第3話 聖女の祈り ~聖女と呼ばれた王女~ 後編

ある日、世界中に疫病が広まった。

それは見たこともない病で、多くの医師たちが頭を抱え治療法を研究するも解決策は全く見つからず多くの人々を苦しめた。


「この病はいったいなんなんだ!!」


医者も匙を投げ、ただ迫りくる疫病に誰もが怯える中、一人の神官は必死に本を漁っていた。

若い神官には、たった一人の母親がいる。

幼い頃、騎士であった父が殉職し、残された幼い神官を女手一つで育ててくれた母親。彼は神官に就職したとき、これからは母さんに苦労をかけず幸せにしてやると誓ったのだ。


そんな母親が疫病によって倒れ、死の淵をさ迷い神官は必死にこの疫病を調べていた。


寝る暇も惜しみ、朝から晩まで本を読みつづけた。

そして、ついに彼は見つけた。


「・・・これだ」


それはまるで天の啓示かのように唯一、この病を止めるための手段を彼は執念でみつけたのだ。

“神さまの贄”である聖女の記述を。


「聖女、聖女さえいれば・・・」


血走った目でその文献をなぞりながら、神官は狂ったように笑う。

すでに彼の母親は疫病により死んでいた。

だがずっと書庫にこもりきりだった彼は母親の死に目にあうことは出来ず、その日を境に可笑しくなっていったのだが、疫病という病でいっぱいだった同僚たちは神官が狂ってしまったことに気付かなかった。


そうして、ようやっと見つけた解決策を手に、神官は一人狂ったように笑い続け“聖女の祈りが世界を救う”ことを世間に伝えた。



「聖女だ!聖女を探せ!!」

「これは神の予言だ!聖女が祈れば病は止まる、と!」


「聖女には証として花模様がどこかに浮かんでいるとあった!」

「この疫病をとめるために、聖女を探し出すんだ!」



疫病はたくさんの命を奪った。

大切な人々を失った者たちや疫病に倒れいまもなお苦しむ者を助けるために、みなが聖女を探し始めた。


そんな中、アリシアの住む国では、偶然にも疫病が広まることなかった。

これも長年の努力からのものだったのかはわからない。だが、この国では疫病にかかっても死ぬことはなく、数日高熱で寝込むだけで無事回復している者ばかりだった。

そんな中、とある噂が王さまの耳に入ってきた。


『神のお告げがあった。聖女が祈りを捧げればこの疫病はなくなる、と』


「それは、まことか・・・?」

「はい、王様」


震える声で、王さまは大臣に問えば、大臣もまた真っ青な顔色で肯定するように頷いた。

聖女を探すために各国に応援を出し、勿論アリシアの国にも要請がかかった。

王さまは自国にできることがあるならば、と使者を出すはずだったがその内容と噂をようやく聞いたのだった。


王さまは震えた。

これまでたくさんの奇跡と代償をみてきた王さまは、あの日王妃と一緒に調べた記述を思いだした。


神のお告げというのはきっと嘘だろう。

きっと誰かが、あの聖女の記述を知ったのだ。そうでなければ、聖女の存在や証の花模様まで事細かく知るはずがない。


「もし疫病をとめるためにアリシアが祈れば・・・」


すでに世界中に広まった疫病を止めるなど、大きな奇跡にほかならない。

そんなことをすれば王女の命はない、と王様は確信した。




『 おとうさま! 』


大切な人を守るために、我が娘の声も聴けず、美しい瞳もみることもできない。

成長の止まった姫を妻に迎えてくれる国などどこにもないだろう。


きっと王として多くの犠牲者よりも一人の犠牲を選ぶことが正しい判断だったのかもしれない。

だけど王さまにとって、王女アリシアは大事な一人娘なのだ。


たとえ世界を敵に回したとしても、王女に、大切な我が娘に祈りをおねがいすることはできなかった。


「この選択をした私を愚かだと、お前は言うか?」

「いいえ。それがあなたの決断というならば、私はどこまでも寄り添い続けます」


多くの犠牲者より一人娘を選んだ王さまに、王妃さまは静かに寄り添った。

博識な王妃さまも、この選択により沢山の血が流れることを知っていながらも我が娘の命を選んだのだ。






“お兄さま、なんだか外が騒がしいわ。なにかあったの?”


