第21話


 美味しくご飯を頂き終わり曾お祖父さんから何か分厚い封筒を頂いた。




「お小遣いじゃ!」


「あ、ありがとうございます」



「むう、他人行儀じゃのう。おじいちゃん大好きとか言って抱きついて来てもええんじゃぞ?」


「は?はあ…」



「くっ、こんなお父様見たくなかったわね。後でお母様に報告しなきゃ」


「女子中学生に抱擁を求める成人男性……紛れもなく事案ですね。この近くの警察署は…」



 そう言って携帯を弄りだすママ。



「ま、待て!冗談じゃ!だから警察になどかけるでない!」



 相変わらず2人の前ではタジタジである。


 茶を啜り一息ついた曾お祖父さんは唐突に思い出したかのようにママに向かって語りかけた。



「なあ、そういえば織姫」


「はい、何でしょう?」



「そなたは結婚せんのか?もう今年で三十路だろうに」


「はあ、別段困っておりませんので」



「そうか?だが、こなたちゃんにも父親は必要なのではないのか?」


「…そうですね。こなたも幼少期ならば必要としたかもしれませんが、今更でしょう。逆に今、彼女は二次性徴中の時期ですので、見知らぬ男性が一緒に住み始めたりするのは彼女のストレス意外何者でも無いのではないかと…」



「むう、そうか…」


「何です?合わせたい人でも居るのですか?」



「まあ、ぶっちゃけそうなんだが、今度のプロジェクトで是非とも織姫と組んで貰いたい優秀な奴がおってな、聞いたところ子持ちの未亡人なのだとか。似た境遇のもの同士どんなものかと思ってな」


「まあ、ぶっちゃけ必要ありませんね」



「ハッハッハ!そうか、まあ、プロジェクトでコンビを組む相手だ、顔くらい見て言ってやれ」


「そのプロジェクトの話、お聞きしておりませんが?」



「何?識留には伝えてあるぞ?」


「嗚呼なるほど。父さん…またですか…」



 一瞬、ママから殺気が溢れ出す。



「ま、まあ、詳しい話は識留から聞いてくれ。後、その、その相手なんだが…息子さんと一緒にずっと待機して貰っててな…その」


「はぁ〜。わかりました。お会いしますから連れて来て下さい」



「おお!すまんな!」


「思ってもないくせに…」



「ハッハッハ!女将!女将!連れを頼む」



「はい、ただいま」



 そう言って女将さんが去って行ってから警鐘がガンガン近づいて来る。



「お連れ様をお連れしました」


「うむ、ご苦労」



「し、失礼致します!」


「し、失礼します!」



 頭を下げたままの男性とその息子。



「良い良い。今は無礼講じゃ」


「はっ!では失礼致します!」


「失礼します!」



 そう言って顔を上げた親子は私達を見た瞬間、2人して目を見開いていた。



「あ、れ?何で芸能人の織姫がいるの?[※1]」


「い、一ノ瀬さん!?」




 まさかのここで相楽君ですか?

 警鐘ってこれの警告音だったの?



「えぇ〜そう来るの?」



 今度は私が顔を顰める番だった。






[※1]

 普段の織姫の格好は、芸能活動時の格好と全くの別人の如く違います。


 服装、髪型、化粧の仕方、仕草や表情も世に出回っているものと普段とでは雲泥の差がありますが、知人は大体見抜きます。


 因みに今回、織姫は母親の親孝行と言う体で食事会に参加したので、気合いを入れて着飾った織姫の格好は、芸能活動時(モデルの仕事は今も継続中)寄りになっていた。

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