第80話 初

いつもはシーラお姉様や誰かしらが一緒にいるから二人っきりという状況に物凄く緊張している。


行き先がわからない……


とりあえずエリザお嬢様の歩調に合わせて隣を歩く。

いや、いつも合わせているけど今は変に意識してしまう。


あぁ、今日もエリザお嬢様の横顔は美しい……


「ラハートフ?」

「はい。なんでしょうか?」

「そんなに見られていると、少し、歩きにくいわ。」

「!?」


な、なんだっ?

照れているっ?

エリザお嬢様が照れているっ?

い、いつも以上に可愛いぞっ!


足を止めてしまう。

エリザお嬢様が振り返る。


「どうしたの?」


いやエリザお嬢様こそどうしたんですかっ?


エリザお嬢様が少し赤く顔を染め、少し首を傾げて聞いてくる。


いつもと、なんか、反応が違いますよっ!

とっても可愛いですけどっ!

どうしたんですかっ?


「あ、い、えーっと、何処に向かっているのか、気になりまして、聞こうか迷っていまして、」

「そう、それで見られていたのね。カシュエさんに以前聞いたお店に向かっているわ。」

「カシュエ嬢の情報ですか。良い店なんでしょうね。」

「そうね。さすが商会長の子女よね。」

「そうですね。どんなお店なのでしょうか?」

「着いてからのお楽しみよ。」


ずっきゅううううううん。


エリザお嬢様の微笑みウィンク!


破壊力がありすぎるっ!

エリザお嬢様が俺を尊死させようとしてきてるんだっ!

耐えられるのか俺!

いや無理だろ!


顔がにやけて昇天しないように、エリザお嬢様に気づかれないよう腹パンして意識を保ち、顔を制御する。


「楽しみです。」

「まぁ、私も入るのは初めてだから、私も楽しみだわ。」

「そうなんですね。」

「ええ。」

「……」

「……」


無言で歩く。


なんだろう?

この沈黙、俺は嫌いじゃない。


二人っきりで隣がエリザお嬢様だからだろうか?

ただエリザお嬢様と歩いているだけだけど、良い……


エリザお嬢様はどう思っているんだろうか……

何か話題を見つけて話しかけるべきか?


「……」

「……」

「おい、可愛いねーちゃん。」


前からガラの悪い連中が歩いてきてその一人がエリザお嬢様を呼び止める。

俺的幸せ空間をぶち壊しにきた奴らが現れた。


邪魔しやがって……


これは、痛い目に会いたくなかったらねーちゃんを置いて逃げろっていうやつか?

エリザお嬢様に触れようとしたらお前らを痛い目に合わすぞ……


「まぁ、ありがとう。それで何か用かしら?」

「大人の遊びっていうのを教えてあげようかと思ってな。」

「……」

「(ラハートフ、落ち着きなさい。)」

「(はい……)」

「なに、こそこそ話してやがる?」

「私達、これから予約してあるお店に行くのよ。彼と相談するのは当然ではなくて?」

「そうだな、で?一緒に来るだろ?」

「いいえ、断らせてもらうわ。あなた達といても楽しそうではないもの。」

「はぁ、生意気だな、面倒くせー。」


そう男が呟くと連中が俺とエリザお嬢様を囲う。


「おい、ガキ、痛い目に会いたくなかったらこのねーちゃんを置いて逃げろ。お前の代わりに可愛がってやるから。お前はこのねーちゃんのことは忘れな。」

「ぁあ?エリザお嬢様に触れようとしてみろ?潰すぞ?お前らが逃げて忘れろ一生俺らの前に現れるな、わかったか?」

「はぁ、ラハートフ……」

「無理です。申し訳ありません。」

「はぁ、仕方がないわね。」

「エリザお嬢様、ため息は駄目です。幸せが逃げてしまいます。吸ってください。」

「もう、誰のせいよ誰の!」

「こいつらですね。」

「ラハートフよ。」

「えっ?」


「……かかれ。」


有言実行。


地面をだんっと踏む。

やる必要ないんだけど、なんかやった方が格好良い。


踏むと同時にプチアースの石を連中の真下から打ち上げる。

連中は地面を音を立て踏んだ俺を見ていたから全く反応できずに顎を打ち上げられた。


「「「がはっ!」」」


仰向けに倒れた連中の首、手と足、胴をプチアースで地面に固定する。

またプチアースを使う。

頭の横にハンマープチアースが現れる。


「聞いた話と違うじゃねーか、くそっ。」

「聞いた話?襲うよう依頼かなにかあったのか?」

「誰から聞いたのかしら?」

「言うわけねぇーだろ!」


ごんっ!

ハンマープチアースを顔のすぐ真横に振り下ろした。


「ひぃ!」

「誰から依頼があった?」

「ろ、ローブを深く被った女だ。」

「なんで女だとわかった?」

「こ、声が女だった。」

「他にはないか?」

「な、ない。」

「エリザお嬢様、どうしますか?」

「私とラハートフを襲おうとしたんだから鉱山行きか死刑よね。」

「そうですね。私はここで潰そうとしましたが。」

「メリル達に任せましょう。」

「「「はっ!」」」


メリルさん達が突然現れた。

慣れないころはびくっと身体が反応し、驚いていたなぁと遠い目をする。


「あ、ちょっと待ってください。」

「何をするの?」

「潰します。エリザお嬢様はあちらで待っててください。すみません、一人、エリザお嬢様についててください。」

「わかりました。」


エリザお嬢様がこの場から離れた。

足は少し開いてハンマープチアースを股の間に設置。


「……」

「睨まないでくださいよ、メリルさん。こいつら、エリザお嬢様に大人の遊びとか可愛がってやるとか言ったんですよ。」

「やってしまいなさい。」

「そういうと思ってました。」

「「「や、やめろ。」」」

「やめるわけないだろ。えい。」


言葉を合図にハンマープチアースが力強く振り下ろされる。


「「「ぎゃああああああ。」」」


潰れるまで潰れても何度も何度も。そして、ガラの悪い奴らは気絶した。


「静かになりましたね。」

「ええ、後はこちらで処理するので、あなたはエリザお嬢様の相手をしてらっしゃい。」

「わかりました。」


エリザお嬢様の下へ駆け寄る。


「お待たせしました。」

「お二人方とも楽しんできてください。」

「「はい。」」

「では。」


メリルさんの同僚がメリルさんの下へ行った。


「行きましょうか。」

「はい。」


また幸せな時間を堪能しながら歩く。

暫く歩くと目的のお店であろうお店の前にエリザお嬢様が立ち止まる。


ーーーーー

あとがき

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