第18話
転校生がやって来て、何やら波乱の予感がヒシヒシと伝わる空気の中、何だかなぁ〜と言う思いが溜息と共に外に吐きでる。
だけど、そんな私の内心を無視しつつ時は進む。
しかして予想に反して転校生君はコミュ力高い方だったらしく、あっという間にクラスに馴染んでいた。
人当たりも良く、中2なのに厨二病の発症は無く、女子には紳士的でありながら砕けた対応で数ヶ月の間に結構な人気を博していた。
そして、その影響たるやユウちゃんやミヤちゃんにも多少なりとも影響が及んでいるようだった。
あれ程、闇堕ちしていた2人も落ち着きをみせ、普通に転校生君とおしゃべりしている程だ。
一体どんなマジックを使ったのかと逆に恐怖すら覚えた程である。
そして、悠長に周りの解説をしている私はと言うと、転校生君とは一切関わっていないのである。
まあ、初めからユウちゃんミヤちゃんガードが硬かったのもあるが、なんと言うか転校生君は転校初日から、あからさまに不審人物だったのだ。
私の第六感が警告音を鳴り響かせ続けていて、今もそれは相変わらずなのだ。
何だ貴様、某国のスパイか何かなのか?
と言う訳で触らぬ神に祟りなしともいうし、兎に角見ない触れない関わらないの精神でガンスルーを華麗に今の今まで続けていたのだ。
そう、続けていたのだ、彼が、その転校生君が階段上から降ってくるまでは…。
そして、条件反射の如く思いっきり受け止めてしまった私は悪くないと思います。
まさか、普段の人助けが仇になるとか思わなかった。
クルリと回転運動を利用して重力を緩和し、華麗にお姫様抱っこで抱え込むその姿を周りの生徒の多くが目撃していた。
私の腕っぷしの強さが全校生徒にバレた。
目撃した生徒は皆一様にフリーズしていた。
うう、今まで培って来た深窓の令嬢イメージがイッキに崩れ去る音がするよ。
そして、今も私にお姫様抱っこされている転校生君がポカンとしつつも目を潤ませながら頬を染める。
貴様は何処の乙女ゲームヒロインだ!
この場で彼を棄てて行きたい衝動に駆られつつも、そっと転校生君を立たせた。
「怪我はない?」
「あ…はい」
「そう、じゃ」
「あ、あの!一ノ瀬さんこそ怪我は…」
言い終わらない内に、私は片手を上げその場を去る。
何事も無かったかの様に…は出来なかった様であるが…。
何せ歩く後ろから大勢の女子の黄色い声が叫ばれ、男子生徒のスゲーとかカッけーとかマジかよとかの声が響いていたからだ。
私の平穏な日々はこうして転校生君の手によって破壊されたのだった。
いや、まあ不慮の事故と言えばそうなので、転校生君が悪い訳ではないのだろうけど、なんと言うか…そのやらされた感が半端ないと言うか…どうにも気持悪いのである。
そして、未だに私の第六感は転校生君に警鐘を鳴らし続けているのだ。
◇
一方その頃、織姫は…。
「真山チーフ。此方の資料纏め終わりました」
「え!?もう終わったの一ノ瀬さん」
「はい」
「じゃ、じゃあ確認するわね?」
「はい、お願いします」
「ううっ、問題ないですかねぇ〜あはは〜。一ノ瀬さん仕事速いのねぇ〜」
「はい、では次の仕事を下さい」
「そ、そお?で、でもちょ〜っと待ってね?なんて言うか、周りが追いつかないかなぁ〜って」
「はあ…そうですか」
久しぶりの事務仕事に張り切っていた。
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