第4話 苦くて甘い飲み物
ニュースでも私の事件は定期的に話題になっていて、私の事件だけを特集した番組が放送されるぐらいには世間の注目を集めていました。
老若男女問わず、共通するのはどの被害者にも喉に大きな刺し傷、血を抜かれた形跡があり、被害者間にこれといった関連性はなし、無差別、目撃情報は多数、犯人像に統一性はなし、犯人は男なのか女なのかすらも未だ不明、などなど。
「現代に現れた吸血鬼」などとセンセーショナルな煽り文句ではじまった番組は終始演出過多でホラー映画の音楽をふんだんに使い視聴者の不安を誘っていました。
番組の最後にこれまで寄せられた情報を統合して推測した犯人像が示され、事件解決に向けてさらなる情報提供をお願いして約一時間の番組は終わりました。犯人像は所々はちゃんと私に当てはまっていて感心する反面、誰にでも当てはまる占いの結果を見せられているようなありふれた特徴ばかりでした。だからこそ、どこにでもいる、誰もが殺人犯になりうるのだと宛てのない恐怖を覚えて、人々は食い入るように番組をなんとなく最後まで見てしまって、夜は寝つきが悪くなり悪夢にうなされて、そして次の日にはきれいに忘れてまた普段通りの生活に戻っていくのでしょう。
吸血鬼だなんて別に血を飲む趣味はないのになあと思いながら、私はいまさらながら血ってどんな味がするのか気になって試しに保存しておいたものを飲んでみことにしました。しかし、あまり味がしなくて、私はガムシロップと氷を落として、少し溶けるのを待ってうすめてからストローですすりました。苦さのすぐ後にガムシロップの甘さが口いっぱいに広がり、ねっとりとした感触が残りました。
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