*第十二話:裏話・欠落の歯車


 制圧した公園で待機しているところへ、インカムに別動隊を率いる副長から報告が入る。


『石塚です、見つけました。ターゲットの車に間違いありません』


 今し方、磯谷の無線機で拾った通信内容から、避難所のチームが近くの建物の屋上に潜んでいる事は分かっていた。


「よし、襲撃して捕虜の確保だ。くれぐれも女には矢を当てるなよ?」

『イエッサー』


 どうやら正面の奥に見えるマンションに陣取っているらしい。今もこちらの様子を覗っているのだろう。

 新しい捕虜を確保すれば、避難所内部の情報は一通り揃うはずだ。部下の慰安も兼ねた尋問で知りうる情報は全て吐かせ、効果的な制圧作戦を練る。


「へへっ、いやぁ楽しみだなぁ。早く避難所を乗っ取って、あのイケすかねぇ病院の奴等が坂城さんにひれ伏すところが見たいですよ」


 磯谷こいつもそろそろ用済みだな。確か今年で42とか言っていたか? 自己の欲求ばかり肥大化して、何の取り柄も生産性も無いゴミのような大人の具現化した姿だ。

 制圧作戦ではこいつを取り巻き共々、大学病院に突入させて使い捨てる方針で進めるか。ゴミはゴミらしく、最後は燃やして役に立たせよう。


『おらぁ! 突入だあ!』


 団地の方から石塚の掛け声が響いて来る。今仕掛けたようだ。件のマンションを見やると、屋上にちらっと人影が見えた。

 しばらく鉄扉を叩くような音が響いていたが、5分もしない内に静かになった。うむ、流石副長、良い手際だ。


「よし、移動して別動隊と合流するぞ。撤収準備だ」

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