第94話 お出掛け

初級建物型のダンジョンを攻略してからのルシュカ嬢の真剣さには舌を巻く。

積極的に放課後や出掛けない休日に俺やエアルリーザ様と模擬戦をするようになった。


「ラハートフ様は好きな食べ物なんですか?」

「ラハートフの大好物はお肉全般よ。特にレッサードラゴンが好きなのよ。」


うん、そうだね。

前世ではほぼ毎日牛肉、豚肉、鶏肉となんかしら食べていたけど、こっちでは狩りが上手くいったときやお祝い事の時や肉屋のおっちゃんに解体を教えてもらったときにしか食べなくて、食べても干し肉や干し肉を戻したスープでだったりした。


オルヴェルド家で食べた肉汁溢れる肉がめっちゃ、物凄く、最高に美味しくて、大好物トップに君臨したんだよな。

出される全部の肉が最高に美味しいと思った。

大好物ランキング上位が肉だらけになった。


そこにレッサードラゴンの肉が断トツで二位を突き放してトップに輝いたんだ。


「ラハートフ様はどうしてそんなに強いんですか?」

「ラハートフは私と一緒にオルヴェルド家の領兵達と訓練や修練を積んできたからよ。」


うんうん、そうだね。

積み重ね大事だね。


でもベテラン勢には未だ勝てないんだよな……

何でもありならどうにかできそうだけど、才能がないとわかってても剣術や体術などだけで勝ちたいと思うのは男だから仕方がないよな?


「ラハートフ様はーー?」

「ラハートフはーー。」

「ラハートフ様はーー?」

「ラハートフはーー。」


左側を歩いているルシュカ嬢から俺への質問なのに右側を歩いているエリザお嬢様が答えている。


「エアルリーザ様、わ、私はラハートフ様に聞いているんです。」

「そうだったの?ラハートフのことで知っていることだから答えてしまったわ。」

「ぐぬぬ。」

「ふふ。」


エリザお嬢様らしくないな。

でも知っててもらえていることは嬉しい……


それに、なにこれ、勝ち誇った笑みを浮かべるエリザお嬢様、レアすぎる。

ヤバくない?

可愛すぎるんですけどっ!


