第46話 初陣

「情報通り、キングがいるわね……。」

「大丈夫です。私がいます。それに今までのお嬢様の努力を知っています。オルヴェルド公爵家の領兵もいます。大丈夫です。」

「……そうね。ありがとう。一旦戻りましょう。」

「はい。」


貴族の子女は十歳になると初陣、魔物と斃すことを経験させられる。

けど初陣でゴブリンキングを相手に初陣をさせられるのは普通はないだろう。

まぁシーラお姉様、リヨンお兄様、エリザお嬢様ならいつも通りの行動ができれば余裕だろう。


月一の見回りの際にゴブリンキングの群れが発見された。

オルヴェルド公爵閣下はそれをエリザお嬢様やエンダース様、シーラお姉様、リヨンお兄様や寄り子の子女達の初陣に利用することにした。


陣地を敷いているところに戻ってきて報告した。


「ゴブリンキングは俺が斃すっ!お前らは雑魚を斃せ。」

「いやエンダースには無理でしょ。」

「はぁっ?ゴブリンどもの前に俺にやられるかっ?」

「いやエンダースには無理でしょ。」

「ショコランっ!無礼だぞっ!」

「できないことを進言できる部下がいるなんて嬉しいでしょ?」

「きっさっまあああ!」

「ゴブリンキングを斃せるのはエリザ様と姉さんと僕とラハートフとオルヴェルド公爵家の領兵さん達かな。姉さんの言う通り、エンダースには無理だよ。」

「リョーレンっ!貴様までっ!」

「剣術はそこそこ、魔法は恵まれた環境があったのに並みより上程度。無理だよ。」

「きさまらっ!」


エンダース様の顔が茹で蛸のように真っ赤かだ。

エンダース様とマジルド姉弟のやりとりを見て他の貴族の子女達があわあわしていたり、地図の上の駒を見て不安がっている。


「落ち着いてください、お兄様。」

「エアルリーザ。」

「初陣、逸る気持ちはわかります。ゴブリンキングを斃すことも重要ですが、ゴブリンを逃がさず殲滅することも考えなければいけません。次期当主なら自分の手柄ではなく、どう被害を抑えつつゴブリンを殲滅するかを考えなければいけないと思います。お父様のように。」

「……」

「それに何より私達は初めて魔物と殺し合います。躊躇なく魔物を殺せるか不安です。躊躇してしまうかもしれません。怖くて逃げ出してしまいそうになるかもしれません。しかしここで躊躇してしまったり逃げ出してしまったら殺されるのは自分や大事な人、領民達かもしれません。」

「「「……」」」

「私達は恵まれています。仲間がいて、屈強な領兵がすぐ側にいます。そして初陣にここを任されたということは私達にできるとお父様達が思っているからだと思います。」

「「「!」」」

「では、どうすればいいか考えましょう。」


エリザお嬢様はエンダース様を諌め、他の貴族の子女を見事に鼓舞した。


それから作戦会議はスムーズに進んだ。

領兵が上手く誘導していたけどな。

翌日の早朝に群れを囲うように人を配置された。


子女一人に領兵三人がつく。

キング担当のエンダース様には領兵の中でも精鋭五人とマジルド姉弟と領兵三人ずつがつく。


俺ははれてエリザお嬢様の専属従者になることができた。

最初エアルリーザお嬢様と呼んだらお嬢様が「エリザと呼びなさい。」と言ったからそれ以降エリザお嬢様呼びになった。

愛称を許可されて内心喜びまくった、ガッツポーズした。


エリザお嬢様の側で、領兵の魔法使いの数人と遊撃部隊として空を飛んでいる。

エリザお嬢様が寝ているゴブリンを見た後、数秒目を瞑り息を吐き目を開ける。


「……ふぅ。やりましょう。」


エリザお嬢様がライトを中央上空に出し殲滅開始の合図を送る。

子女達は自分を奮い立てるよう声を出してゴブリンに襲いかかる。


エリザお嬢様は数的に不利になりそうなところに魔法を放ち、ゴブリン共を斃していく。

子女達の声、殺られるゴブリンの断末魔に起き出す他のゴブリン共。

ゴブリンキングの咆哮にゴブリンどもは少し立て直す。


まぁ、力量がかけ離れている。

領兵の力を借りながら子女達は頑張っている。


エンダース様は他の子女達より少し奮闘している。

シーラお姉様リヨンお兄様は複数のツンラビちゃんとパワーアップしたベアクフォンで無双している。

俺はエリザお嬢様の側で上空からずっとゴブリン共を見ていたのだが、何か違和感を感じていた。


「順調ね。」

「えぇ、ゴブリンキング以外ゴブリンしか、あ、そうか。」

「どうしたの?」

「違和感を感じたのですが、それが何かわかったのです。」

「何がわかったの?」

「ゴブリンキング以外上位種がいないんです。」

「あ、そういうことですか。エアルリーザ様、普通の群れならジェネラルやリーダー、ハイメイジやメイジの上位種がいます。」

「しかしこの群れはその上位種が全くいないんです。」

「別行動している可能性は?」

「どうでしょう?」

「可能性はありますが、全くいないというのは今まで群れでは見たことがありません。」

「では私とラハートフ以外は周囲の警戒を強めて。」

「「「はっ!」」」

「ラハートフ、お兄様がキングを斃せるよう援護しなさい。」

「わかりました。」


エンダース様の進路上のゴブリン共に弾丸プチアースで頭を撃ち抜く。

ゴブリンキングまでの道ができる。


エンダース様が一対一で戦おうとして、シーラお姉様がツンラビちゃんを突っ込ませ、傷を負わせ、リヨンお兄様がベアクフォンでゴブリンキングを足止めし、怒ったエンダース様がゴブリンキングの背後から怒りの剣の振り下ろしをして、あっけなくゴブリンキング戦が終わった。


エンダース様がシーラお姉様とリヨンお兄様を怒鳴っている。

二人は左から右へと流している。


「ゴブリンキングは死体ごと回収、他は魔石を取って死体を集めなさい。領兵は周囲のの警戒を。」

「「「はっ!」」」

「ラハートフ、集まった死体を燃やして。」

「わかりました。」


指示を出したエリザお嬢様も魔石を取り出す。

俺も手伝い、エリザお嬢様が一体終わる度にプチクリーンをかける。

公爵令嬢が進んでやるもんだから、子女達も涙目になりながら処理していた。

嘔吐した子にはプチクリーンをかけてあげる。


うんうん、俺も吐いたよ。

頑張れ少年少女達。


全てを処理し終わり燃やす。


「何も起こらなかったわね。」

「そうですね。警戒しながら戻りましょう。」


上位種が現れることなく無事に陣地に戻った一行。

大怪我もせず初陣を終えた。




オルヴェルド公爵家は月一に周囲を見回りをしている。

一ヶ月以内にゴブリンキングの群れができた。


それは五年前も同じだった。


一ヶ月以内に群れができたのか?

できるものなのか?

流れ着いたゴブリンキング達が群れを作ったのか?

縄張り争いに負けたゴブリンキングが作ったのか?


疑問がでた。


見回りの広範囲に広げたが、ゴブリンはぽつぽつといるだけで、群れの存在は確認されなかった。

釈然としないまま広範囲の見回りは終わった……


ーーーーー

あとがき

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