第48話─②

 俺とエリゼは巨木の家を出て、街を歩いていた。


「しっかし、化粧品製作や建物の建造。魔術の使い方がこう……、新しくて良いな!」


「アル、はしゃぎ過ぎ。“乗っ取り”の魔術使いをを忘れないでください」


「わかってるって。でもよ、イノリ以外で人族の魔術見るのはほぼ初めてな訳じゃん?

 やっぱ人族は魔族の魔術と違うなーって」


 数には差があるけれども全ての種族から魔力を持った者が生まれる人族に対して、魔力を持って生まれる魔族はたったの三つ。

 白エルフ族、黒エルフ族、そしてブラッドサン魔王だ。


「それにエリー達や黒エルフ族は使える魔術がちょっと体系が違うんだろ?」


「はい。白エルフ族私たちが使う魔術は【古代魔術】と呼ばれ、はるか昔より領域に根付く神木から力を借りるためだけの“契約の魔術”です。黒エルフ族も似たようなものでしょう」


「だからこそ、見た事ない使い方をするの人族の魔術が珍しくて新しいんだよ」


イノリあの少女の魔術は規格外ですけどね。ここの方々は魔術行使に物品補助をしているのに対して、彼女は自らの魔力で全てを賄えるので」


「————物品補助?」


「アル、人族向けの魔術書読んでいませんでした? そこに書いてあったと思うのですが……」


「おう、その魔術書自体は読んだけど、最初の方にあった魔力制御のページしか読んでないぞ」


「そんな平然とした顔で言わないでください。物品補助とは生成するには魔力がかかり過ぎる物を市販品で代用する、魔力の省エネ方法です」


「じゃあ化粧品の元になった花とか、釘にする為に巨木から枝を折ったのも?」


「物品補助です。ちなみにクルゾウ氏も魔術調理に畑で育てた野菜や市販品の肉と調味料を使っていました」


 まじか。じゃあ魔族の食材持ってくれば料理してくれるのかな? ちょっと興味あるぞ。


 そんなことを話しながら歩いていたら、前からイノリ達もやってきて俺たちは合流した。

 彼女達も“乗っ取り”は見つからなかったようだ。



 クルゾウの家に戻ると、ダン達も戻ってきた。クルゾウ特製の魚の揚げ物と揚げたじゃがいもを食べながら、俺たちはお互いの進捗を報告しあう。

 とはいっても内容はどこも変わらないが。


「第四騎士隊、本日は何の成果も得られませんでした! 申し訳ございません!」


「オノコ、黙れ。飯ぐらい静かに食わせろや」


「そうは言っていますがダンさん、あまり食事が進んでいないようですけれども。大丈夫ですか?」


「気にすんな。ちょっと疲れてるだけだ」


「隊長様は一日中ここの住民に振り回されっぱなしだったからな。その様子は当然、儂のカメラに収められとるぞ」


「マジ!? ちょっと見せてくれよ」


「ダメだ! ちゃんと編集して作品にしてから世に出すのが儂の流儀だ!」


「だから静か食えっつってんだろォが!」


 ダンに怒られたので黙って食っていると、台所に置かれた野菜カゴが目に入った。カゴの中には土が付いたじゃがいもやさつまいもが置かれている。

 そして皿の上に乗っているのは、あの土のついたじゃがいもを元に作られた黄金色の細長い棒。


 あの土のついたジャガイモが一瞬でこの細長い棒に変わるんだ。本当に人族の魔術は面白い。

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