ある日アリシアのお気に入りの温室にて、ルヴィンとお茶をしていたアリシアは手話で問いかけた。

目も見えず、言葉を失ったアリシアの会話はすべて“手話”で行われていた。


この手話は遠い東の異国の地にて文字が読めず、話すことのできない民族が手を用いて表現する伝え方だと知り、これならアリシアと会話が出来るとアリシアの国に取り入れた。

目が見えず文字も綴れなかったアリシアは、この手話をすぐに取得し、いまでは普通に会話ができるようになっていた。

そして、ルヴィンはアリシアのその言葉に眉を寄せた。


何処からかアリシアが聖女であることが漏れたのだろう。

世界中から、アリシアに祈りを捧げてくれという声が集まっていた。

勿論、アリシアに救われたルヴィンはこの疫病を止めるためにアリシアが祈れば命が危ないと知っていた。

知っていて、彼らは世界の危機よりもアリシアを選んだ。


視力を失ったことで、聴力が敏感になったアリシア。

アリシアは僅かな音さえも拾えるようになってしまった。そのため集まった人たちの声から隠すようにアリシアを王宮の奥へと囲んだ。

もし彼らの声をアリシアが聞けば、心優しいアリシアはきっと祈ってしまうだろう。

それだけは王さまも王妃さまも、ルヴィンも許せなかった。


「あぁ、どうやら私への求婚者がたくさんきていてね」

「その所為で毎日毎日お見合い写真ばかりが押し寄せてくるんだ」


“まぁ!そうだったのね!!はやくお姉さまとなるお方にお会いしたいわ!”


真実を知らずに微笑むアリシアに、ルヴィンは悲しそうに笑う。

この選択はきっと世界からすれば後ろ指を指され、罵倒されることだろう。でも彼らも大切なアリシアを失う事を選ぶことはできなかった。



“そういえば、お父さまたちはいつお戻りになるの?”


不意に尋ねるアリシアにルヴィンの顔は強張った。

幸いにもアリシアは目が見えなかったのでルヴィンの表情の変化に気付くことはなかった。


「父上も母上も忙しいみたいでね、まだ戻ってくるのには時間がかかるそうだ」


アリシアはルヴィンの言葉に肩を落とす。

数か月前、王さまと王妃さまは聖女の力に頼らずに解決できる方法を話し合うべく隣国に出掛けることをルヴィンに話した。

幸い隣国には王の長年の友人がいる。

理解者になってくれるはずだとルヴィンにだけ真実を告げ、アリシアには出かけてくるとだけしか伝えなかった。


どこに行くのかと問うアリシアに二人は答えず、暫くルヴィンが執務を行うことだけ言い渡した。


「お兄さまの言う事をよく聞くのよ」


大好きな母に抱きしめられ、アリシアは素直に頷いた。

そして二人が何処に行ったのかも知らないまま、アリシアはルヴィンと一緒に王宮で二人の帰りを待っていた。


いや、真実を知らずに帰ることのない二人を待っているのはアリシアだけだった。



聖女であるアリシアを頑なに渡さないことに、王国は世界中から怒りをぶつけられた。

そして中には、長年の友人で会った王は聖女の恩寵を独り占めにする気だと、友を悪魔だと罵る姿もあった。


それでも王さまは意見を変えなかった。

その結果、王さまも王妃さまも人々の手によって無残な死体となって祖国に戻ってきた。人間の威厳を奪い取ったような無残な姿にルヴィンは発狂するかのように泣き叫んだ。


残されたのは王子である兄と聖女と呼ばれる王女だけ。


ルヴィンは亡き両親の代わりに大切な妹を守るべく戦い続けた。

冷酷無比な王だと世界中から罵られても、味方であったはずの家臣たちに裏切られてもたった一人の妹を守るべく、ルヴィンは唯一信頼できる幼馴染のダンテとともに戦い続けたのだ。



