第20話


 お店に入ると予約されていたようで直ぐにも案内された。


 まだ、曾お祖父さんは来ていないようで部屋で暫く3人で会話して待っていると何やらビーコンに反応。



「ふぁあ!?」



 会話の途中で私が唐突に大声で素っ頓狂な声を上げた為、お祖母様は呆気に取られ、ママは眉をしかめた。


 ママは私が並大抵な事には動揺しない事を知っているので何か緊急事態案件人の手に負えない問題が起きたのかと危惧したようだ。



「こなたちゃん突然どうしたの?大丈夫?」


「あ、はい、大丈夫です。ごめんなさい突然、本当に何でもないから…」


「そうなのですか?でも必ず手に負えなくなる前には相談するのですよ」



「…うん、分かってるよ。でもそれママが言う?」


「ゔっ」



 極大ブーメランがママに突き刺さっていた頃、曾お祖父さんが到着したとお店の方が案内してきた。



「お、揃っておるな」



「何が揃ってるよ!堂々と遅刻してきて言う事はそれ?私は兎も角、こなたちゃんは育ち盛りなのよ?待ちぼうけさせられて、それはそれはもうお腹ペコペコなのよ!」



「ゔぇ!?」



「お爺様、私も余り口出ししたくはありませんけれど、曾孫を呼び出しておいて、遅れて来るのは如何なものかと存じます。それに謝罪の一言も無しで済まそうなどと、曾孫に嫌われる気マンマンとしか思えませんね」



「ま、ママ!?」



「ゔゔ、すまん。こ、こなたや?今日は好きなだけ食事を楽しみなさい。そうだ!後で小遣いもやろう…な?」



「は、はあ。恐れ入ります」



「ほら見なさい。完全に塩対応されてるじゃないの。お父様はもう少し女性の機微と言うものを考えて行動なさった方が宜しいのではなくて?」


「そうですね、お母様の言う通りだと思います。お爺様は、お仕事馬鹿り[※1]に頭をお使いになり過ぎて、人としてのモラルが低下されておられるのではないのかと愚行いたします」



「そもそもお父様は…」


「お爺様は…」



 何故だか、初めの親孝行と言う目的が、いつの間にか曾お祖父さんの傷口に塩を塗る様な口論会になっていた。


 どんだけお祖母様とママは曾お祖父さんに対してストレス溜め込んでんの!?



「ゔぐっ!ほんに、ほんにすまんかった!もうこの通りじゃから!勘弁してくれ!」



 まさかの土下座である。


 とても雨宮コンチェルンの総帥とは思えない姿である。



 まさかの土下座で2人のヒートアップはイッキに冷めた。


 2人ともにジト目?いや、チベットスナギツネの様な感情の抜けた目で曾お祖父さんを暫く見ていたが…



「全くもう」


「はぁ〜」



 と言う2人の声と共に空気が和らぐ。


 すかさず私は「お腹すいたね」と声を掛ける。



「そうじゃな!よし!女将!女将!頼む」



「失礼いたします」



 そう言って、ずっと待機していた女将さんが襖を開けて入って来た。




「アハハ、女将さんは、とんだ飛ばっちりだったねぇ〜」


「うっ、ごめんなさいね」


「…申し訳ございませんでした」


「ほほほ、とんでもございませんよ」



 流石プロ、顔色一つ変えずに対応してきた。



「前付でごさいます」



 そう言って美味しそうなお料理が次々と並べられていくのだった。




[※1]

 誤字では無く織姫のお爺様に対する感想。


 蛇足として、織姫が芸能活動中、織姫の人気アップと銘打って勝手に裏で手を回していた事を織姫は能力セブンセンスによって知っている。


 なので、逆手を取って情報と人脈を使って2年という短期決戦で今の立場を取り戻している。

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