第81話 初 2

カシュエ嬢情報でエリザお嬢様に連れてきてもらったお店は、普通のお嬢様が来ないであろうお店。

冒険者や兵、身体を動かす男どもが来そうなお店だった。


その名は、焼肉ドラゴンミート。


焼肉ドラゴンミートって……

え?その名前、大丈夫?

ドラゴンはこの国の国旗にもなっているよ?

大丈夫なの?


ドラゴンの肉でしょ?

大丈夫なのか?


国の古聖獣のドラゴンかわからないけど、違うドラゴンかもしれないけどドラゴンを焼肉するってことでしょ?

大丈夫なのか?


ここで食べたら国家反逆罪とかで捕まらないよな?

大丈夫だよな?

まさかカシュエ嬢が俺達を騙して、なんてことないよな?


「ここ、ですか?」

「そうよ。」

「大丈夫なんですか?」

「ん?何が?」

「店名がですが。」

「あぁ、ドラゴンだけど我が国のドラゴンではないから大丈夫みたいよ。あと開店しているということは申請が通ったってことでしょうから大丈夫でしょう。」

「ここで食べても捕まったりしませんよね?」

「何、言ってるのよ。ふふっ、そんなことあるわけないでしょ。」

「そうですか……挑戦的な店名ですね……」

「確かにそうね。まぁ、中に入りましょう。」

「……は、はい。」


本当に大丈夫なんだろうか?


もう一度看板の店名、焼肉ドラゴンミートを見て不安になるが、エリザお嬢様が中に入っていくから、慌ててついていく。

入るとすぐに店員がやってきた。


「予約していたエアルリーザ様ですね?」

「はい。」

「こちらへどうぞ。」


ついていきながら店内を横目で見る。


一階はテーブルと椅子が仕切りなしに多く置かれていた。

二階は仕切りがある半個室みたいな感じ。

そして、俺達が案内された三階は完全個室。


つまり、そういうことだ……


完全に二人っきりだっ!

やばい!

あ、店員がいたんだ。

エリザお嬢様しか目に入らなかった。


エリザお嬢様と何やら話した後、店員が出ていく。

緊張しすぎて声が耳に入ってきていたんだが、何を言っていたのかわからない。


緊張している間に奥の席へ座らせられるっ!

えっ?こっちがエリザお嬢様じゃないですか?


エリザお嬢様が対面に座って微笑むっ!

くっ、可愛いっ!


店員がグラスを持って戻ってきた。


なるほど、飲み物を注文したのか……

ってこれ従者の俺がすべきじゃないかっ?


エリザお嬢様が受け取り、一つ俺に手渡してきた。

それを受け取ろうとしてグラスを持つときエリザお嬢様の指に触れてしまい、ぱっと手を引っ込めてしまった。


するとどうなるか……

グラスが落下。


慌てて身体強化をして寸でのところでキャッチ、同じことをしたエリザお嬢様の手ごと……

グラスを誘導しテーブルの上にことんと置き手を離す。

エリザお嬢様も手を離す。


俺は横にずれて


「も、申し訳ありません!」


土下座。


「ちょ、ちょっと、割れなかったのだから、謝る必要ないでしょ。ほら、立って椅子に座って。店員も困っているわ。」


違うんです。

触れてしまったこともですけど席も注文のことを含め謝ったんです。

エリザお嬢様は気にしていないようだが……


なに、俺の方が少女漫画の主人公みたいな反応をしているんだよ……


もう一度謝り、椅子に座る。


「す、素早い動きですね。」

「ええ、この力で今期の武術大会で全勝して一位になりましたのよ。」

「それはっ、凄いですねっ!」

「そうでしょう。それでお祝いに彼の大好物であるお肉をここに食べに来ましたの。」

「!?」

「そうなんですね。当店を選んでいただきありがとうございます。自慢の当店のお肉を堪能していってください。」

「そうね。じゃあ、お勧めの順に持ってきてちょうだい。」

「かしこまりました。」


店員が出ていく。

感動しててぼーっとエリザお嬢様と店員のやりとりを見ていた。


まさか、自分のためだなんて、思ってもいなかった……

物凄く、物凄く嬉しい……


「え、エリザお嬢様、ありがとうございます。」


エリザお嬢様がグラスを掲げたから、同じくグラスを掲げる。


「お疲れ様。一位、おめでとう。」

「お疲れ様です。あ、ありがとうございます。私のために、本当に、嬉しいです。」


さらに少し持ち上げた後、口にする。

再度感謝の言葉を述べる。


その後二人で次々とくるお肉をめちゃくちゃ食べた。

美味しくいただきました。


めっちゃ微笑ましく見られていたけど、今日は美味しく肉を堪能しながら食べることがエリザお嬢様への礼だと思って、めちゃくちゃ食べた。


店名になっているドラゴンミートは最高に美味しかった。

指の肉はマンガ肉のようで、他の部位はステーキ越えの塊肉がどんと出てきた。


エリザお嬢様と美味しいを共有できたことは嬉しかった。


だから、自分のためのお祝いと言われたけどお金をトイレに行くついでに支払おうとしたら、「もう頂いています。」と言われた。


先に行ったときだな……

格好良すぎだろ、エリザお嬢様……

然り気無くできるとモテるやつだな。

やりおる。

さすがエリザお嬢様だ……


だが、男の立つ瀬がないぜ……



ちなみにドラゴンだけど我が国のドラゴンではないというのは、我が国のドラゴンは古霊獣で、お店のドラゴンはレッサードラゴンのことだそうだ。


ただ本能に従って暴食をする知性なき魔物。

ドラゴンに似ているけど劣っているから人がレッサードラゴンと名を付けたらしい。

レッサーだけど素材は優秀、お肉は美味しいと狩れる者達にとっては良い獲物だそうだ。


のちにドラゴンの前でレッサードラゴンと口にしたら、「羽蜥蜴と一緒にするな!」とキレられブレスを吐かれた。

レッサードラゴンと名付けた奴を殴りたかった……。


ーーーーー

あとがき

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