第6話 事件の真相
横倉さんの自宅はだいたいわかっていたけれど、紗英が気を使って先にメールしようと言った。
いきなり自宅へ押しかけるのは、家族の人に心配かけるんじゃないかって。
これには影薄丸も納得したから、私たちは横倉さんを近くの公園まで呼び出した。
待つ事10分、横倉さんは公園に現れた。
無論、影薄丸は私たちからはかなり離れた場所で携帯をいじっている。
「2人とも、今日はわざわざ来てくれてありがとう。届け物があったかな?」
横倉さんは、小さな声で私たちに話かけた。
紗英が気まずそうにして話出さない為、痺れを切らして私から切り出した。
『横倉さん今日の盗難事件なんだけど、本当に盗まれたの?』
「え…。」
横倉さんが明らかに挙動不審になるから、私はつい続けて説明してしまった。
『あれから、私たちなりに犯人を探したんだけど、はっきり言って盗めないんだよね。』
横倉さんは顔を真っ赤にしながら下を向いている。
『事件のあった教室は密室で、内部の人であれ、外部の人であれ侵入方法はない。あらかじめ犯人が教室に隠れていた可能性も考えたけど、ウチのクラスに犯行時刻にいなかった生徒はいないのよ。もちろん、外部の人の可能性も考えたけど、事件直後は授業の終わった女子生徒たちばかりで、不審な人はいなかった。』
「盗まれたのは、確実に授業前から授業後の間だし、最初から下着は無かったなんて事もないから…。残る可能性は最初から盗まれていなかったって事なの。」
私と紗英で、影薄丸から聞いた結論を横倉さんへ説明する。私は横倉さんを責める気はなかったが、事実を横倉さんに伝えたのは、事件が解決されなかったら余計に悪い方向へ進んでしまうと感じていたからだ。
『確かに私たちは授業の後、教室中を探したし全員の荷物チェックもしたわ。けれど、一箇所だけ確認しなかったところがあるの。プールへ持って行ったタオルや水泳帽を入れていたスイミングバックよ。』
横倉さんは黙って私の話を聞きづけてくれている。
『考えてみれば調べなかったのは当たり前よね。着替えは全て教室に置いてあるって思ってるもの。けれど、もし何らかの事情でスイミングバッグに着替えを入れたままプールへ持っていってしまったとしたら?』
辺りはすっかり日が沈んでしまったが、横倉さんが今にも泣きそうな顔をしているのがわかる。
どうも私の言い方はいつもキツくなってしまうらしい。
紗英がすかさずフォローする。
「横倉さん、責める様な言い方になってごめんね。けれど、私たちもし横倉さんが言いにくい事があって悩んでいるなら、力になりたいの。」
横倉さんは半分泣きながら、ゆっくり話してくれた。
「ごめんなさい…本当は事件の後にスイミングバッグの方に下着が入っている事にすぐ気が付いたの。私、お風呂入る時の癖で下着とバスタオルを一緒にしておく癖があったから。でも、みんなで探す事になって盗まれたって大ごとになってしまって、言い出せなくなってしまったの。」
正直に話してくれた横倉さんに対して、私は素直に嬉しかった。信用して話してくれた分、私は彼女の力になりたいと強く思った。
『気持ちはすっごいわかるわ。あれだけ騒ぎになって実はありました、なんて言いにくいもの。でも、明日正直に話した方がいい。先生たちも本格的に盗難事件として警察に届けるかも知れないし、クラスのみんなもお互いに不信感を持ってしまう。何より横倉さんがずっと秘密を抱えたまま中学生活を送るのは、きっと辛いと思うよ。』
「美咲の言う通り、正直によく探したらありました、でいいと思うの。逆に後になればなるほど、余計に言いづらくなるだろうし…明日、朝一番で私たちと先生のところに話に行こ?」
私の言葉を聞いて、横倉さんは終始泣きながら謝っていた。
私は紗英と慰めながら、横倉さんに明日は学校に来る様に伝えた。
…影薄丸は、最後まで近寄りすらしなかったけど。
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