第49話 実技試験 対人戦

エリザお嬢様とホルスディン殿下は十歳の時まで、会える機会があれば会っていた。

手紙のやりとりもしていた。

王都に行けばホルスディン殿下がオルヴェルド公爵家の屋敷に会いに来ていた。


初陣への不安などが書かれた手紙が送られてきた日以降手紙の回数、会う回数が減っていた。

会う度エリザお嬢様への態度が蔑ろになっていった。


エリザお嬢様の何が気に入らないのかわからない。

努力家で魔法も訓練も国内外の勉強も厳しい王妃教育も頑張っているのに……

格好良い、綺麗、凄いと見惚れ直すのはわかるが、睨む意味が俺にはわからない。


ツインテールちゃんが、モモティルナだっけ?がエリザお嬢様を睨むのがもっとわからない。

警戒しとこう。

どんな人物か調べてもらおう……



殿下は一般的なロングソードを選んだようだ。

中段に構える様は良い。

開始の合図と同時に殿下は振り上げで試験官に走り出す。

間合いに入って殿下はロングソードを振り下ろす振り下ろす、連続で振り下ろす。


そして、息切れする殿下。


えぇ……

息切れ早くない?

騎士見習いの子供達ならもっと剣を振っていられるぞ……


ちらっとエリザお嬢様を見ると無表情で見ている。


剣を上に弾き返され、首に剣を突き立てられて、会話して終わる。

なぜか晴れやかな表情の殿下。


「オルヴェルド公爵家の騎士見習いの方が強そうだね。」

「そうね。あんな負け方してなんで満足気なのかしら?」

「さぁ?」


「ホルン様格好良かったですっ!」

「あ、ありがとう。」


モモティルナ嬢がホルスディン殿下を褒める。


「格好良かった?」

「全然よ。弱くてがっかりよ。」

「シーラお姉様、リヨンお兄様。」

「「あ、ごめん。」」

「いえ、気にしていないからいいわ。」


声の感じではエリザお嬢様は本当に気にしていないようだけど、ホルスディン殿下とモモティルナ嬢が親しげにしているのをエリザお嬢様はまた無表情で見ている。


何を思っているのだろうか?

何かを我慢して表に出さないようにしているのか?

本当に何も思っていないのか?

どっちですかエリザお嬢様?

ぎゅっと胸が締め付けられる。



対人戦は続き、あの子は近衛騎士団長の息子と聞いた男子となぜか戦聖女と呼ばれているアリティーナ嬢の対人戦は見所があった。

ちなみにモモティルナ嬢の対人戦は酷かった……


近衛騎士団長の息子、この子も確か攻略対象だったはず。

十四年経ってもう記憶が曖昧で攻略対象にいた、ような……って感じだ。

まぁ乙女ゲームで攻略対象になりそうな人物だから、たぶん攻略対象だ。


さすが近衛騎士団長の息子と言うべきか小さい頃から鍛えられているのが構えや動き、体力でわかった。

得物は殿下と同じロングソード。

じりじりと近づき、喉に突きを放つ。と見せかけ、試験官の手を切りつけようとする。

試験官に防御された後も連続で剣を振るい続ける。

殿下と違い、水平斬り上下斬り回転斬りなど流れが綺麗だった。


大人と子供の力の差で負けてしまったが、身体強化が使えれば勝てたかもな、なんて思った。


アリティーナ嬢の戦いは凄かった。

得物はショートソードの双剣。


多少の攻撃は気にしない攻め方だった。

たぶん回復魔法を使いながら戦っていた。

指揮官のフェイントも引っかかるから人より魔物との戦いの方が経験が多いのかと思った。

というかヒロインがあんな戦い方ができたなんて知らなかった。


ホルスディン殿下がアリティーナ嬢の戦いを熱い目で見ていたのを見てしまった。

こういう運命なのか?

