第22話

 あれから2週間程たった日にママと相楽さん(父親)が国外に旅立った。


 何でも大型のプロジェクトの根回し行脚に行くらしい。



 ママは最後の最後まで何とか回避しようとしていたみたいだけど、最後はなし崩し的に話が纏まってしまったようだった。


 あの日、ママは私を玄関で暫くの間、抱きしめて呟くように、



「真面目に行きたくない…」



 と言っていた。



 ママは本気で刻を戻したがっていたけれど、私の交友関係まで変にリセットしてしまうので諦めたようだった。


 何せ私もまたママと同じでリーディング○ュタイナー(笑)なので、刻が繰り返す前の記憶を保有してしまうのだ。



 なので、繰り返されると確かに相手との会話に齟齬が出る可能性は非常に高い。


 そう言う訳でママも観念したようだったけど…本気の本気で嫌らしく本気ガチで顔を顰めていたママを私は初めて見たのだった。



 でも、そんなママを見たのは初めてだったので、ちょっとだけ新鮮だったのは内緒だ。




 …だけど、ママが出かけた数時間後に私はやっぱりママに刻を巻き戻して貰えば良かったと後悔する事になる。




「こなたちゃん、暫くの間、一緒に住むことになった相楽直哉君だよ。直哉君のお父さんが、プロジェクトに参加する条件でうちで預かる事にしたんだ。流石に中学生を一人暮らしさせるのは躊躇われたんだろう。まあ、2人が戻って来るまでだから宜しく頼むよ」


「……はあ、私も居候の身ですので、お爺様の決めた事には反対はいたしませんが…」



 そう言って相楽君を見る。


 相楽君はとても居心地悪そうだ。



「お、お世話になります」


「はあ、宜しくです」



 こうして、私は転校生君もとい相楽君との共同生活が始まる事になったのだった。





 それから、相楽君の引っ越しで少しだけワタワタしていた一ノ瀬家は、ママの代わりに同い年の男の子をテーブルに囲んでの晩餐となった。


 食卓を囲みながらお祖母様が相楽君も持ってきた物が余りにも必要最低限の物しか持ってきてなかった為、少し心配していたけれど必要になれば今まで住んでいた部屋から取りに行けば良いだろうと考えていると話していた。



 私も同じ事を思ったけれど、まあ父親が帰ってきたら、またその家に住むことになるのだから当たり前と言えば当たり前かと納得する。


 そんな雑談を聞き流しながら、食後にお風呂に入り、相楽君にお次どうぞと伝えた後、少し疲れたのでそのまま寝た。



 何だか、凄い顔真っ赤だったけど、風邪引いてるのかな?


 そうなら、伝染うつされないように少し離れて頂きたい。



 ◇



 一方その頃、織姫は…。



「なんで2部屋じゃなくてツインの部屋取ってるんですか?馬鹿なんですか?」


「すみません!すみません!電話でフランス語って聞き取りずらくて!」



「はあ、初日からこれでは本当に思いやられます。貴方、本当に仕事以外は…いえ、言っても詮無きことですね。まあいいです。次からは私は対応しますので」


「本当にすみません!ぼ、僕お風呂で寝ますので!」



「意味が分かりません。何処の海がき○えるの主人公ですか。コークハイでも作るおつもりですか?」


「は?コークハイ?」



「んん!何でもありません。忘れて下さい」


「は、はあ」



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