第8話


 今日から夏休みに入り、かと言って宿題なんてあって無いようなものだったので、学校の休み時間に終わらせてしまった。



 自由研究も前から興味があった服飾の工程を纏めたのを提出するつもりなので、後はお爺様にお願いして色々と会社の様子を見せて貰える約束をしているので問題無いだろう。後は朝顔の観察日記と休み中の個人日記位だろうか?



 そして、私は夏休み初日からする事が無くなったので、今非常に手持ち無沙汰になっている。


 流石に夏休み初日から友達と遊びの約束は取り付けていない。



 まあ、言うても友達らしい友達はいないのだけれど…。


 うっ、言ってて凹んできた。



 クラスでは同じ班の絵美ちゃん位しか真面に話さない。


 と言うか、皆挨拶とかはしてくれるけど、全体的に距離感があるというか、やはりこのThe外国人の見本見たいな銀髪青眼の顔が良くないのだろうか?



 かく言う絵美ちゃんもちょっと態度がたどたどしいというか他人行儀な壁を感じる時が時々あるのだ。


 夏休み明けにボッチ確定フラグが立っているみたいでマジで辛たんなんですけど…。



 しかし、折角の夏休みなのだから存分に楽しまなければ!


 そんな想いを胸に抱き、夏休み初日、私は早速お祖母様と一緒にラジオ体操に行く。



「ふふ、ちょっと今迄が運動不足だったかしらね。結構、息が切れるわね」



 私に付き合って一緒にラジオ体操をしていたお祖母様はフゥフゥ言いながら、汗を拭いていた。


 陽射しがこの公園に来た時間より強くなって来た。



 まさに初夏突入といった日和である。


 私は飲みかけのペットボトルをお祖母様に渡してお祖母様にも飲んで貰う。



 熱中症は危険だからね。



「あら?いいの?こなたちゃん。ありがとうねぇ」



 そう言ってごくごくとペットボトルを飲み干すお祖母様。


 何気に腰に手を当てて飲む姿を見ると世代が伺いしれる。


 

「ありがとう、こなたちゃん。これ全部飲んじゃたから、新しいの買っていきましょうか」


「いいよ、別に。お家に帰ったらまだあるし」



「あら、そお?」


「うん。ハンコ貰ってくるね」



 そう言って列に並ぶ。


 夏休み最初の行事。



 本当はママと一緒に来たかったな…。


 そんな思いを抱えながら判子を押して貰う。



 すると、後ろから私の名前を呼んでくる声が聞こえてきた。



「いちのせこなたちゃ〜ん!」



 振り返ると同じクラスの皆川優希みながわ・ゆうきちゃんと神楽坂雅かぐらざか・みやびちゃんだった。



「いちのせこなたちゃんは、こっちのこうえんだったんだね」


「え?うん。そうですね」



「あ、あのその…いちのせこなたちゃん…」


「ゆうちゃん、はやくいってよ」


「え~ミヤちゃんもいっしょにいうっていってたでしょ」


「?」



 何やら2人してお互い肘でツンツンしながらモジモジしている。


 しかし唐突に皆川さんが私の手を取って見つめてきた。



「やっぱりかわいい、おにんぎょさんみたい」


「あ!ゆうちゃんずるい!」


「お人魚?」



「あ、あの!いちのせこなたちゃん!」


「ひゃい!」



 突然、真横で神楽坂さんが叫んだのでビックリしてしまった。



「やっぱりかわいい」



 手を繋いだまま、皆川さんはウットリしている。


 一体何なんだ。


 謎すぎて逆に怖いのだが…。



「いちのせこなたちゃん!」



 神楽坂さんがまた叫ぶ。


 そして2人して先程から何故、いちいちフルネーム呼びなのだ?正直怖くて、そろそろ泣きそうなんですけど…。



「な、何でしょう」


「おともだちになりましょう!」


「なりましょう!」



「………は?」



 余りのことに頭のシナプスが繋がらない。


 思考を停止させていると再び声がかけられる。



「わたしたちおともだちになりましょう!」


「なりましょう!」



 2人して満面の笑みである。


 私としては願ったり叶ったりなので当然、無問題モーマンタイである。


 ちょっと、嬉しすぎて文字変換に広東語が混じってしまう位嬉しい!


 勿論返答は…。



「はい!なりましょう!友達!」


「やった!」


「やりました!ミヤちゃん!」



 それから暫く話している内にずっと友達になりたかったけれど切っ掛けが中々無くて一学期は諦めてた事や二学期リベンジするつもりだったけど夏休み初日に偶然逢えた事などを熱烈に話聞かされた私は2人に名前呼びする事を強制されたので今は、ユウちゃんミヤちゃんと呼んでいる。


 因みに、2人も私の事は名前で呼んでくれているので謎フルネーム呼びはされなくなった。


 良かったよぉ。




「そうだ!ミヤちゃん、あしたからわたしたちもコッチのこうえんでラジオたいそうしない?」


「うん!したい!……でもママいいっていってくれるかな?」



「ききにいこ!こなたちゃんもおいで!」



 そう言って手を繋いで引っ張られる。


 数メートル先に女性が2人井戸端会議をしていた。



「ママ〜!」


「あら、みやび、どうしたの?」



「おかあさん!」


「なあに?優希ゆうき



 どうやらユウちゃんとミヤちゃんのお母様達のようだ。



「あのね、あのね…」


「おかあさん!あしたから…」



 どうやら、話し合いは恙無く成されて明日からは2人と一緒にラジオ体操が出来るようだ。


 その後、お祖母様も此方に合流し、ユウちゃんとミヤちゃんのお母様達とご挨拶していた。



 うん。明日からの楽しみが増えた。


 そして、私達は早速今日から3人で遊ぶ計画を立てるのだった。


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