第105話 婚約者は絡まれる

オルヴェルド公爵家は例外だが、ドラゴライヴェルド王国の公爵家の結婚相手は王族、同じ公爵、侯爵、辺境伯、伯爵で魔力量が多い且つ適正属性が二属性以上の者となっていた。


他国の者が相手だと、同等以上の位の者となっている。


そこからさらに派閥を優先したり、利がある家を優先したりと基本貴族は政略結婚をしている。


ラハートフは生まれが村の子だからと資格がないと思っているが、オルヴェルト家の関係者達からは適性がなくとも膨大な魔力量を持ちで強力な魔法使いであって伯爵子息(養子)だから全然ありだと思われている。


温かく見守られている。




「お前のことは調べたぞ!」

「……」

「お前は多少魔力量が多いようだが、適正属性が無い、エリザとは正反対の神から見放された者ではないかっ!」

「……」

「そんなお前がエリザの婚約者なんて認めないぞっ!」

「……」

「エリザは次期皇帝の俺に相応しいっ!」

「……」

「エリザの親も俺の方が良いと納得するだろう!」

「……」

「普通辞退するだろっ!というか辞退しろっ!」

「……」

「テリスディス様の方が婚約者に相応しいって言えっ!」


対峙しているテリスディスが俺にバスターソードを向けながら怒鳴っている。

唾を結界でガードしながら、俺は先日のことを思い出していた。




オルヴェルド公爵閣下の「エリザの婚約者になるか?」発言の翌日。

オルヴェルド一家と夕食を共にすることになったその場で、オルヴェルド公爵閣下が突然、予告なしにエリザお嬢様に言った。


「エリザ。」

「はい、何でしょうか?」

「ラハートフを婚約者にすると言ったらどうする?」

「!?」

「いいですよ。」

「!?」

「そうか。ラハートフの婚約者になるか?」

「なります。」

「!?」


エリザお嬢様がどう考えて即答したかわからないけど、即答したことが嬉しすぎて、涙が流れ、止めようにも流れ続け、俯いていたら誰かに抱き締められて頭を撫でられ、いつの間にか眠ってしまった。


夜中に自室のベッドで目を覚ました。

エリザお嬢様の即答を思い出し、にやにやした。


しかし、数分経ち、冷静になって思った。


さすがに公爵令嬢が村の子の平民と結婚するだろうか?と。

父親の、当主の言ったことだから、断らず了承した可能性もあるんじゃないかと。

虫除けのための婚約者だと聞いていたんじゃないかと。

尊敬していますと言われたこと(32話)はあるけど、俺のことを好きなんだろうか?と。


ほぼ毎日一緒にいるから嫌いではないと思いたいけど……

身分差があるし、自分に自信が持てない……


……


…………まぁ、エリザお嬢様を守る、救うというのは変わらないか。


しかし、エリザお嬢様の専属従者兼護衛兼婚約者兼虫除け役か……


こ、婚約者か……

え、エリザ、お嬢様の婚約者……

響きが、いいな……


え、エリザ、の婚約者……


こ、これは、は、恥ずかしくて声に出せないな……




「聞いているのかっ?何にやにやしてやがるっ!」


どうやら思い出し照れ笑い?恥ずかし笑い?をしてしまったようだ。


「聞いていませんでした。」

「ちっ!お前に勝てばエリザの婚約者になれるんだろ?」

「以前はなれたかしれませんが、今はがエリザお嬢様の婚約者なので勝ててもなれません。それにあなたが勝つことなんてありませんが、ね。」

「っ!婚約者をやめますって言うまでボロボロにしてやるっ!」


恥ずかしいと思ったけど、堂々と婚約者と言えた……


テリスディスが顔を赤くし青筋を立てて、突っ込んでくる。


速い。


思ってたより、と前につく。

シーラお姉様の高速な突進に比べれば遅すぎて、脅威だとは思わない。

瞬きをしたらシーラお姉様は一瞬で目の前に現れるけど、テリスディスの場合は何度もぱちぱちと瞬きをしても余裕がある。


まぁしないけど……


俺は特級クラスに転入するだけはあるなと迫り来るテリスディスを動かず冷静に見ていた。


テリスディスがにやりと口角を上げる。

自然体で立っている俺を見て、こいつが全く反応できていねぇじゃねぇかって思っているんだろうな。


さて、どうするか……


避けるにしても紙一重で避けるか余裕を持って避けるかわざと大袈裟に避けるかバク転して避けるかとか色々あるからな。


剣や盾で受け流すか受け止めるか素手で掴むか指で白刃取りするか。


あえて受けるか?

テリスディスの速さを見る限りある程度身体強化をしていれば、ちょっと痛いな、くらいしかダメージを食らわないだろうからな。


しかし、脳天に一撃、下手したら即死するかもしれない攻撃を仕掛けてきているわけだが……


全部やるか……


まず、わざと大袈裟に避ける。


「なっ!」


テリスディスがいきなり避けられたことに驚く。

次の攻撃をバク転、側転、でんぐり返しをして避ける。


「避けるな!」


いや、普通は攻撃が来たら避けるか防御するだろうと心の中でツッコミを入れながらしゃがんで、半身になって、徐々に最小限に避けていく。


「なぜっ!モブが俺の攻撃を避けられるんだっ!」


ん?


「モブってなんだ?」

「避けるっ、なっ!」

「モブってなんだ?」

「避けなかったら、教えてやるよ!」

「わかった。」

「なっ!」


聞くために動きを止めて、肩への袈裟斬りを受けた。

テリスディスが一瞬驚くが、すぐに振り下ろしを頭に仕掛けてきた。


言う通り避けなかったのに攻撃を仕掛けてきたから剣で受け止める。

俺はテリスディスに聞く。


ーーーーー

あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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冗談です。

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