第9話 ギャラ飲みっ!


「あ、今日はそこまで言っちゃうんだ」


 ちょっとだけエリちゃんが驚いた素振りを見せる。しかしながら以前面白そうな表情で会話のなりゆきを楽しんでいるのが伺える。一方の男性陣は、レイナちゃんの口から社長というワードが飛び出した途端爆笑によって反応したのだった。


「最高すぎ。腹いてぇ。」


「G7の次は社長か!ごめん、めっちゃ笑ってしまうわ」


「イケメンを食らいつくした先でレイナちゃんが見つけた真実は“金”だったというわけですね!!」


「そんなんじゃないってば、あと食らいつくしたとか表現ダメだからね~」


「でも実際やっぱお金の大切さに行きついたって感じなのかな」


「ん~、なんて言うか私は夢があってさ」

 この辺りで完全に話についていけなくなって記憶が曖昧になっている。ここからは私の曖昧な記憶を元に話の要点のみを思い起こすと、①お遊びの恋愛は大学までで終わり。②レイナちゃんは昔から強烈な玉の輿願望があった。③そのために手っ取り早く社長と結婚するための婚活を兼ねてギャラ飲みアプリ始めている。④経済学部の経営学科を選んだのも経営を学ぶことで社長と話を合わせて一気に仲良くなる作戦のため。⑤実際にで富裕層と接触するとキモいオッサンばっかりで心が折れそうだ。とのことだった。


 レイナちゃんの貪欲な恋愛・婚活事情を聞いて、軽く引いてしまった半面、主体的に自分の求める相手を探すため行動していることに感心してしまった。やはり私は受け身だから大学4年になっても未だ彼氏ができないのかしら。相手に求める条件は、清潔感があること、私の趣味に深い理解を示してくれること、そしてめっちゃ健康であることぐらいだから、社長狙いのレイナちゃんより恋愛対象のストライクゾーンは広いはずなのに。


「私の話ばっかりもういいから、人の話チャチャ入れてないでエリも白状しなさいよ」


「やば、レイナを掘り下げて話振られないようにしてたのにな」


「それはズルいっすよエリ姉さん!」


「同い年だからなケンタロウ」


「姉さん姉さん!あなたの崇高なる華麗な恋愛遍歴を伺わせてください!」


「噂聞いてるよ。」


 大きな口をニカ―っと広げて意地悪そうに笑うヒゲロン毛、もとい平野君。本当に女ったらしというオーラが全身から感じられる。私ならヘビに睨まれたカエルのように固まってしまいそうなねっっっとりとした視線を浴びても「え~どんな噂だろうね」とエリちゃんは変わらずにこやかに微笑み返している。


「レン君も知ってるんだ!」


 今までのお返しとばかりにレイナちゃんがエリちゃんの方に手を置いて顔を覗き込む。エリちゃんは澄ました顔でいつの間にか注文していたピーチサワーを飲む。


「エリはねぇ~、天性のダメ男製造機なんだよ~!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る