カタリ、と茶器が揺れる。

僅かな音と控えていた騎士の一人がその場を離れていく。あぁ、きっとまた己を狙った刺客がここまでやってきたのだろう。

ルヴィンはアリシアが見えないのをそのままに、手話でダンテと会話をする。



―――トン、トトン。

ふとアリシアがテーブルの上を指で叩いた。

これは、アリシアが兄やダンテを呼ぶときにだけ鳴らす独特の指音であり、音に気付いたルヴィンは手話をやめアリシアへと声を掛けた。


「どうした?アリシア」


問いかけるルヴィンに対し、アリシアはそのままルヴィンへと手を伸ばした。

伸ばされる手に、ルヴィンはこたえるように小さな手を掴んだ。


“だいじょうぶ?”


心配そうな顔で問いかけるその言葉に、ルヴィンは唇を震わせた。

両親の無残な死と長年の戦いで疲れきっていた。

なんどアリシアを渡せばこの苦痛から解放され平穏がくるのだろうか、と葛藤することもあった。


だが結局ルヴィンはアリシアを渡すことはできなかった。


もうルヴィンにとって残された最後の家族がアリシアしかいない。

たとえそれが、この苦しみの原因なのだとしても唯一自分に残された家族を、ルヴィンは手放せるわけがなかった。

いまだ不安げな顔でルヴィンにふれるアリシアに、安心させるように小さな手を優しく包み込む。


「心配するな、アリシア。お前のことはわたしが守るから」


このとき、アリシアはルヴィンの言葉の意味を深く理解できなかった。

もしこのとき深く追求していれば、大切な人を失う事のない結末にたどり着けたのかもしれない。


不思議そうなアリシアを後目に、ルヴィンは再び手話で大臣たちへの招集をかける。

もっと警備を強化させなくては。

微かに漂ってきた血の匂いを誤魔化すために、ルヴィンは控えていた侍女に新たなお茶をいれるよう命じた。






「父上!母上!!目をお覚ましください!」


疫病の進行は留まることなく、多くの被害が生み出した。

とおい地にて、蔓延した疫病は王様と王妃様だけでなく幼い王子や王女の命さえも奪った。

残されたのは疫病の難から逃れた王子ただ一人。


「どうして、どうして弟や妹たちが死ななくてはならないんだ!!」


まだ齢一歳にも満たない弟と生まれたばかりの妹の亡骸を手に、異国の地の王子アバンは慟哭をあげた。

唯一の王位継承者とした即位したアバン王は、家族を埋葬し一人涙を流しながら決意をした。


「かの王国に戦争を仕掛ける。これ以上惨劇を繰り返すわけにはいかない」


アバン王の住む国は、世界の中でも頂点を張る軍事力をもっている。

人口や軍、そして武器も困ることのない大きな国。

かの大国が動いたことに各国も、それに伴い皆が皆一致団結をしたのだ。


「いまこそ皆で冷酷無比の王を討ち取り、聖女を奪いかえし平和を取り戻すんだ!」

「「「おー!!」」」


アバン王が兵士を率いり、アリシアの国へと攻め入った。

兵力だけでなく、長年の戦いで疲れ切っていた兵士たちは必死に戦った。

だけど逃げ出した家臣たちの裏切りにより固く閉ざされた城門が開かれてしまい城下町は勿論、城も火の海と化した。