休日の今日はもう少し経ったら、天使の弟妹のラル、ラーナの十歳の誕生日だからプレゼントを買いに街に出ている。


一人で行くつもりだったが、二人が「「一緒に行くわ(行きたいです)。」」と言ってきたから、一緒に出掛けている。

エリザお嬢様は即了承、二人で出掛けたかったけど目をうるうるさせ上目遣いの小動物(←失礼)には勝てなく仕方がなく了承した。


けど、レアなエリザお嬢様を引き出してくれたから同行させて正解だった。

ありがとうルシュカ嬢。

可愛いなぁ……

あぁ、エリザお嬢様が可愛い……


「ラハートフ様の弟と妹さんは何歳になるんですか?」

「十歳よ。」

「ラハートフ様は何を買うつもりなんですか?」

「ラハートフはもう決まっているのかしら?私は今年は何を贈ろうかしら?」

「二人ともエリザお嬢様が好きですから、昨日作ったエリザお嬢様のドラゴンライダーなんて良いと思うんですけ「それは駄目。」……駄目ですか?」

「駄目よ。」

「くっ……わかり、ました……。買いにきたのは魔法剣ですね。」

「初陣のためね。」

「う、初陣に魔法剣を使う子なんて聞いたことないですよ。」

「安全のためです。」

「過保護ね。魔法剣がなくてもあの子達ならゴブリンキングでも余裕でしょ。」

「えっ?」

「そうですけど、万が一もありますし。」

「えっ?ゴブリンキングが余裕と言いましたか?」

「えぇ、ラハートフの弟妹だから魔法は天才よ。それにオルヴェルド家の領兵に小さい頃から遊んでもらっていたから、武術も結構なものでゴブリンキングは余裕ね。」

「ふええ、ラハートフ様も強いですが、弟妹さんも強いんですね。(もっと頑張らないと!)」

「天才の弟妹を持つと兄の威厳を保つのが大変なんですよね……」

「それはわかるわ。」

「わかります。入学するまでダメダメでしたが、お姉ちゃん格好いいとラハートフ様達のおかげで言われるようになったんです。」

「ルシュカさんにも下の子がいるのね。」

「はい、弟が二人います。」


弟妹の話をしながら暫く歩く。


武器屋に到着。


「……」

「すみません。」

「あん?なんだ?」


スキンヘッドの強面の男がじろっと俺達を見てくる。

二メートルはあるんじゃないかと思われる。

接客に対する対応じゃないだろ?と思う。


「この店にある火と水の魔法剣を全て見せてくれませんか?」

「は?」

「この店にある火と水の魔法剣を全て見せてくれませんか?」

「聞こえている。見たいだけじゃねーだろな?」

「はい、合うのがあれば買わせていただきます。」

「……あの扉の先で待ってろ。」


数秒じーっと見られた後、右奥の扉を指し、スキンヘッドさんは左にある扉の奥へ行った。

右奥の扉の先は試し振りができる広さの庭だった。


スキンヘッドさんが持ってきた火の魔法剣はバスターソード一本とクレイモア二本、ロングソード四本、ショートソード三本、ナイフ六本で、水はロングソード二本、ショートソード二本、ナイフ十本、レイピア二本。


だいたい決まっているのだが魔力を送り振るってみる。

おお、燃える大剣って格好良いね。

振るった軌道を火が走る。


クレイモアの二刀流、十字斬りや左右から水平斬り、滅多斬り、回転斬りなどなんかテンションが上がってやってしまった。

楽しい、後悔はない。


その後も振るい確かめた。

ナイフは火起こしや水分補給のためなんだとさ。


ラルには火の純ミスリルのロングソード、ラーナには対か作成者が同じであろう火のショートソードと水のショートソード、あと火のナイフを一本ずつ、水のナイフを三本ずつ弟妹に買った。


エリザお嬢様、ルシュカ嬢に火と水のナイフを一本ずつ買う。


「わ、私にもっ!あ、ありがとうございます!」

「ありがとう。」

「まいどあり。」

「買った剣に似ていてそれよりも良いやつを仕入れましたら、買いに来ますので連絡してくれませんか?」

「いいぞ、何処に連絡すればいいんだ?」

「連絡先はオルヴェルド公爵家で、エアルリーザ様の専属従者ラハートフ宛にください。」

「……おう。わかった。」


剣を収納し庭から店に入り、入口から出ようとして、無造作に立て掛けてあった剣の中の刀っぽいものに目が止まる。

導かれるようにそれを手に持つ。


「「ラハートフ(様)?」」

「あー、それはダンジョン産の武器なんだが、誰も鞘から抜けないわ、魔力を吸い取られるわで、そこに置いてあるんだ。」

「……」


そう、持った瞬間からスキンヘッドさんの言う通り魔力が吸い取られている。

抜こうとするが抜けない。


吸い取る速度が遅いから逆にこっちから送ってやった。

鞘口から光が漏れ出し、ぴかっと光る。

魔力の吸収が終わる。


「な、なんだっ?」


抜ける、と思った。すーっと抜けた。


「「おお」」

「綺麗ね。」


漆黒の夜空に星が輝くように刃全体に浮かんでいる。

刃文って言うのか?


美しい。


さっきより持ち心地?が良い。

手に馴染む。


「これ、いくらですか?」

「たくさん買ってもらったし良いもんを見せてもらったからタダでいい。」

「いいえ、支払います。」


元々の値段、適正価格で買った。

うきうきな気分で武器屋から出る。


少し歩いてそのうきうきな気分が吹き飛んだ。


ーーーーー

あとがき

面白くなってきたら☆を足してくださいな!

フォロー応援もよろしくお願いいたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る