第2話 これからが非日常

光が放たれて、しばらく経ったのだろうか。最初はぼんやりとした意識も段々とはっきりしてきた。目をぱちぱちとさせ、まず周囲の状況を確認する。…嫌な予感は当たっていたようで、さっきまで見えていた穏やかな街並みとうって変わり、厳粛としたとした神殿の中にいるようだ。その証拠に広い空間の中央に(俺の感だが)何処かの女神像が置かれている。その像の前には女神像と顔が瓜二つの女が立っていた。よく見ればその女だけではない。蒼いローブを着た何者かが俺を囲んで立ちすくんでいた。どうやら向こうも予想外の出来事なのか。驚いている。…いや、ちょっと待て。なんであいつが居ない。こうなったのあいつのせいだろ。 


とか何とか考えているうちに、次第に周りはざわついていった。

 

 (あの人間が勇者という奴か?)

 (分からん、しかし女神様が召喚したのだ。失敗など有り得ないだろう。)

 (しかし妙に、パッとしない奴だな…)

 (強そうに見えないな、本当に勇者か?)

 (貴様ら、よもや女神様が失敗したと申すか!)


小声でボソボソと話しているつもりだろうが、壁に跳ね返って全部俺に聞こえている。…色々と突っ込みたい箇所があるが、とりあえず勇者ってのはなんだよ?あー訳わかんねえ。

 


 俺も、見知らぬあいつらも思考がまとまらず、段々とざわつきが大きくなり、収拾がつかなくなってきたとき。俺の前に佇んでいた女神が、持っていた杖で床をカツンと叩いた。その瞬間、空気は変わった。蒼いローブ姿の人間達は話すのをやめ、まるで聖騎士のような姿勢の良さになり、動かなくなった。再び閑静な神殿へと戻っていく。

 俺は、この並々ならぬ空気に怯えながらも、その中心にいる女に目を向ける。

 「貴方…お名前は」

 『お、俺の名前は、友樹、て言います…』

 「トモキ…ですか…」


女は、俺の名前を復唱し、考え事をするように目を伏せる。その姿は何とも神々しく美しい。と芸術系に鈍感な俺でも流石に賞賛が溢れた。なにせ女は透き通った白く長い髪に、同じく白くて長いまつ毛、衣服は如何にも女神らしい白いワンピースに水色のローブを羽織っている。

うん、これは完全に異世界に来たわ。え、俺どうすればいいの。帰れんのこれ。と、とりあえず日本語通じるの今の会話で分かったし、あれこれ聞くしかないか…


『あ、あのー、俺突然ここに来たというか飛ばされた?ので状況が把握しきれてないんですけど。』

分かってるなら色々もろもろというか全部教えろと圧をかける。すると女は目を開き、ゆっくりと頷いた。

「そうですよね、急に別の世界へ飛ばされて見知らぬ者に囲まれる。警戒されて当然です。まずは貴方の置かれた状況、そしてこの世界についてゆっくり説明しましょう。」

女は俺の敵意をものともせず、会話を続ける。

「まずは自己紹介から。」

「私の名はイーリアス・コーデヴァン。気軽にイースとお呼び下さい。」

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