
ぴくっぴくっと動いている。
こいつ、全く反応できなかったな……
弱すぎだな……
強さも全くエリザお嬢様に相応しくないな……
ーーーーー
あとがき
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