でもこんなイベントなかったはず。


曖昧な記憶でもそれはわかる。

だって最初ヒロインは強くないから。

ゲームとは似ていて違うんだなと思った。

ゲームのような沿った行動をしない、喜怒哀楽がある、感情があって行動をするんだ。


まぁ貴族はそれを抑えて行動することが多いが……


エリザお嬢様の得物はショートソードと丸盾。

エリザお嬢様は魔法も天才だったが、盾を使った受け流しも天才的だった。

身体強化の魔法を使うようになってからほぼ敵なしとなっていた。


ほぼの人物達はオルヴェルド公爵閣下や領兵ベテラン勢なんだが、しかし受け流しからの反撃でこれまで多くの魔物や盗賊を斃してきた。

本気の戦いではそこに魔法攻撃も入るもんだから相手からしたら厄介極まりないだろう。


今回試験では攻撃魔法を使っていないが、これまで試験官の戦いを見ていた。

初め様子見していたエリザお嬢様が動き出した。

機動力を奪うような攻撃をし始めた。

わざと力を抜いて少し痛いと感じくらいの攻撃を当てる。

受け流し当てる。


試験官がイラついてきてるのがわかる。

力ある大振り振り下ろしをしてきた。

狙っていた攻撃を軌道に沿うように盾を構え受け流し懐に入り首にショートソードを突き立てるエリザお嬢様。


ぱちぱちぱちぱち。

きゃーカッコいいーと心の中で叫ぶ。

ひゅーひゅーと指笛をしたい。とりあえず大きく拍手する。


エリザお嬢様が一礼し戻ってくる。

プチクリーンをかけ、プチボックスから運動水を出し渡す。


「お疲れ様でした。格好良かったです。」

「ありがとう。」

「ま、負けないわよ!」

「無理でしょ。僕達、接近戦壊滅的でしょ。」

「くっ、ツンラビちゃんが使えれば、」

「姉さん殺す気っ?!」

「ちゃんと刺さるくらいに加減するわよっ!」

「身体強化の魔法は使っていいみたいだから、思いっきり突っ込んで突けばいいんじゃないかな?ツンラビちゃんみたいに。」

「それっ!いいわね!さすがラハートフ!頭が良いわね!」

「そうか、僕も思いっきり叩けばいいのか。さすがラハートフ。」

「……試験官、死なないかしら。」

「あ、たぶん、大丈夫、じゃないですか?シーラお姉様、リヨンお兄様、やっぱり思いっきりじゃなく手加減して。」

「嫌よ!接近戦できない私が勝つには思いっきりするしかないのよ!」

「勝たなくても」

「エリザが勝って私が負けるなんて嫌よ!」

「そう……。あ、頭と心臓とか急所を狙わないようにしてね。」

「わかっているよ!」

「だ、大丈夫かな……」

「……王立学園ですもの。腕利きの回復士がいるでしょうし、聖女様もいるから大丈夫でしょ。たぶん……」


シーラお姉様の得物は槍。

試験官は防御するも思いっきり身体強化されたシーラお姉様の突きを防げず力負けして脇腹を貫通し、シーラお姉様の勢いが止まらず体当たりされ共に後ろに吹き飛び、気を失う。


シーラお姉様は土や試験官の血で汚れているがぴんぴんしている。

アリティーナ嬢や回復士が試験官に駆け寄り特級の回復魔法を使い治す。


手を振りながら戻ってくるシーラお姉様。

ちょっとは試験官を心配してあげてよ……

プチクリーンをシーラお姉様にかける。


「やったわ!」

「お、お疲れ様。」

「ちゃんと急所を外したわ!」

「さ、さすがだね。」

「えへへ。」


目を覚ました試験官。

交代せず続けるようだ。


リヨンお兄様の得物はメイス。

リヨンお兄様は両手でメイスを持ち背中まで振りかぶる。


あ、これ、ヤバいんじゃないの?


試験官は武器を横に構え防御の体勢をとる。

ばき、ぼきぐちゃと嫌な音がした。

試験官の武器を粉砕、肩にメイスがめり込む。

リヨンお兄様はメイスをすぐ抜いて試験官の頭にメイスを突き立てる。

またアリティーナ嬢や回復士が試験官に駆け寄り特級の回復魔法を使い治す。


複雑骨折?粉砕ぐちゃぐちゃ骨折?も治るのか。

凄いな。


「僕でも接近戦ができるね。」

「う、うん。そうだね。」

「まぁまぁね。」

「……死ななくて良かったわね。」

「え、えぇ、そうですね。」


治った試験官は対人戦を続けるようだ。


他にする人がいないのか?

根性ありすぎじゃない?


指揮官の前に立って気づく。


指揮官が震えているんだけどっ!

顔が恐怖で引きつっているんだけど!

え?

まじ他にする人いないのっ!


なんか可哀想に思い、身体強化は使わず対戦した。

攻めて、受けてを繰り返し、最後は試験官の剣を鍔迫り合いから少し力を抜き前のめりになったところを手を掴み懐に入り背負い投げし、倒れた指揮官の顔に剣を突き立て終わった。


「お疲れ様。」


あぁ、あなたの微笑みとお疲れ様で疲れなんて元からなかったかのように疲れが吹き飛びました!


「ありがとうございます。」

「「格好良かったわ(よ)、ラハートフ。」」

「ありがとう。」


俺達は試験官を倒したことにより実技の対人戦は満点を取った。

魔法の方も満点だった。


またホルスディン殿下とモモティルナ嬢が睨んでいた。

近衛騎士団長の息子とアリティーナ嬢がきらきらした目で俺らを見ていた。


ーーーーー

あとがき

面白いじゃん、続き早く上げろ。と思ったら☆☆☆、面白いなぁと思っても☆☆☆、少しでも気になるな。と思っても☆☆☆をつけていってくださいな!

冗談です。

前から☆☆☆、☆☆、☆をつけてください!

面白くなってきたら☆を足してくださいな!

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