第10話 (逆)インベーダーゲーム
派手に登場したいからって大ジャンプからの着地は失敗だったな。土煙で周りが見えにくい。
仕方なく聖剣を大きく一振りして土煙を飛ばすと、景色が晴れてきた。
俺の辺り一面にはローラがぶった斬ったロボットの上半分と下半分が転がっている。
歯車による自律駆動だから、人間の被害者が出ていないのは助かるな。
視線をローラと蟲人軍に移す。その背後にはローラによって撃沈したギアラシラの防衛柱。
柱が迫り上がるのは結構斬新だったので、もったいなく感じる。
「ねぇ、アンタって最近噂になってる勇者よね?」
ローラが声をかけてきた。
「マm……お母様から聞いてるわ。突然現れて、何回も魔王軍を追い返してるって。アンタが次のアタシの相手?」
「ああ、その通りだ」
声を低く渋めに作って答える。
ローラは俺と面識があるから、声でバレる可能性がある。だからこれはその対策だ。
「あら、そう」
ローラは腕の針からビームを発射した。ビームは俺の横を掠めて地面に当たり、巨大なクレーターを作る。
俺は構わず、ローラの方へ歩を進める。
「向かってくるのね。鎧で
ローラはもう一度俺に向けて撃つ。俺は首を傾けて避けながら進み続ける。
更に一発発射。
同じく首を傾け回避、と同時に地面を強く踏み込みローラに勢いよく飛びかかった。
聖剣を大きく振り上げる。ローラに当たる気は一ミリもない。だからこその軌道を読みやすく避けやすいあえての大振り。
ローラが飛び退き、地面に巨大なクレーターと網目状のヒビが入る。
その地面を見てローラは口角を上げた。
「上等じゃない。大砲にガトリング、ロボットじゃ物足りなかった所よ。アンタとなら存分に
ローラは両腕から連続でビームを放ち、俺は避けながら一気に距離を詰めて、聖剣の側面でローラの胴体を叩き飛ばした。
だが打ち上げられた状態からビームが乱射され、ギリギリ聖剣の盾が間に合った。
————ローラのビームの弱点その一:音。
ビームを打つ直前に微かにキュイィィィという
ただし、常に感覚を研ぎ澄まし、瞬発的な判断力と運動能力がなければ失敗する可能性は高い。
ビームが立て続けに避けられるを見たローラは、ムッと眉を
「だったら、これは防ぎ切れるかしらッ!?」
着地すると同時に両手を合わせ、同時にかつ
聖剣に直撃すると同時に俺の体ごと一気に後ろに押される。だが聖剣は傷ひとつつかず、撃たれたビームを地面に反射して落とす。
ローラのビームの正体、それは超高圧で発射される毒液!
サソリ型を含め、蟲人属は攻撃・防衛の手段として毒を持つ者が多くいる。ローラの場合、針から毒を発射する際の加圧力と肉体の耐久を限界近くまで鍛え、その結果として物を溶かすだけでなく切断まで可能な発射速度を手に入れた。
「本当に、すごいなぁ……」
————思わず言葉が漏れた。
何が原動力になっているのかはわからない。でもその何かによって、彼女は蟲人史上、いや魔族史上類を見ない強さまで自分を鍛えられた。
言うなれば才能と努力の天才。
だからと言って俺は
ビームを押し返すが如く、一歩ずつローラに向かって歩き出す。
「これでも……、ダメなの?」
ローラの表情からも笑いはなくなり、冷や汗が頬を伝う。
一度ビームの照射を止め、思いっきり溜めた毒液弾を発射する。
しかし呆気なく聖剣に弾かれ、地面に着弾すると大きな土煙が上がった。
ローラは乱れた呼吸を整え、土煙の先にうっすら見えるガリアスの影を見る。
「いいわ、奥の手を見せてあげる」
「驚きました。まだ奥の手を残しているとは」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます