第74話 観戦者達

「天才王子って聞いていたけど、それほどじゃないな。」

「お、おい!聞かれたら、どうするんだよ!」

「す、すまん。思ったことが口に出てしまった。」


男が周囲を見て誰にも聞かれていないようでほっとする。


「……まぁ、確かにそう思ったけどな。」

「だよな。ト様が全勝してとか言ったから期待してたのに。」

「ト様?」

「(T天才O王子でト様。)」

「(なるほど、わからないが全勝って言っている時点で王子のことだってわかるぞ。)」

「気をつける。実力は並程度だし、乱入なんかするし、ジセ様のことが好きだからって酷いものだよな。」

「ジセ様?」

「(慈悲の聖女でジセ様。)」

「なる。あれは酷いな。しかも背中から攻撃をするなんてな。」

「ショコラン嬢の見事な振り返様の薙ぎ払いは凄かったな。」

「華麗に決まったよな。なんかすかっとしたな、あの時。」

「俺も俺も。大したことのない試合で雄叫びを上げて、黄色い歓声を浴びているのにいらっとしてたから、ざまぁって思っちゃったぞ。」

「わかる。」


同じような会話があちこちでされていた。



「……」

「どうしましたか?」

「あぁ、ホルスディン様の技術の変わらなさと人の変わり様に驚いて、な。」

「以前指導してた頃と比べてですか?」

「そうだ。身体が成長して力や速さは少し増しているが、技術面が全く成長していない。いやむしろ腕が衰えている。感情的にもなっている。常に冷静にと教えたのだが、なぜ……」

「……」


ホルスディンの指導者だった元第一騎士団団長のディーガルに答える者はいない。



「負けてしまいましたが、スタルード君は以前より大分実力を伸ばしていますね。」

「そうだな。エンダース君達と友好を持つようになって、良き経験をしているようだ。」

「エンダース君達は実力が違いますね。特にエアルリーザ嬢、ラハートフ君は。」

「あの二人は別格だな。うちの団に今すぐ入ってほしいものだ。」

「エアルリーザ嬢が入団してくれれば、ラハートフ君もついてきますよ。」

「そうだな。狙うなら将だな。できたら同年代三人で団を盛り上げてもらいたいものだな。」

「そうですね。そうなるといいですね。」



「ラハートフは、あんなに強かったのね。」

「「お兄ちゃん、強いね!」」

「さすがラハートフ君です。」

「「当たり前よ(だよ)!だって私(ぼく)の契約者だもん!」」

「「「エリザお姉様だって強いよ(わよ)!」」」

「「うん!エリザお姉ちゃんも強いね!お兄ちゃんとの試合楽しそうだったね。」」

「「「うん。」」」

「エリザお姉様の相手ができるのはラハートフだけだもんね。」

「「うんうん。」」


お兄ちゃんラハートフお姉ちゃんエアルリーザ自慢をそれぞれの姉弟と契約精霊達が言い合い認め合っている。

保護者達がその様子を微笑ましそうに見る。


「ラハートフの影響を受けた子達は実力を伸ばしているな。」

「そうね。」

「向上心があって実力の高いあの子達と模擬戦をしていれば、強くなりますよ。」

「そうですね。エンダースも良くなっています。実力も性格も。本当に、良かった……」

「そうだな……」

「もう、しんみりしないで観戦しましょう!」

「あぁ、そうだな。」

「そうですね。」


ナディスが雰囲気を変えて観戦するようにした。



「聖女様を傷つけた者を調べておけ。」

「「「はっ!」」」

「聖女様が第四王子を想っているようだ。国王に連絡しておけ。」

「「「はっ!」」」


教会関係者が動き出す。


ーーーーー

あとがき

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