第7話


 季節は巡り、紫陽花彩る梅雨の季節から、青空突き抜け暑さが滲む夏の到来を蝉の鳴き声が知らせてくれる。


 こなたも夏休みに入り、友達と良く遊びに行くようになった。



 宿題は観察日記以外は夏休み前に終わらせたらしい。


 自由研究も興味のあった[洋服のデザインから出来上がるまで]という題材でもう完成しているらしい。



 監修協力は、モード・プラネタリウムのオネェ口調くちょうの外国人、服飾デザイナーのアントニオ・グレゴリーさんと服飾・縫製部門のトップ、式部 透子さん。そして、コロビアンコ社長で私の父である一ノ瀬 織留しきるである。



 …いや、初等部の自由研究に会社の首脳陣関わり過ぎでしょう。


 いつの間にこなたはそんな人脈を得ていたのか…まあ、父繋がりだろうけれど。



 そして、私はと言えば夏休みという概念は、既に都市伝説と化しており、何それ美味しいの?的に働いている。


 何だろう。この殺人的に忙しい秒刻みのスケジュールは…。



 何処の売れっ子アイドルだよ。


 ブラック企業にも程がある。



 完全に私を殺しにかかってきているだろ。


 一般人類よりは体力はあるつもりだけど、何処どこかで1度、倒れた方がいい様な気がしてきた。



 でないと際限なく働かされる。


 そんな気がするのだ。



 しかし、如何いかんせん私の身体は異常な程に丈夫ときている。


 だからといって最近、自由に行動も休みもとれない様なスケジュールは如何なものかと。



 これ、絶対に1度抗議するべき案件だな。


 何せ、ここ最近こなたの寝顔しか見ていない。



 寝顔さえ見れない日だって多くなっている。


 どう言う事か?


 家に帰ってないんです!



 大体、人類たかだか数十年しか生きられないのにこんなに稼いでどうするのだろうか?



 ここ数年で、写真集やエッセイ本、挙げ句の果てに、音楽CDと私の知らない所でお金がどんどん増え続けており、もうすぐ個人総資産が億に到達しそうだ。


 使う暇がないので貯まる一方なのは、言わずと知れた訳で…。



「働いたら負けって良く聞きますけど、本当ですね。…いえ、働きすぎたら負けなのでしょうか」



 等と独り言を呟き現実逃避をしていると後から突然、声を掛けられた。



「お疲れ様です!織姫さん!」



 気を抜いていた所に唐突に声を掛けられたのでビクッとしてしまった。



「…お疲れ様です、峯岸さん。撮影ですか?」


「そうなんですよ!今回、織姫さんと一緒の雑誌なので私の認知度も、また上がりそうですね」


「そうなのですか?」



 この手の方々の返答が非常に困る。


 実際にそう思っているのか、嫌味で言っているのか良く分からないので。



 人の機微には、そこまで疎くは無かった筈なのですが、どうにもこの業界の方々の機知や心機が読みずらい。



「そうなんです!ふふ、なので仲良くして下さいね!」


「はあ」



 因みに、私は芸名として苗字なしの織姫で活動している。


 なので周りは皆、名前呼びしてくる。


 まあ、芸名とか考えるの面倒だったもので…。



「撮影始めまーす!織姫さんからお願いします!」


「あ、はい」



「スタンバイ、OKで〜す。お願いします!」


「お願いします」



 そして、また私は無我の境地で仕事をこなすのであった。



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