第14話


「こなた、行きますよ」


「あ、待って待って!」



 今日は本当に……ほんっっっとに久しぶりのこなたとのお出かけ。


 とは言っても私は仕事もあるので、今日1日ずっとこなたと一緒と言う訳ではないのだけれど…。



 愛車のミニに乗って職場へこなたと2人で向かう。


 会社に向かう間も、こなたがものすごい勢いで最近の出来事をマシンガントークの如く話してくる。



 私は兎に角、頷いて話を聞く以外する事が出来ない。


 こういう時、この愛車が自動運転出来る事の有難みを感じる。



 しかし、ここ1年程、こなたとまともに話どころか顔も合わせてなかったので、こちらから何を話題に振ればいいのか若干悩んでいる。


 なので、マシンガントークでもこなたが話題を振ってくれるのは正直ありがたいが、何?その物騒なプールでの出来事。



 まさか?公共プール施設には、小学生を軟派する様なロリコン野郎が何人も生息しているの?


 小学生は最高だぜ!とか世紀末な雄叫びを上げていたのだろうか?



 やばいな…公共プール施設。


 そんな汚物達は素早く消毒して頂きたいものである。




 そんなこんなで、車は予定通りに会社に到着。


 インフォメーションに向かい案内係に話を通してもらう。



 勿論アポイトメントは既に交わしているので、すんなり話が進むと思っていたのだけど、そうは問屋が卸さないらしい。



「あ、あの!失礼ですが、織姫さんですよね?女優の」


「はあ。その様な仕事もしておりましたが、何か?」



「あ、あの!私!ファンなんです!サインとか貰っても良いですか?」


「えっと、申し訳ありません。本日はプライベートなので……あれ?今日は、此処で仕事もしますからプライベートでは無いのでしょうか?」



「ええ?えーと、私に聞かれましても、その…」


「……そうですよね。ですが、申し訳ございません。以前、安請け合いいたしまして、あとからあとから自分も…と収集がつかなくなったケースも御座いましたから、ご希望には添ず、申し訳ございません」



「あ…そうなんですか…なら、仕方がないですよね……あ、あの!写真だけ、写真だけでも一緒に駄目ですか?」



 ぬぅ。



 この女性、お断り必中の常套句を駆使したのに、なかなかの胆力です。


 こういう人は此方が折れないと延々と話が長引くので、1度だけ此方が譲歩するしか方法がない。



 兎に角、今回限りと念を押して1度きりで終わらそう。



「では、1枚だけ。ですが今回限りでお願いしますね」


「は!はい!ありがとうございます!」


「あ、あの、私も良いですか?」



 くっ!ほら相方の方まで来ちゃった。


 そして、周りがザワザワし始めた。



「ならば、貴女も一緒に撮りましょう。写真は彼女にも送って上げて下さいね」


「は、はい!」



 そして、疎らだった人波が徐々に増え続けている。



 カシャ!



「「ありがとうございました!」」


「いいえ、それよりも父…コホン。社長とは面会許可は降りましたか?」



「ああ!すみません!いえ!申し訳ございません!はい、社長室に入室許可が出ております。ご案内致します!……………………………あれ?今、織姫さん、社長の事、父って言った?



「いえ、何度も来ておりますので、お構いなく。お待たせ、行きましょう、こなた」


「はい!ママ!」



「ママ!?」


「え?今、ママって言った!?」



 ザワザワザワザワ



 こうして、私達は、周りのザワ付きをガン無視して、こなたと手を繋いで父の下へと向かうのだった。


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