王宮は囲まれ、最後まで仕えてくれた騎士たちは皆、討たれてしまった。


「冷酷無比の王よ!聖女はどこだ!!」

「・・・」


多くの軍兵に囲まれ、侵略者であるアバン王に剣を突きつけられたルヴィン王。

だがルヴィン王はアリシアの居場所を決して吐かなかった。


無残にも討ち取られたルヴィン。

残されたのは、大切な人によって守り隠された王女さまだけ。



アバン王が国に攻め入ったとき、アリシアはダンテに手を引かれ小さな秘密基地へと身を隠した。

それは幼い頃、アリシアとルヴィン、ダンテがみつけた三人だけの秘密基地。


「いいかい、此処に隠れているんだよ。大丈夫、直ぐにルヴィンが迎えに来るから」


優しく髪を撫で梳かし言い聞かせるダンテに、アリシアただ頷くことしかできなかった。

いま世界中でおきていることも、この国がどんな被害にあっているのかも意図的に情報を遮断され、なにも知らないアリシアは突然のことにただ戸惑った。

そして、ルヴィンとダンテの言葉を信じて待っていた。


“お父さま、お母さま、お兄さま、ダンテ。どこにいるの?”

“一人だととても寒いわ、音もきこえなくて怖い。ダンテ、はやく迎えにきて”


--トン、トトン。

--トン、トトン。

指先でダンテを呼びながら、アリシアはただただ心の中で強く願った。

祈りを捧げることは、家族の許可なくすることを許されない。だからアリシアは祈るのではなく、ひたすら願った。


すると閉ざされていた扉が開かれた。

温かな陽射しが冷たくなった肌を温め、アリシアはようやくルヴィンやダンテが迎えに来てくれたのだと顔をあげた。


「あぁ、なんてことだ!こんな場所に閉じ込められていたなんて」


しかし聞こえてきた声は、アリシアにとって聞き覚えのない声だった。

訳が分からないまま、アリシアはアバン王に手を引かれ大勢の前に姿を見せることとなった。


まだ成人してもいない幼子の王女に周囲は酷く憐れんだ。


「かわいそうに、まだこんな子供なのに」

「なんて可哀想な聖女さまだ!」

「もう安心しろ、悪い王さまはアバン王が倒してくれたぞ!」

「アバン王万歳!!」

「英雄王アバンさま!ばんざーい!!」


アリシアはただ困惑した。

鼻を突き刺す異臭と焼け焦げた匂い。そして自分の腕を掴む人物から漂ってくる濃厚な血の匂い。

そして、周囲の言葉と知らなかった事実によりアリシアに残酷な真実をしることとなった。


世界中に円満した疫病。

この疫病への治療薬はいまだ見つかっていない。だが神に認められた聖女の祈りがあれば、この疫病は終わる。

だけど、聖女の恩寵を失いたくないこの国の王様が聖女に祈りをさせなかった。

もう冷酷無比の悪の王はどこにもない。

キミは自由だ、どうか祈りを捧げて世界を救ってほしい。



“ちがう、ちがうちがうちがうちがう!!”


アリシアは、祈りの正体をその身をもって知っていた。

だからこの世界的に広まった疫病を消すことは自分の命が消えてしまうことを。


“冷酷無比な王さまなんて存在しない!!”

“お父さまも、お母さまも、お兄さまもわたしを守ってくれただけなの!”

“悪いのは、なにも知らなかったわたしなのに”


