第1話王都到着

 メルセトナス王国は5大国の中で1番発展していると言われ観光名所や食べ物にも力を入れているが、特に力を入れているのが刻印魔術だ。

 その刻印魔術のお陰で5大国の中で1番発展しているらしい。

 あとは街のシンボルになるような大きい時計塔なんかもあるらしい。


 まぁ、全部人伝に聞いた話だから本当かどうか分からないしそもそもその刻印魔術自体どういうモノか知らないしな。

 今、俺はさっきの森から抜けて街道に戻り王都メルトナに向かっている。


 周囲には見渡す限り平原が広がっており遠くには天高く聳え立つ山々と、その山を後ろにしてそこから半円状に造られた巨大な城壁がある。


 あと1時間もすれば王都に着くだろう。

 はぁ、あそこには会いたくないヤツがいるんだが、いや別に嫌いな訳じゃない、ただなぁひょんなことから俺の正体がバレたりした場合絶対面倒なことになる、うん、間違いなく。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 とりあえず城門に着いたは良いけど何だ?あの長蛇の列。

 ぱっと見た感じ100人位か?

 それにチラホラと馬車の姿も見えている。


 それにしても一体何やってるんだ?

 まぁ、分からない時は人に聞けって師匠が言っていたし聞いてみるか。

 とりあえず目の前にいるでかいバックパックと腰には業物の剣をぶら下げている旅装束に身を包んだいかにも旅人!ってヤツに聞いてみることにする。


 「すいません」そう言うと男は気だるそうにこちらに顔をこっちに向いてきた。

中々渋い顔のイケメンで年齢で言うと30代くらいか?


 「ん?何だ?」

 「この列ってなんですか?」

 「ああ、奥の方に城門が見えるだろ?あそこで馬車の荷検めやステータスカードのチェックだ な」


 なるほど、確かに王都は人も多いと聞くし必要なことだろう。

 ただ、ステータスカードってなんだ?

そんなもの持ってないし見たこともないんだが。


「?あれは…」

 ステータスカードについて聞こうとしたら男が俺が来た街道の方を向いて何やら呟いている。

 しかも、時間が経つにつれどんどんと男の顔が険しくなっていく。

 何だ?あの街道になんかあるのか?


 「おい、どうしたん…」

 「!あいつらもう来たのか!チッ優秀な部下を持つと苦労するぜ」

 「おい、何が来るんだよ?」

 「ああ、ちと質問に答える時間がねぇ、そういうわけで俺は行くまた何処かであえるといいな!」


 そう言うと男は城壁の方へ走っていく、そしてふと止まると姿勢を低くして大きく跳んだ、そしてそのまま空中を何回か蹴って城壁を越えてしまった。


 つい俺は呆然となってしまった。

 おいおい30代のオッサンになると空中を蹴って城壁を越えられるのか?どうなってんだよオイ。


 そうやって城壁の方を向いて暫く呆けていると、後ろの方が何やら騒がしくなってきた。

 気になって後ろを向くと数十体の馬に乗った鉄鎧を着た騎士たちが、こちらに向かって走って来ている。


 そのままこっちに来ると思っていたが、途中で進路を変更して城門から向かって右の方に行ってしまった。

 恐らくあっちからでも王都に入れるんだろう。


 はぁ、着いてそうそう変なことで疲れてしまった。先行きが不安だ…

 こんなんでこの先やって行けるのだろうか?

 まぁ、うじうじしててもしょうがないし気持ちを切り替えなければ。

 よし!まぁなんとかなるだろ!


 こうして俺は一抹の不安を抱えながらも自分の番が来るまで待つのだった。




ーーーーーーーーー???ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 今日私は学院を抜け出して正門付近に来ている

 普段はこんなことしないけど今日はここに来なくちゃ行けないって何故か思って来てしまったのだ。


 暫く正門付近でフラフラしていると誰かが言い争っているのが聞こえてきた。

 私は直感的にそこに行ってみることにした。

 今日はなんだか楽しいことがおこりそう!




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 暫く待ってようやく俺の番が近づいて来た。

 まぁ、ステータスカードがないがなんとかなると思いたい。


 少し待っていると、前方から門番の人がやってくる。

 「え〜っと次のやつは…お前か、じゃあまずはステータスカードの提示を」

  早速来たかステータスカード、もちろん俺はそんなものは持っていない。


 だが、焦ることなかれ俺は師匠に困った時これを使えば大抵の事はなんとかなると教えてもらった。

 事実今までも何とかなってきたから大丈夫だろう

 「すいません、実はステータスカードというものを持っていなくてですね」

 そう言うと門番は驚いた顔をした。


 何だ?そんなに驚くことなのか?

