第15話(第3.?話) 村の英雄達と謎の人物

まえがき

主人公の父親の話です。次話から二章が始まります。


ーーーーー


カンカンカン


幸せな日常を壊す魔物の襲撃の鐘がなった。

村が騒がしくなる。


防壁に立って魔物を見る。

小競り合いに参加した時の敵軍より多いんじゃないかっ?!いつの間にあんなに増えたんだっ?!狩りの際気配を感じなかったぞっ!と顔には出さず心の中で叫ぶ。


「ラハルさーん!ラハートフが空から落ちてきましたー!」


は?何を言っているんだ?と声がした方を見る。

防壁の下から隣に住んでいる同じ狩人のリッドーが血の気のなくした顔の息子ラハートフを抱っこしている。


慌てて下りて息子を確認する。

血の気がなく青ざめた顔、焦点の合ってない目、震える身体。


「これは、魔物の軍勢を見てしまったんだな……」

「魔法で飛んでましたから、たぶん、そうですね。」

「悪い、息子を教会に連れていく。」

「わかりました。」

「すぐ戻る。」


俺達が会話していてもなんの反応もしない震えているラハートフを抱っこし避難場所の教会まで走る。


教会に避難していた妻フロエナが駆け寄ってきた。

ラハートフを下ろす。

フロエナはラハートフを抱き締め、震えるだけで反応もしないラハートフに狼狽える。


「ラハル!ラハートフに何があったのっ?!ラハートフ大丈夫っ?!しっかりしてっ!」

「たぶん、魔物の軍勢を見てな……」

「……大丈夫なの?」

「……あぁ、大丈夫だ。」


察したのだろう。

涙を浮かべるフロエナとラハートフを抱き締める。


「フロエナ、俺の最後のお願いを聞いてくれ。」

「ラハル……」

「フロエナ、お前はまだ若い。俺はお前とラハートフの幸せを何より願っている。だから、誰と暮らそうがお前達が幸せならそれでいい。責めもしない、罪悪感を感じなくていい。幸せになってくれ。愛している。」