悪い王様なんてどこにもいないのだ。

彼等はただ、大切な家族を、アリシアを守ってくれただけなのに。

アリシアの懸命な否定の声さえ人々の耳には届かない。




声を失った王女は真実を話すことができない。

目の見えない王女は言葉を記すこともできない。

手話も遠い民族しか知らない会話のため、その意味を理解するものはいない。



王さまも王妃さまも冷酷無比と言われた兄も、ただアリシアを愛し守ってくれただけなのに皆が皆、彼らを悪だと言う。

そして目も見えず声も出せない成長の止まった王女を、憐れんだ。


真実を訴えても誰も耳を傾けてくれない、その事実にアリシアは嘆き悲しみにくれた。

だけど真実を知らない人々にとっては、真実などどうでもよかった。彼らは王女に、聖女に縋りついた。


「聖女さま、どうかこの疫病から救ってください」

「聖女、どうか祈ってくれ」


それをすればどうなるのかさえ知らない人々は、アリシアに祈れと迫った。

聖女を救い出したとして英雄王となったアバン王も、部屋にこもり泣き続けるアリシアにこの疫病にて、なくなった幼い命を、大切な家族のことを話した。


「わたしはこれ以上、大切な人を見送りたくないのです。どうか貴女の祈りで世界を救ってください」

「・・・」


アリシアは、アバン王の懇願に小さくうなずいた。

想いが届いたのだと喜ぶアバンだが、対するアリシアの心は酷く冷めきっていた。

アリシアは気付いていた。

きっと祈りの正体を彼らが知ったとしても、彼らは祈りをアリシアに強要するのだろう、と。


アリシアを思い守ってくれた家族はどこにもいない。

ならばいっそのこと、祈りを捧げ私も家族の元に逝こう。

そう静かな決意を固めたのだ。


アバン王は急いで教会の祈りの間へとアリシアを案内する。

大勢がこの疫病が終息する光景をみるべく集まっていた。

それはまるで見世物かのようで。

目の見えないアリシアだが、大勢の気配を感じていた。どんどん冷たくなっていくアリシアの心を知らないアバン王は、アリシアの手を引いて教会にある祈りの間の中心部へ足を運んだ。


さぁ、と祈りを促すアバンにアリシアは膝をつき祈りをささげた。


“どうか、この疫病をとめてください”


アリシアが天に祈りを捧げた瞬間、欠けていた紋から眩い光が放たれた。

それはまるで世界中に浸透していくかのように大きく広がっていく。

その光はとても暖かく、疫病によって冷えた体に熱を渡らせた。

光に包まれた疫病に苦しむ人々は、一瞬で苦しさが消え、数秒後には元気な体を取り戻した喜びに満ち溢れた。



「やったぞ!病が亡くなったぞ!!」

「聖女様ばんざーい!英雄王ばんざーい!!」


歓喜の声で満ちる中、アリシアは自分の体が朽ちていくのを一人で感じていた。

大勢が喜び抱き合っている瞬間、自身の手や足が砂のように崩れていく。

アリシアが崩れ落ちるように横たわっても、だれも気付かない。


“あぁ、これでみんなのところに逝けるんだわ”


周りがとてもさわがしくなったけど、アリシアの顔はとても安らかな表情だった。

だって恐怖を感じていないから。


「!聖女!?」

「聖女様!?おい!早く医師を呼んでくるんだ!」

「聖女さま!しっかり!!」


ようやく異変に気付いた民衆やアバンがアリシアに駆け寄ってくるも、すでにアリシアの意識は暗闇の底へと落ちていた。

まるで水の中へと沈んでいくように、ゆっくりと闇に飲まれていく。



『 アリシア! 』


ふいに聞こえた声に、暗闇の中で微睡んでいたアリシアは意識を浮上させた。そして暗闇の世界に一筋の光が差し込んだ。

光を感じたのか、アリシアはずっと閉じていた瞼をあげた。

本来なら何もみえることのない真っ暗な闇が映るとおもっていたのに、アリシアの視界には眩い光と光の中から現れる影を映していた。


『アリシア』


光の中からあらわれたのは、アリシアを慈しみ守ってくれた大好きな家族の姿だった。


『お父さま!お母さま!お兄さま!!』


その瞬間、アリシアは失ったはずの声で家族を呼んだ。

砂となったはずの足は地を蹴って走り、朽ちて崩れたはずの両手を伸ばして家族へとだきついた。

久しぶりに包まれる家族の温もりにアリシアはまるで子供のように泣き叫んだ。


『もうわたしをおいて、どこにも行かないで!』

『おいていかないよ』

『えぇ、ずっと一緒よ』

『さぁ、いこう。アリシア』


ようやく出会えた大好きな家族に抱きしめられ、アリシアは光の中へと消えていった。

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