 「は?ステータスカードを持って無いだぁ?よくそんなんでここを通れると思ったな」

 「それがここに来るまでステータスカードというものが必要か知らなくてですね」

  そして俺は顔の前で手を合わせると、

 「頼みます、見逃してくれないでしょうか!」


 そう言うと門番は怒ったような顔をして、

 「ふざけるな!見逃すわけないだろうが!分か

ったらさっさとどっか行け後がつっかえている」


 チッやっぱりダメかならあの方法で。


 「いや〜そう言うと思ってこちらの物を用意したんですよ」

 そう言って俺は腰に下げておいた袋から金貨を2枚ほど取り出す。

 それを見た門番が更に顔を歪めた。


 え?ダメだった?なんで!?今までこの方法で失敗しなかったのに!

 「お前、堂々と賄賂を使うなんていい度胸だな?」

 門番はいい笑顔を浮かべているが何故だろう、笑っているようには見えない。

 「おい、いい加減にしないと……」


 「何してるの?」

 突然門番の後ろから女の声がした。

 そしてこの声が聞こえた瞬間何故か胸の奥が締め付けられるかの様な感覚がした。

 ……?何だこの感覚。


 「何ってこのバカにきつく……」

 そう言って門番が女の方に向いた瞬間固まってしまった。

 どうしたんだ一体?

 ちょうど門番が被って女が見えていないこともあり気になったので門番の横から女を見てみることにする。


 そこには絶世の美少女がいた。

 長い白髪に空を思わせる綺麗な瞳、身長は平均的な女性のそれで、胸は豊かで大きい、服装は何処かの制服だろうか、とても可愛い服を見事に着こなしている。


 そんな少女を見た門番が焦ったような顔で、膝をついた。

 「申し訳ございません、貴方様だとは知らずどんだご無礼を」

 「ううん、別にいいんだけど」


 そう言うと少女は俺の方に顔を向けて、花が咲いたような笑顔を見せた。

 「遅いと思ったらこんな所にいたんだ。ほら早くいこ?」

 そう言って少女は俺の手を掴んでこの場を去ろうとする。

 は?え?なんで?どういうこと!?


 「お、お待ちください!その物とお知り合いなのですか?」

 「うんそうだよ。だからもう行っていいでしょ?」

 「いや、ですがその物はステータスカードも持っていなくて、身元がハッキリしないのです」

 「身元は私が保証するし、悪い人じゃないから大丈夫だよ。ね?」

 「まぁ、そこまで仰るのならば分かりました」


 驚いて呆けている内にどうやら俺の通行許可が出たらしい。

 それにしてもこの少女一体何を考えているんだ?


 「ほら許可も降りたしぼーっとしてないで早く行こ?」

 「あ、ああ」

 まだ状況が飲み込めていない俺はそんな言葉しか出ないのであった。




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 中に入るとあまりにも圧巻とした景色に目を奪われた。

 この王都は段々とした地形で、上に行くにつれて建物の豪華さが上がっていっている。

 恐らく下段が平民街、中段が貴族街そして上段が王城だろうな。


 それにしてもこの少女俺を一体何処に連れて行くんだろうか?

 もしかして人気が無い場所に行って集団で俺を襲うつもりじゃないだろうな?


 着いたのは大きな広場みたいなところで中央には巨大な噴水あとはこの広場の円周部分に食べ物や、誰かのお土産にするような置物なんかも売っている店なんかもある。

  ここに来て一体何をするつもりだ?


「あの〜先程はありがとうございます」

先ずはお礼からだ、なにか助けられたら先ずお礼から入ると好印象になると師匠に教えてもらったからだ。


 「ううん、別に良いよ困った時はお互い様だからね」

 そう言って少女は軽くウィンクする。


 「それで、なんで見ず知らずの俺を助けてくれたんですか?」

 実は俺はこの少女を知らない初対面なのだ。

 だから俺はさっき混乱してあの状況を見守っていたのだ。

 断じてこのまま行けば王都に入れる!と思って見守っていたわけではないのである。


 「うん、私実は今少し困ってて助けてくれる人を探してたの」

 やっぱりそうか、そうだよなぁ無償で助けてくれるなんてそんな虫のいい話はないよな〜。

 仕方ない助けてくれた恩があるから、その恩を返さなければ。

 それに借りっぱなしは気持ち悪いしな。




 「分かりました、俺に出来ることがあるならやりましょう。それでどんなことをすればいいんですか?」

 「ありがとう!じゃあ先ずは……」

 して欲しいことは一つじゃないのね、まぁ別にいいけどさ。


 「私とデートして欲しいの」

 思考が一瞬で止まった。

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