第92話 初級建物型のボス戦前 2

「皆さん、よろしくお願いします。」

「よろしくっす。」

「よろしくお願いしますね。」

「よろしくお願いいたします。」

「よろしくお願いします。」


五人が囲える丸テーブルに椅子に俺、カシュエ嬢、イーサ嬢、クロッシュ嬢、ルシュカが座っている。

テーブルの上にはサンドイッチとメリルさん特製野菜ミックスジュース、魔力回復に俺製ドライフルーツが置いてある。


ラハートフ式プチウォーターでドライフルーツを作ると魔力が回復するんだ。

俺製じゃないと回復量は減るけど、それもあってオルヴェルド家特産品ドライフルーツは大人気なんだ。


それで懐が貯まる一方なんだよな……。

エリザお嬢様と共にオルヴェルド領地の孤児院や学校に寄付しているけど収入の方が大きいんだよな……。


ボス部屋前なのにさながらピクニックのような空間を醸し出している。


あ、ちゃんとエリザお嬢様達のテーブルも軽食も出しているぞ。

というか先に座ってもらった。

当たり前じゃないか。

俺はエリザお嬢様の専属従者だから優先するのは当たり前だ。


そんなエリザお嬢様は優雅で上品に食べてらっしゃる。

同じサンドイッチなのに、俺の場合具がちょっとはみ出るのに、エリザお嬢様はそんなことなく綺麗に保ったまま食べている。

どうやっているのかまじ不思議。


エリザお嬢様がドライフルーツを食べて、頬を緩めている。

可愛い……


「こ、このドライフルーツはっ?」

「美味しそうね。」

「どうして、そんなに驚いているんですか?」

「オルヴェルド公爵家の特産品、最高級のドライフルーツじゃないっすか?いや、もっと凄いような……」

「さすが商会長の子女ですね。さらに厳選したものです。」

「と、ということは、幻のドライフルーツっすかっ?」

「えええ?そんなものを私が食べていいんですか?」

「幻の、凄いわね。」

「凄いですね。」

「た、食べていいんすか?」

「食べるために出しましたので。」

「そ、そんじゃ、いただきます。」

「い、いただきます。」

「「いただきます。」」


食べて「「「美味しい(です)(っす)!」」」と大興奮の彼女達。

それを聞いて同意するように頷くエリザお嬢様達。

今回も美味しく思っていただいて嬉しい。


食後の紅茶を出して、作戦会議。


「開幕はルシュカ嬢、カシュエ嬢、クロッシュ嬢の三人がアースボールの魔込魔法を敵の上に落とします。」

「「「はい(っす)。」」」

「とりまきのただのスケルトンはこれで斃せるでしょう。私がボスのスケルトンジェネラルを引き付けていますので、その間に残った上位種をルシュカ嬢が回避前衛で、残り三人が魔法で援護、討伐してください。残った上位種を討伐したらスケルトンジェネラルを殺っちゃってください。」

「わ、私が前衛ですか?」

「大丈夫です。ルシュカ嬢ならできます。いつも通り回避を優先して敵と戦っていれば大丈夫です。」

「いつも通り、いつも通り、が、頑張ります!」

「力が入ってますよ。いつも通りです。危なかったら助けますから。」

「は、はい!頑張ります!」

「ふふ。エリザお嬢様達もお願いしますね。」

「……えぇ。」

「了解。」

「わかりました。」

「ラハートフ君、魔法は光の魔法がいいわよね?」

「そうですね。イーサ嬢とクロッシュ嬢は回復魔法の魔力を残しつつ、イーサ嬢の言う通り弱点属性の光の魔法で攻撃するのが良いと思います。」

「わかったわ。」

「わかりました。」

「うちは?」

「カシュエ嬢は土属性ですよね?」

「そうっす。」

「じゃあアースアローやアースバレッド、アースランスの魔込魔法を放ったらいいんじゃないですか?できたら回転を加えて。」

「回転を加える?ショコラン様達のスピアーズの魔法みたいにっすか?」

「そうです。見ててください。」


弾丸、矢、槍をプチアースで二つずつ作り、片方をそのまま、片方を回転してダンジョンの壁に放つ。

回転した方がそのままのより深くめり込んでいる。


「「「おお。」」」

「貫通力が上がります。魔込魔法だけでも初級ダンジョンなら十分だと思いますけどね。」

「ちょっと練習させてっす。」

「エリザお嬢様、いいですか?」

「えぇ、まだ洞窟型を攻略していないようだからいいわよ。」

「ありがとうございます。」


想像しやすいようにゆっくり回転、普通の回転、高速回転のプチアースを手本に浮かべる。

俺とエリザお嬢様以外がそれを見て魔法を放っている。


アリナ嬢が一発で高速回転で放った。

飲み込みが早いな。

彼女に対してはもうヒロインとか気にしていないけど、さすがヒロインスペックだな。


エリザお嬢様も一発でできたけどな!


「私もあんな風によく手本を見せてもらっていたわね。」

「そうですね。」


あの頃から可愛かったな……


「あのファイアドラゴンに乗った私の魔法を見せてもらった時の感動は今でも忘れてないわ。」

「良い出来だったと自負しています。これですね。」


二十センチくらいのフィギュアの大きさであの頃のエリザお嬢様を想像して再現する。

ポーズが少し違うかもしれないが……


「……簡単に作るわね。」

「それはエリザお嬢様の姿ですから。目を瞑っててもできます。いや、目を瞑った方が精密かもしれませんね。」

「……もう。」

「ということでやってみます。」


瞼の裏にエリザお嬢様が浮かぶ。


幼女から少女に変わりつつあった六歳のエリザお嬢様。

胸が膨らみだした九歳のエリザお嬢様。

十歳の初陣の凛々しいエリザお嬢様。

そして、今のエリザお嬢様。


六歳のエリザお嬢様はドラゴンと戯れている姿。

九歳のエリザお嬢様はドラゴンを撫でている姿。

十歳のエリザお嬢様はドラゴンに跨がり腕を前に出して開始の合図のポーズ。

今のエリザお嬢様は剣と盾を持ってドラゴンに跨がっている。


「わああ、凄いです。」

「フィギュアみたい。」

「売れるっす!」

「凄いですね。」

「細かすぎ。」

「これはエアルリーザ様の幼少時ですか。」

「あ、皆さん、触っちゃ駄目ですよ。イーサ嬢そうです。これが六歳、これが九歳、これが十歳、これが今のエリザお嬢様です。うんうん、良い出来だ。」

「……ラハートフ、解除しなさい。」

「勿体ないっすよ。」

「自分で作りましたが、もうちょっとだけ見」

「ラハートフ、もう一度言います。解除しなさい。」

「は、はい!」


エリザお嬢様が俯きながら言った。

少し耳が赤くなっている。


お、怒ってらっしゃる?


言う通り、魔法を解除する。

あぁ、消えてしまった……


「皆さん、魔法の練習はもういいのですか?」

「だ、大丈夫っす。」

「は、はい。」

「では、ボスを討伐しに行きましょう。」

「「「「は、はい!」」」」


エリザお嬢様のただならぬ雰囲気に呑まれ、従うしかなかった。

ささっと片付けてボス部屋の扉を開けた。


ーーーーー

あとがき

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