第13話


「こなた、行きますよ」


「あ、待って待って!」



 今日は久しぶりのママとお出かけ。


 何かこの間ドラマの撮影がクランクアップしたそうで、この後はそこそこ芸能プロダクションのお仕事は減るそうなので、暫くは一緒に居られるみたいな事を言っていた。



 まあ、ママの事だから話半分で聞いておいたほうがいいのだろうけれど、でも夏休み中にママとお出かけ出来るのはちょっと…いや、かなり嬉しい。


 ただ、今回のお出かけはママのお仕事見学でもある。



 前に夏休みの自由研究で[お洋服が出来るまで]を題材にお爺様の顔ききで会社見学の許可を貰った私は完成原稿を学校に提出する前に、以前お伺いした方達に最終チェックとして見て貰えることになったのだ。


 そして、今日はママと一緒に社会科見学2周目。



 ちょうどママのモデルの仕事も入っているので、ついでに私の用事もこなしてしまおう計画が発令されたのだ。


 なんとも効率化をたっとぶママらしいけれど。



 そんなこんなでママとドライブ中の私は最近の出来事を延々とママに語り続けていた。


 そんな私の話をママは黙々と頷いて聞いてくれていた。



 ここ最近ママと話どころか顔もまともに合わせてなかったので勢いが止められなかった。


 それでもママは嫌な顔ひとつせずに私の話を聞いてくれていた。



 やっぱりママと居ると安心する。


 ママ大好きだよ!



 そんな楽しい時間もあっという間に過ぎて私達はコロビアンコ日本支社に来ていた。


 本社はイタリアにあるらしいけれど、まあ今はどうでもいい話だ。



「あ、あの!私!ファンなんです!サインとか貰っても良いですか?」



 流石ママ!


 何処に行っても大人気だ。


 私も鼻が高い!



「では、1枚だけ。ですが今回だけお願いしますね」


「は!はい!ありがとうございます!」


「あ、あの、私も良いですか?」



 どうやら、案内係のお姉さん達と写真を撮るらしい。


 ママは優しいから、断りずらいのかな?



 何だか、他にも一緒に撮りたがってる人達が集まって来ているみたいだけど大丈夫なのかな?



 カシャ!



「「ありがとうございました!」」



 そう言ってきゃあきゃあとはしゃいでる案内係のお姉さん達を尻目にママが話を進める。



「いいえ、それよりも父…コホン。社長とは面会許可は降りましたか?」


「ああ!すみません!いえ!申し訳ございません!はい、社長室に入室許可が出ております。ご案内致します!」



「いえ、何度も来ておりますので、お構いなく。お待たせ、行きましょう、こなた」



 そう言って一緒に手を繋ぎ、ザワザワしている人混みの中を私達は颯爽と通り抜ける。



 やっぱりママは、かっこいい!




「はい!ママ!」




 改めてそう思うのだった。



 

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