第12話


 結局、皆でジュースを買いに行く事になった私達。



 その図は正に勝ち誇ったミヤちゃんとユウちゃんの独壇場。


 それに後ろからとトボトボと着いて行くお姉さんとお姉さんに慰めの言葉をかけ続けてる私と言う訳の分からない状況であった。



 まあ、律儀にも私達全員分のジュースを買っちゃう辺りお姉さんの人の良さ…というか流されやすさが滲み出ちゃってる訳だけれど…。




「後で、ジュース代お返ししますね」


「こなたちゃん、ありがとうね。だけど大丈夫だよ」



 いやいや、大丈夫な訳は無いだろう。


 いくら高校生でも、そこまで余裕のある財政があるとも思えないし………いや、むしろ沢山お小遣いは貰っているのだろうか?



 ミヤちゃん家もユウちゃん家も、一般家庭[※1]よりは裕福な家庭だろうし…かと言ってそんな事を本人に聞くのも躊躇ためらわれるし…う〜ん。


 困った。



 だが、折角の年上の好意だ。ここは甘んじて身を任せるか。



「ありがとうございます。お姉さん」


「ふふっ、どういたしましてだよ」



 人通りの少ない静かな場所で、お姉さんとそんな和やかな時間を満喫していたと言うのにコイツらと来たら…。



「ねぇねぇ、彼女、そんなお子様ほっぽいてさ、俺らといい事しようぜ」


「こ、困ります!」



 軟派男A・B・Cが現れた。



 おい!彼氏!お姉さんがピンチだぞ!何時までウォータースライダー見に行ってんだよ…。


 いや、確かに、お兄さんとの待ち合わせした場所から大分だいぶ離れてしまってはいるので仕方がないと言えば仕方がないのだが…。


 しかし、お姉さんは今まさにピンチなのだ!そこは第六感[※2]で感じ取って駆け付けて頂きたい!




「お、お姉ちゃんに酷い事するなー!」


「そ、そうだ!」



「ああん?ガキはスっこんでろよ!」



 そう言ってユウちゃんを突き飛ばそうとした軟派男Bが空振る。



「うお!?」


「何、遊んでんだよ」



「違くて!いきなり消えたんだよ[※3]」


「はあ?暑さで頭やられたか?」



「お前達!何やってる!」



 お?ようやくヒーローのお出ましですね。


 ヒーローは遅れてやってくるとは言うけれど、それってどうなんですかね?


 まあ、親密度を上げるにはギリギリを狙うのが効果は抜群に良いのだろうけど、待たされる側はトラウマになっちゃうよ?


 ヒーローなお兄さん。



「ああん?なんだゴラ!」


「なんか文句あんのか?」



「ひっ、ひえ」



 訂正。


 頑張れヘタレなお兄さん。


 後、コイツら軟派男ではなく野生のゴリラだな。


 マウンティングが酷すぎる。



「ひぅ、そ、その手を離せ!」


「ああん?何お前?ビビっちゃってんの?」



「くはは!何?正義の味方ごっこ?」


「うはっ!かっこいいねぇ〜」



 そう言ってヘタレお兄さんの胸ぐらを掴むゴリラA。



「た、貴くんを虐めないで!」


「お?庇われちゃってるよ?ダセェな!」



 そして、グーパンでお兄さんを殴りつけるゴリラA。



「グアッ!」


「貴くん!」



「おっと、彼女は俺と遊ぼうぜ」


「い、いや!離して!」



「へへ、いい乳してんじゃんよ」


「1人で楽しんでんじゃねぇよ!」



 そう言ってお姉さんの元に近付いてくるゴリラAとB。



「え〜と、これは正当防衛が適用されるで良いのかな?お兄さんも手を上げられてたし…。このままだとお姉さんのトラウマになっちゃうだろうし…。ん〜」


「あ?なんだ?このガキ」



「いつの間に俺の前にいた?」


「こ、こなたちゃん!逃げて!」



「ふ〜む。脅威度F-エフマイナス何だけど、まあ良いか。ほっ!」



 スカ!スカ!ズカ!



「あ?」


「うえ?」


「ぐぇ!」



 立体機動を駆使し、蹴りをゴリラ共の顎に掠めていく事、約3秒。


 脳震盪を起こして倒れ込むゴリラ共。



 お姉さんを後ろから羽交い締めしてたゴリラには顔面に靴跡を付けてしまったが、位置的に顎が狙えなかったので仕方がない。



「え?え?え?」



 混乱しているお姉さんを尻目に床に倒れているヘタレお兄さんの元に行き、移動を促す。



「ほら、きちんと仇は取っておきましたから、サッサと移動しますよ、お兄さん。ウォータースライダーはどうだったんですか?」



 そう言ってお兄さんの頬に触れ、修復活性化プログラムを発動させて怪我を治す。



「え、う、うん。大丈夫だったよ」


「なら、行きましょう。ほら、ユウちゃんもミヤちゃんも早く行きましょう!お姉さんも!」



「え?え?え?」


「こなたちゃん、すげぇー!」


「こなたちゃん、かっこいい…」




 こうして、私達はこの後、何事も無かったかの様にウォータースライダーではしゃぎ倒すのであった。





 注釈[※1]


 実際にはアパレルブランドの社長宅なので、かなりの豪邸ですが、こなたは自宅を一般的な普通の家だと織姫に教え込まれています。

 理由・家政婦さんとかのお手伝いさんを雇ってないから。


 注釈[※2]


 こなた的な常識。

 理由・自分も出来るから。


 注釈[※3]


 こなたが瞬間移動させました。

 理由・流石に友達が突き飛ばされる処は見たくなかったので。

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