「……あなたの、お願いは、確と聞きまじだ。う、うう、私も愛じでいまず、ううう。」


最後に強く抱き締め離れ、ラハートフの頭に手を置く。

大きくなったな……

息子が嫁さんを連れてきたら、「息子を頼みます。」とか言いたかったんだけどな……


「母さんを頼むな。」


彼女らの未来を守る為、防壁へ急いで戻る。


内側に低い防衛ができていて、元からある防壁が補強され、外側は土が掘られていた。

座り込んでいる魔法使いの冒険者マジールが作ってくれたんだろう。


「マジールさん、防壁の補強ありがとう。」

「いいのですよ。ここには私の弟子がいますから協力するのは当たり前ですわ!」


マジールさんが言う弟子はラハートフのことだがラハートフ自身は師弟関係ということはわかっていない。

ラハートフとっては魔法を教えてくれる優しいお姉さんと思っている。

マジールさんもラハートフの前では弟子のでの字も言ってない。


「ありがとう。でも、危なくなったら逃げてください。」

「弟子の村を守りますわ!」

「ラハルさん、俺もいますから大丈夫ですよ。」

「ケンディさん。」

「俺も弟子にもっと教えることがあるからな!」


マジールさんと同じくケンディさんの弟子もラハートフのこと。

こっちもマジールさんと同じくラハートフの前では弟子のでの字も言っていない。


「私の弟子よ!」

「俺の弟子だ!」


ラハートフがいないところでいつものように痴話喧嘩をする二人。

防衛をする為集まった冒険者や狩人、村の男衆達の緊張感が少し和らぐ。


村長が防衛に上がる。


「弟子はともかく、儂らが一秒でも長くここを死守すれば、それだけ宝達が、大事な人達が助かる可能性が増えるっ!その者達がゴブリン共に奪われていいのかっ?!」

「嫌だっ!」

「奪わせないっ!」

「いいわけないっ!」

「だったらその者達の未来の為に死守しようではないかっ!」

「「「おう!」」」


ついにゴブリン共が掘られているところまで来る。

村長が手を上げ、振り下ろす。


「放てえええ!」


矢や魔法が放たれる。

普通の村人ではあり得ない威力の魔法がゴブリン共に放たれる。


これは日常的に魔法で遊んでいたラハートフの魔法を見て、日々凄くなっていく魔法を見て、村人達も日常的に使うようになったからである。


しかし、ラハートフほど異常に使っていたわけではない。

だから魔力量が普通より少し多いだけで、多勢に無勢、焼け石に水。

それでもみな一魔法で一殺の集中力を発揮していた。


防衛に張りつき登ってきたゴブリンを俺や前衛の冒険者達が斬り殴り蹴り突き下に落とす。


徐々に登ってくるゴブリンが増える。

群がれ殺られる者が出てくる。


「防衛線を下げる!後退しろっ!」


一体でも多く、斬っては下がり斬っては下がり囲まれないよう後退する。

転んだ者が滅多刺しにされながら最後の力を振り絞り、数体を道連れにしていた。


生き残っている者が全員防衛線まで来るとマジールさんが入り口を塞ぐ。

また防壁に上がり、ゴブリンを斬り蹴り落とす。


「全然減らないわね。」

「これだけのゴブリンがいるってことは……」

「そうね。確実にキングがいるわね。」

「俺の天才な弟子の物がた「私の弟子よっ!」」


会話しながらもマジールさんは魔法でケンディさんは剣でゴブリンを殺している。

負けられないなと思い、剣を振るいまくる。


ゴブリンに手の甲を切られ、一瞬剣を手放しそうになる。

歯を食いしばり剣を強く握り切りつめたゴブリンに剣を振るい斬る。


魔法を使う者が少しでも時間を稼ぐため家を爆発させ燃やす。

周りに火がつきゴブリンの進行が少し遅くなる。


「家は建て直せばいい!」

「そうだな!」

「あぁ。」


魔法を使う者達が建物を燃やす。

巻き込まれ燃えるゴブリン。

少しでも時間を稼ぐっ!とみな同じ気持ちで必死に戦う。



また防衛線を下げる。

建物を燃やしながら後退する。

人が減っている。




また防衛線を下げる。

マジールさんとケンディさんの会話も減っている。





最終防衛線まで下がってきた。

さらに人が減っている。


みなが疲労困憊。

村長と俺、肉屋の主人達は若い者達に話しかける。


「必ず救援隊が来る。」

「「「……」」」

「お前達には辛いこともあるが長い未来がある。」

何かを察したんだろう。一人の若者が言う。

「俺はまだ戦えますっ!」

「俺も戦えますっ!」

「お前は結婚したばかりの奥さんがいるだろ?お前は幼い子供がいるだろ?父親が必要だ。」

「「っ……」」

「ラハルさん、だってラハートフが、いるじゃないですか。」

「あー、あいつは俺がいなくても大丈夫だ。」

「「「……」」」一人でも生きていけそうだよなとみな思った。

「まぁ、死ぬつもりはない。」

「「「……」」」

「……お前ら、若いやつらがいないとあっという間に廃村になってしまうしな!」

「っふ。そうですね。」

「なんだとこのやろー!儂らはまだまだまだ長生きするぞ!」

「「「あははは」」」

「「……頼んだぞ(頼むぞ)。」」

「「「はいっ……」」」


握力がなくなってきた両手に剣をキツく縛ってもらう。

肉屋の地下の入口を棚を倒し隠す。


「マジールさんもケンディさんも避難してほしかったんだが、」

「ラハートフ君にも父親が必要ですから。」

「そうだな。」

「……ありがとう。」


「宝達と大事な者の未来をっ!」

「「「宝達と大事な者の未来をっ!」」」

「若いやつらの未来をっ!」

「「「若いやつらの未来をっ!」」」

「守るぞっ!」

「「「おおおおおお!」」」


一瞬ゴブリン共が止まる。

そこにマジールさんの範囲魔法が放たれる。


防壁の上でゴブリンどもを斬って斬って斬って斬って斬る。

手の感覚がない。


縛っておいてよかった……


俺達を無視して教会に肉屋に行こうとするゴブリンを斬る。

雄叫びを上げる。


「あいつらのところに行かせるかあああっ!」


注意を引く。

背中が、腕が、足が切られる。

それでも倒れない。

死兵と化した俺達は倒れない。

一体でも一秒でも長く戦い続ける。


あいつらの未来の為にっ!


「おおおおおおっ!」


村長の胸にナイフが深く刺さる。

雄叫びを上げながら大剣を振るう。

血を吐きながら振るう。


肉屋の主人の目に矢が刺さる。

引きに抜き雄叫びを上げながら大鉈を振るう。

ゴブリンどもを両断する。


マジールさんとケンディさんはお互いの背中を庇いながら戦う。


「ゴブリンをっ、嘗めたらっ、死って、本当だったなっ。」

「えっ?!私はっ、弟子がいるからっ、死にませんけどっ?」

「いやっ、俺の弟子だっ!」


他の人達も満身創痍になりながらも戦う。




しかし、しかし、限界がある。


村長が倒れた。


死角から斬られ肉屋の主人が倒れた。


マジールさんを庇いケンディが倒れた。


群がられ次々と倒れていく。


「っく、ま、まだっ、だっ!」


振り下ろし頭を割り、蹴って剣を抜き、横に振るい首を斬り、また違うゴブリンの心臓に剣を刺し、無双する。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」


空白ができる。

ラハルに恐怖し周りのゴブリンが動きを止め、近づいてこない。

ラハルは満身創痍疲労困憊、血を失い朦朧とし倒れる。

ゴブリンが近づいてくる。


ここまで、か……


「まさか、ここまで戦える者がいたとはな……」

「……」


人の、言葉?救援か?時間が稼げたのか……よかった……


「私が手を出す必要もないか……」

「……」


幸せになってくれ、フロエナ、ラハートフ……


「少々計画通りではないが、問題ないか……」

「……」


……


「死んだか……」


ラハルを見下ろしていた者は死を確認してその場から消えた。

そこに我先にゴブリンどもが強者だったものを食べる為群がる。


それは行動を少し遅らせ時間を稼いだ。

少しだが、救援隊が間に合うことに繋がった。

英雄達は宝達を、大事な者達を、若い者達を守った。


そして、英雄の息子も英雄にして守護神と称えられた。


ーーーーー

あとがき

面白いじゃん、続き早く上げろ。と思ったら☆☆☆、面白いなぁと思っても☆☆☆、少しでも気になるな。と思っても☆☆☆をつけていってくださいな!

冗談です。

前から☆☆☆、☆☆、☆をつけてください!

面白くなってきたら☆を足してくださいな!

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