第47話

私が前世を思い出したのは七歳の適性属性と魔力量の鑑定をした時だった。


魔力量の鑑定の水晶に触れると前の人達と比べものにもない光が発生した。

そして、激しい頭痛が襲い気を失った。


夢で私は映像を見ていた。

それが私の前世の記憶だと感じた。


映像が終わると光の玉となって私の中に入ってきた。

前世の私と今世の私が混ざり合い一つになった。

今世で暮らしていて時々知らない知識があったのはこういうこと前世の記憶だったんだと納得した。


今世には魔法があるみたい。

私の適性属性は水と風と光と闇の四属性で魔力量も多かった。

お父様とお母様、屋敷の皆の喜びようは嬉しくもあり、少し恥ずかしかった。


一つになってから不便に感じることもあったけど、大体は魔法で解決した。

特にプチクリーンは凄い便利なの。

使ったら清潔、綺麗、さっぱりなの。

愛用している。


娯楽が少ないけど、魔法が楽しい。

何度も魔力切れを起こすくらい魔法を使っている。

風の魔法で浮くことができるの。

いつか自由に空を飛べるようになることを夢にしている。


十歳になり貴族の決まりで前世には存在していなかった人類の敵、魔物と斃す為に同じ王都に住む貴族の子供達と一緒に近くの森にやってきていた。

王子様もいる。


失礼、無礼だと思うけど、守ってあげたい支えてあげたいと一目見て思ってしまった。

でもさすがに男爵令嬢では身分差があって無理だと諦めようと思った。


けど、つい目が第四王子ホルスディン・エン・ドラゴライヴェルド様を追ってしまう。

駄目と首を振るが、また追いかけてしまう。


魔物のいる森でよそ見をしていたのが悪かったのだろう。

横から魔物が出てきていきなりのことに身体が膠着してしまった。


そして第一印象とは違いホルスディン様が私を庇い、代わりに傷を負って倒れてしまった。

光属性の適性を持っていて回復魔法を習っていたのに私は魔物の殺気とホルスディン様から流れる血をパニックになって何もできなかった。


魔物は誰かが斃した。

ただ震えてホルスディン様を見ていた。


平和に暮らしていた記憶を持っていたから余計に殺気に恐怖を感じてしまい、流れる血に死を感じて何もできなかったんだと後にそう思った。


要するに甘い考えだったと言うことだ。


がさっと音がしてまた魔物がっ!と思ったら、女の子が出てきた。


「怪我してるっ!治さなきゃっ!」とホルスディン様に駆け寄り、傷に手を翳して、『クリーン』と唱えてから違う詠唱をし始めた。

女の子が使おうとしているのは回復魔法だとわかった。

それも上級の。詠唱が終わり、上級の回復魔法が発動し、ホルスディン様の傷が治った。


今度は『プチクリーン』と唱え流れた血の汚れがなくなり傷のない真っ白な肌が見えた。

痛みに顔を歪めていたホルスディンの表情が和らぎ、ゆっくりと目を開けた。


「ふぅ。綺麗に治って良かったー。」

「君が治してくれたのか?」

「そうだよ。大丈夫?まだ痛いところはある?」

「ありがとう。どこも痛くないよ。」


とホルスディン様が立ち上がったがふらっとしたところを女の子が支える。

ホルスディン様が抱きついたように見える。


「あ。」

「おっとと。血を失ったからだね。今日はもう安静にしていた方がいいよ?」

「ご、ごめん。」


慌てて離れるホルスディン様だがまたふらっとする。

女の子が支える。


「安静にしないと駄目だよ。」

「う、うん。わ、わかった。」

「殿下大丈夫ですか?」

「あ、あぁ、この子のおかげで大丈夫だ。」

「で、殿下っ?」


今度は女の子の方が慌てて離れ足がもつれ後ろへ倒れそうになる。

それをホルスディン様が手を掴み引く。

今度は女の子が抱きついたように見えた。


「ご、ごめんなさい。王子様とは知らなくて、えっと、」

「落ち着いて。」

「う、うん。」

「助けてくれた君に褒美はやるけど、罰とかしないから安心して、ね。」

「ほ、褒美なんて貰えるんですかっ!」

「何が欲しい?」

「(学園に行く為の本が、あ、やっぱりお肉に野菜に食材が、あと妹達の服がほしいかも、いっぱい欲しいものがある。どうしよう。うん、本はやめよう。)」

「本と食材と服かい?」

「え?聞こえてた?」

「うん。」

「あああ、恥ずかしい。」

「ふふっ。本と食材と服でいいのかい?」

「うう、妹達がいっぱいいるから本はやめる。食材と服にしてください。」

「妹達がいっぱいいるの?」

「アンにアーヤにーー」


名前を出しながら指で数える女の子。


「ーーダン。二十三人だね。」

「い、いっぱいいるんだね。」


妹弟の多さに引いているホルスディン様。

その後女の子が教会の孤児院の子だとわかり、血の繋がらない妹弟達の為に自分の欲しいものを諦める優しい女の子にホルスディン様は感動したみたい。

本も褒美として送られることになったみたい。


少し二人を見るともやもやした。


私の不注意でホルスディン様が傷を負ったことは曖昧なことになり、私は何かしらの罰を受けることがなかった。

この日から私は落ち着いて行動できるように勉強の他に、魔物の討伐や治療院や騎士団で回復魔法を使ったりと経験を失敗しながら何度も繰り返した。


学園入学前には戦聖女と二つ名がついた。

恥ずかしい……


あの女の子は慈悲の聖女と二つ名で呼ばれるようになっていた。


二章終わり


ーーーーー

あとがき

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